2016年11月12日土曜日

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成28年(2016)11月13日(日曜日)
         通算第5086号 
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 まともな紙おむつも粉ミルクもつくれない国が宇宙ステーションとは
   偏在する技術力、アンバランスな産業構造。どこかで破綻するだろう
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 宇宙における軍事要塞が「宇宙ステーション」だ。
中国は2016年10月に「神舟11号」を打ち上げ、宇宙船に滞在することに成功、これで米ロに追いついたと豪語した。

中国の宇宙空間への取り組みはすべて軍事利用である。宇宙というフロンティアをさきに制覇すれば、世界を制覇できるという中国のパラノイア的野心が、この宇宙技術開発に集約されている。
 すでに遠隔探査衛星「遙感」と高精度画像撮影衛星「高分」によって、中国に接近する外国の海上部隊を探査し、防衛作戦行動を遂行するために衛星の精度向上をはかり、戦争に利用する。

 測位衛星「北斗」は弾道ミサイルや次世代兵器の超音速度飛翔体を誘導する目的がある。
 現実に「北斗」の端末をつかって海上民兵に偽造した軍人漁民は、尖閣諸島に400隻が侵入して漁場を荒らした。すでに「北斗」の端末は中国漁船四万隻に搭載されている。潜在的戦力として漁船も活用するのである。

 そればかりかパキスタンなど世界30ヶ国に中国は「北斗」の端末を輸出して外貨を荒稼ぎしているが、この衛星を2020年まで35基打ち上げる計画がある。

 通信衛星の「烽火」は軍事通信に欠かせず、また量子通信衛星「墨子」は、解読困難な暗号通信を解読し、あるいは自軍の通信に利用する。これらの総合戦力をたかめるために、中国軍は近年、工学部出身者を高給で大量に雇用してきた。

 米国が最初に衝撃を受けたのは中国がキラー衛星を実験し、宇宙空間での衛星破壊が可能な技術を獲得したことだった。
敵戦力、とくに偵察衛星、探査衛星、通信衛星を破壊すれば、米国、NATO、日本などの探査、観測、通信の機能を壊滅でき、敵戦力の初動ができなくなると、戦争を圧倒的優位に遂行できる。

 くわえて中国には独自の宇宙ステーション(天宮計画)と月面基地建設計画があり、米ロに先駆けて宇宙を支配し、世界第一の覇者になろうとする野放図ともいえる野心がある。
 現に直系500メートルもの世界最大の天体望遠鏡を貴州省に建設した。このために一万人の住民を立ち退きさせた。これは電子望遠鏡「天眼」というが、100億光年向を観測できるというシロモノだ。
 

 ▼専守防衛では国を護ることは出来ない

では日本はと言えば、観測衛星、通信衛星、気象衛星では卓越していても、軍事偵察機能を取り外していたり、通信衛星でも敵の通信を傍聴できないようにしており、軍事目的が備わっていない現実は、戦力とはとても言えない。
中国は軍事偵察衛星、キラー衛星を保有しているのだから、いかに仮想敵の技術に三周遅れであっても、「攻撃こそ最大の防御」(孫子)であり、総合的戦力になる。

 日本はGHQの占領以来、まっとうな軍事力を保持することは禁止され、くわえて日本の自虐的な憲法解釈によって、攻撃兵器を保有できない。専守防衛という奇観は、防御兵器システムは良いが、攻撃はいけないという解釈であり、
現実にはF15に搭載されたミサイルも防御目的、飛んでいるミサイルを防衛するパトリオットがあっても、いずれ中国が開発する超音速飛翔体をキャッチアップすることは出来なくなるだろう。

 米国は「攻撃こそ最大の防御」とは言わないけれども、「プリエンプテイブアタック」(PREーEMPTIVE ATTACK)という用語を使い出した。防御的先制攻撃という意味である。

