「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)1月23日(土曜日)
通算第4787号 <前日発行>
中国発世界同時不況は秒読みになったのではないのか
通貨安による危機をはるかにしのぎ、恐慌前夜に近い
世界同時不況はこれまでにもたびたび繰り返されてきた。およそ八年から九年周期で世界は同時不況に陥没するため不況循環説も生まれた。
1973年から74年にかけてOPECの減産による「石油ショック」が起こり、もっとも周章狼狽したのは日本だった。
トイレットペーパーの買いだめがセンセーショナルに伝えられたが、一方で「これを千載一遇のチャンス」とした商社などは、売り惜しみに転じた。収拾に時間がかかったのも、日本に危機管理のノウハウが蓄積されていなかったからだ。
ついでレーガン政権の登場前後に米国では高金利政策が執られたため構造不況に陥った。同時は日本の輸出は対米依存度が高かった。
1991年、ブッシュ政権はイラクのクエート侵略に対応して湾岸戦争を仕掛け、サダムフセインを追い詰めたが、原油高を将来させ、世界は不況に喘ぐ。
2000年にはクリントン政権が推進してきたインターネットハイエゥイなどプロジェクトが一巡したためITバブルがはじけ、2008年のリーマンショック発生への伏線となった。
そして、2013年をピークに中国で不動産価格の急落が開始されたが、中国は強気の投資を繰り返したため、過剰生産設備、過剰在庫。
この処理鳳凰が見つからず海外の鉱区開発中断、石炭産業の倒産、外貨準備枯渇などが表面化し、ついに2016年初頭から株価暴落が開始され、これが何れ「中国発金融恐慌」となり、世界同時不況の時代を迎える。
▼「通貨危機」も再来している
通貨暴落危機は、過去にも何回か繰り返されてきた。
思い起こすだけでも、1987~88年頃の米国S&L危機(格付けの低い地方の信用組合が連鎖倒産)、1991~92年北欧の金融危機が起きた。
そして最大のショックとなったのは、タイ、マレーシアを襲った1997年から翌年にかけての「アジア通貨危機」だった。
マハティール(マレーシア首相)は、これはジョージ・ソロスら欧米のヘッジファンド、禿鷹ファンドが通貨安を仕掛けて陰謀だと言って国内の矛盾を対外に仮想的を架設することですり替えつつ、強権発動を繰り返した規制強化のうえ、海外資金環流を阻止し、なんとか食い止めた。
インドネシア、フィリピンなどに悪影響をもたらしたものの、日本、韓国、台湾そして中国はアジア通貨危機の延焼からのがれた。中国は当時、人民元が自由に取引できない上、ドルとの固定相場制を採用していた。
ついで1989年、ロシア国債デフォルトに端を発するロシア通貨危機がおこり、 2001~2002年にかけて米国ではITバブルが崩壊した。
07年にはサブプライムローンの危機が表面化しはじめ、ベアスターンスが倒産の危機に見舞われた。
翌 2008年にリーマンショックがおこる。
ついでギリシア債務危機から欧州にユーロ不安が拡大した。
ユーロはドルとの交換レートを下げ、ギリシア支援に踏み切って危機を克服したかにみえるが、15年から突発的に激増したシリアからの難民流入による政治危機に通貨危機を胚胎させている。
中国人民元安は、つぎの通貨危機を呼び込むだろうが、それは果てしなき、世界同時大不況の幕開けとなる可能性が日々高まった。
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