「韓国を見習え論」の正体 続き

民族への責任
西尾 幹二
徳間書店
2005-05-22


第六章 アメリカとの経済戦争前夜に備えよ

p156~159
これ以上アメリカ国債は買えないとしたら?
  アメリカはいま世界最大の債務国に陥り、財政と貿易の双子の赤字は周知の通り危機的状況で、「第二のプラザ合意」の日が迫っているともいわれる。累積財政 赤字は14兆ドル(一説には36兆ドル)、日本のほぼ倍である。一方、貿易赤字も年ごとに増え、1995年には964億ドルだったのが、2002年度では 約4300億ドル(約46兆円)にのぼった。アメリカの主要製品が売れないのだ。自動車も航空機もパソコンもシェアーを減らしつつあり、貿易赤字の解消に 見通しは立っていない。アメリカは脆く、弱くなり始めているのである。
 アメリカ政府はこの支出をカバーするために国債を発行し、日本はそれを せっせと買い、総額3兆ドル(330兆円)にのぼるといわれているが、日銀がひた隠しにしているので正確のところは分からない。買ったが最後、これを売る ということは絶対許されない。両国の経済が同時破局にたち至るからである。毎年新しい国債を買わされつづけている。しかもアメリカ国民はこの事実を知らさ れていない。中国へのODAが中国国民に知らされていないのと同様で、日本の広報べたである。
 アメリカの財政赤字の主因は必ずしも国防費ではな い。ソ連との冷戦に勝った「平和の配当」は赤字べらしに役立ち、9・11テロの後に国防支出はたしかに増加するが、対GDP比で0.5%程度の増加にすぎ なかった。では何が赤字の主因かといえば、減税である。2000年から3年間で26%もの減税が行われ、経済はおかげで成長しつづけた。巨大で長期に及ぶ 歳入減の上に無理して築かれた好景気である。
 別言すればアメリカは「清算する以上に消費する国」でありつづけている。しかも世界経済の牽引車と して各国がこれを是認し歓迎している。これはとてもおかしな光景である。身分以上の好き勝手な贅沢をしているアメリカ人が世界から良いことをしていると褒 められている図だからである。アメリカは国債を乱発しては各国からドルを受け取り、それでアメリカ軍人の給料を支払い、毎年8兆円もかかる医療費を支出し ている。基軸通貨の発行元であるというだけの理由で、返す当てのない国債をドルに換えさせ、世界人口の4%にすぎない彼らが、世界のエネルギーの約4分の 1を消費する自由を許されている。しかもその自由を可能にしているのは日本が(勿論日本だけではないが主として日本が)アメリカのこの借金の肩代わりをし つづけていることに基づいている。
 こんな無理がいつまでもつづくはずはない。いつかは必ず限界がくる。
 わが国の毎年の予算は約80兆円、税収は約44兆円しかない。税制赤字がわが国でもふくらんでいく一方だ。それなのに、どこからどういうお金が出ているのか謎だが、アメリカ国債の購入額は毎年約32兆円にものぼるというのが大勢の見方である。

  現在ドル安円高がつづいているため、日本政府は、為替安定のための介入と称してドルを買いこんでいる。これはまた別の会計である。昨年度の介入枠は79兆 円、本年度は140兆円と一気にふくれ上がっている。さきほど言ったように、税収が44兆円、予算が80兆円で大変だと言っているわりに、この介入枠の拡 大に関して日本人が不安になって騒がないのは一体なぜだろう。当局の説明を求めたいところである。
 要するに日本政府はドルのさらなる下落を予想 し、とことんこれを買い支えなければ、ドルの暴落は日本経済の破局であるから、一蓮托生を一日伸ばしにしているという恐ろしい心境にあるのである。日本ほ どアメリカ経済と一体化してしまって、地獄への同伴者となった、悔やんでも悔やみ切れない例はほかにない。
 しかも為替介入で買い込んだドルは結局アメリカ国債に化けて、再びアメリカに還流している。そして、そのように日本から流れこんだドルで、すなわち日本人の血と汗の結晶である日本のお金で、アメリカはいま着々と準備をすすめている別の計略がある。すなわち、日本からまきあげた金で日本の超優良企業をM&Aの対象として、次々と買収するという政策である。
 アメリカ国債を買いつづける日本の財政にも限界があることをアメリカ当局はとうに気づいている。ならば、次に打つ手は何か。日本の”金のなる木”を自分の庭に移植してしまうことである。韓国は、すでに完全にそうなっている。
  韓国の大手銀行4行の外国人持ち株比率は、国民銀行78%、ハナ銀行72%、外換銀行72%、新韓銀行63%である。半導体と液晶で世界一といわれるサム スンが54%、現代自動車が49%の比率で外国資本の支配下に入っている。「国境を越えて」とか「グローバリゼーション」とか甘いことを言っている日本人 はまだ気がついていまいが、韓国人は働けど働けど外資に利益を吸い上げられる行き場のない閉塞感に陥り、その怨念をジャパンバッシングに振り向けている一面があるのである。しかしまたうかうかしていればこれは明日の日本の現実でもあるのだ。
 いくらなんでも日本の大企業を次々と買い取るだけの資力は財政赤字のアメリカにはあるまい、と思う人はあまりにも浅墓である。アメリカは日本から受け取ったお金で日本の企業とかうのである。つまり日本の金で日本を買う。こんな簡単な話はない。加えて、現金ではなしにアメリカの自社株で日本の企業を買う「三角合併」という、より買い易い方式を「対日投資」の名において日本についに合意せしめている
 こうした方針を推進してきた日本側の司令塔は平成6年にスタートした「対日投資会議」で、いまは議長小泉純一郎、副議長竹中平蔵である。
 ほかでもない、その結果が今国会に上程されている会社法改正案、その原案が『会社法制の現代化に関する要綱』(平成17年2月9日、法制審議会決定)である。
 私は遠い未来への不安を騙っているのではない。いまもうすでに目の前で起こりかかっている現実の話を述べているのである。
(初出 『正論』2005年6月号)