しかしよくよく考えてみれば、まともな紙おむつも粉ミルクもつくれない国が宇宙ステーションとは片腹痛くないか。
 偏在する技術力、アンバランスな産業構造。どこかで破綻するだろう。

  ▽△◎み□◇▽や□◎○ざ◎□○き○□◇
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)貴紙前号書評欄で紹介された、小堀桂一郎著の『鈴木貫太郎』の紹介文の初めに、「軍人の精神を体現した明治生まれの典型の日本男児」と有りますが、正確には、慶応生まれです。
生年月日は慶応3年12月24日(1968年1月18日)ですが、この辺は年号の変わり目と、旧暦と新暦の関係が絡み合って複雑です。明治元年は、1868年1月25日から始まったはずです。従って僅かなことですが、鈴木貫太郎は、正確には慶応生まれです。
私の母方の曾祖父は、海軍兵学校14期で、鈴木貫太郎と同期(海軍大学校も)、祖父は海兵13期で、日清戦争の折は、3号水雷艇の艇長、鈴木貫太郎は6号艇の艇長だったようで、曾祖父は、第二特務艦隊で、地中海に行ったことがあるようです。
私の祖先の経歴は、色々、鈴木貫太郎とオーバーラップする様です。
 (杉並の噛みつき亀)



  ♪
(読者の声2)憂国忌のプログラムが決まりました。
三島由紀夫氏追悼会「憂国忌」

とき   11月25日(金曜日)午後六時(五時開場)
ところ  星陵会館二階大ホール
http://www.seiryokai.org/kaikan/map.html
資料代  2000円(会員千円) 記念冊子を差し上げます

<< プログラム >>
(総合司会 玉川博己)
1800 黙祷 開会の辞 松本 徹(文芸評論家・三島由紀夫文学館館長)
1810 <記念シンポジウム>「三島由紀夫と憲法改正」
佐藤 守(軍事評論家・元空将)
潮 匡人(軍事評論家・拓殖大学客員教授)
藤井厳喜(国際政治学者)
富岡幸一郎(文芸評論家・鎌倉文学館館長)
葛城奈海(キャスター・女優)=司会

1950  「三島由紀夫が愛した美女たち」岡山典弘(作家)
1955  「三島演劇のこんにち」― 閉会の辞に代えて 村松英子(女優)
2010   閉会
(プログラムは予告なく変更になることがあります。ご了承下さい)。
     (三島由紀夫研究会事務局)

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 アンディチャンのアメリカ通信
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戦い済んで日が暮れて.期待が大きければ失望も大きい。
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投票の結果は意外なことに小悪が巨悪を制してトランプが当選した。
トランプの勝利を予期していた人は殆どいなかったので世界中が瞠目した。結果がでたあといろいろな分析が出ているが、みんな後出しじゃんけんである。トランプが勝ったのではない、ヒラリー反対とオバマ批判が勝利したのである。
 過去15か月間ヒラリーの支持率は一貫して45%、トランプの支持率は乱高下したけれど43%ぐらいだった。二つ合わせて88%、残った未決の12%がトランプに票を入れたから当選したのである。真のトランプ支持は43%だけである。
 トランプにとって非常に幸運だったことは、本人の当選だけでなく国会で上院と下院が共和党優勢となったことだ。つまり共和党の完全執政が可能となり、オバマがぶっ壊したアメリカ、国威の衰退と人種と政治の両極化を直す機会が来たのである。

●意外な結果、いろいろな憶測

 トランプが当選すると各大都市でトランプ反対の群衆デモが起き、カリフォルニアではCALEXIT(連邦脱退)を主張する声もある。意外な結果が民衆の不安を呼ぶのである。また、当選のあとすぐにトランプを礼賛する声もトランプの策略が正しかったと褒めるオベッカ評論もある。反対も賛成も一時的なものであり、時間がたつにつれて評論も変わるだろう。