2005年にこれが書かれていたことに自分は驚いてしまうが
ドイツ文学が専門の西尾幹二氏に分かることであるなら、「韓国を見習え」と言っていた経済評論家達は一体何だという話になる


【経済裏読み】
サムスン告発映画が韓国でヒットする“理由”…実話ベース、「働きたい」のに自国から最も嫌われる“不思議”

  韓国サムスン電子の工場で働き白血病で亡くなった女性と、その家族を描いた映画「もう一つの約束」が同国で公開され、話題を集めている。サムスンなど財閥 企業を優遇する韓国政府に対する国民の不満は強いが、財閥批判とも受け取れる映画の上映は異例。韓国国民にとってサムスンは最も働きたい「あこがれの企 業」であり、一方で財閥批判の矢面に立つ巨大企業だけに、今後も愛憎が入り交じった批判が相次ぐかもしれない。

工場の労働環境を批判
 2月6日に韓国で公開された映画「もう一つの約束」。サムスン電子の半導体工場で働き、入社2年目に白血病となって亡くなった女性と、その家族の法廷闘争を描いた実話をベースとする作品だ。

 昨年10月に開催された釜山国際映画祭では上映各回がほぼすべて満席。2月に韓国国内で公開後も動員数は好調という(日本公開は未定)。

 国の経済が発展していく過程において工場の労働問題、公害問題は、日本でも欧米アジアでも発生しており、サムスンが特異というわけではない。

 ただ、韓国ではサムスンが国内総生産(GDP)の約2割を占めるなど、財閥優遇の経済政策が是正されないことに対し、国民の不満は高まっているといわれる。そんな中で今回の作品が公開されたこともあり、一部には「政府、さらにはサムスンへの批判が新たなステージに入る、また入ったのでは…」(関係者)との見方もある。

反感買う中小・零細企業圧迫
 世界にはゼネラル・モーターズ(GM)やトヨタ自動車など、その国を代表する製造業が存在する。韓国といえば、当然のことながらサムスンだろう。

 だが、ニューズウィークが2012年3月28日号で特集した『サムスンはなぜ嫌われるのか』では「アメリカのゼネラル・モーターズや日本のソニー、トヨタはアメリカや日本を代表する企業で、問題を抱えながらもそれぞれの国で誇りとされている。だが、サムスンは違う。これほど国民の反感を買っている企業は世界でも珍しい」(一部を抜粋)と紹介されている。

 韓国国民がサムスンを嫌い、不信感を募らせている理由について、ニューズウィークはサムスンの多角化経営が個人経営の小売店や中小企業の経営を圧迫していることや経営倫理上の問題や政権との癒着ぶり-などをあげている。

 このように国民に嫌われる一方、韓国人が最も働きたい企業のひとつがサムスンなのも間違いない。朝鮮日報(日本語版)など韓国メディアによると、昨年10月に実施されたサムスングループの新卒者採用試験には、採用枠5500人に対し、約10万人が応募したという。

「嫌い」でも「入社したい」
 韓国経済に詳しい専門家は「韓国人はエリート意識が強い。サムスンはまさにエリート企業で、そこで働くことにあこがれる。嫌いだが、入社したい-というのが本音で、だから10万人も応募する」と説明する。

 その上で「とはいうものの、サムスンに入社できるのはほんの一握り。働きたくても、働くことができない人間にとっては財閥批判の最大ターゲットとなるのではないだろうか」と分析する。

 韓国国内での「もう一つの約束」のヒットは、サムスンに対する国民の複雑な心境を表したものといえるが、良くも悪くも韓国はサムスン頼みである。

  しかし、サムスンの13年10~12月期連結営業利益は2年ぶりの減益となり、わずかながら勢いに陰りが見え始めている。10年以上にわたってデジタル家 電分野の頂点に立つサムスンの低落傾向が鮮明となれば、国民の批判は今後さらに厳しくなるものと予想される。msn産経ニュース2014.2.26
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/140226/wec14022607010000-n1.htm

韓国を見習った先はこうなるわけです