トランプは幸運なことに当選と完全執政のチャンスを得たが、私は彼が幼稚な暴言で当選したランボーであると思っている。
トランプ大統領は独裁者になる可能性があり、新政権の閣僚たちが幼稚な自大狂トランプをコントロールできるかでアメリカが立ち直るか、または国際関係が悪化して経済が衰退するかである。
 まだ当選したばかりだからいろいろな希望的観測、期待と危惧が入り混じっている。トランプの選挙公約はたくさんあるが、期待と危惧が半々である。国民の期待するものが幾つか成功すればトランプ政権は成功した大統領と言えるだろう。

●トランプに期待すること

 トランプは既に最初の100日の計画を発表している。記事によると最初の100日で、オバマケア(健康保険制度)を廃止する、NAFTAとTPPの再検討、ヒラリー個人とクリントン基金の調査、メキシコ国境に塀を作る、オバマの発布した大統領命令をすべて廃止するな
ど、みな国民が大きく期待していることである。
 大きな期待はヒラリー断罪とクリントン・マフィアの徹底的調査であろう。クリントン夫婦は過去40年の間にたくさんの罪を犯したのに一度も断罪できなかった。国民が期待するのはクリントン一家の調査である。オバマ大統領はヒラリーを赦免するだろうか。赦免すれば国民は失望する、オバマの評価はゼロになる。

 オバマ政権の第一期は国会の民主党優勢でいろいろな法案をごり押しで通したが、第二期になると共和党優勢で法案が通らなくなり、オバマは大統領命令を乱発して法案を通した。法案は国会が批准しなければならない。大統領命令で国会を無視して法案を実施したのである。
50以上のオバマ大統領命令を廃止し、オバマケアも廃止すればオバマ業績(レガシー)はゼロ、史上最悪の大統領という評価が決まる。国民は大喝采するだろう。

過去8年間に共和党の提出した法案がすべてオバマに反対されたが、新国会は早急に多くの法案を通すだろう。更に重要なことは最高裁判事の任命である。トランプは将来4年間に少なくとも4名の最高裁判事を任命できる。これでサヨクは影を潜め、アメリカは国威を再現できる。トランプのスローガン、Make America great againが実現できるのだ。

●トランプ政権の危惧

 良いことばかりではない。第一に心配すべきことはサヨクの反対が更なる国民の両極化を促すこと、United States がDived States になって政治が停頓することだ。
 トランプはすでに気候温暖化について反対意見を打ち出している。国内では石炭業の再開始や、オバマが反対を続けていたカナダから通すキーストーン・パイプラインを許可する。国内ではフラッキングと呼ぶオイルシェール採取を許可する。これらは気候温暖化を推進するグループに反対される可能性が大きい。
 次に懸念すべきことは移民問題やメキシコ国境に塀を作ってメキシコに金を出させる、そして違法移民を国外追放するといった強引な政策が国際関係を悪化させることだ。

これに続きNAFTAやTPPの廃止もしくは見直し交渉でアメリカが過分で不公平な条件を強要することだ。国際関係の悪化は世界経済の悪化につながる。大きな懸念は国際関係の悪化に伴う中東問題、中国の覇権進出などに歯止めが利かなくなることである。

●戦い済んで日が暮れて

選挙が終わって三日目、メディアもヒラリーもトランプが当選するとは思っていなかった。国会の主導権も失ってオバマ・レガシーは限りなくゼロに近くなった。今年の選挙は小悪と巨悪の戦い、アメリカの史上最悪の候補者の戦いだったが、意外な結果はリベラルの大敗北、神はアメリカを見捨てなかった。

トランプはラッキーだったが、しかし民主党側が簡単に泡沫化して新政権が順調に動くとは思えず、反対は激化するだろう。共和党側が自大狂トランプを制御できなかったらアメリカは分裂する。

アメリカ再建は成功するだろうか。期待が大きければ失望も大きい。新政権の百日ハニームーンが終われば反対派の攻撃は激化するに違いない。来年三月ごろになれば新政権の評価は大きく変わるかもしれない。
 
 (アンディチャン氏は在米評論家)
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