2016年11月20日日曜日

2016年11月17日 | 経済

市場経済最優先のグローバリズムは、先進国にとっては損する
ところが多く、益するところが誠に小さい構造変化であった。


2016年11月17日 木曜日

トランプ大統領誕生を何故、予測できたか:グローバリズムから新ナショナリズム 11月16日 藤井厳喜

米大手マスコミの情報操作

肝心なことは、今年の米大統領選挙においては、アメリカの大手マスコミの報道が、全くあてにならないということであった。大手マスコミはこぞってヒラリー支持であり、トランプ・バッシングであった。マスコミ自身が主導して、トランプに対するネガティブ・キャンペーンを仕掛けていた感さえある。トランプの言葉は常に、誤解を招くような形でしか伝えられず、ことさらに悪者イメージが先行していた。これは偶然そうなったわけではなく、大手マスコミが政界のアウトサイダーであるトランプを徹底的に排除するためにある程度、意図的に行ってきたことである。リベラル系メディアは元より、予備選挙の段階からトランプ・バッシング一色である。
保守系メディアは通常、共和党候補を応援するのだが、今年の大統領選挙では、旗幟鮮明にしてトランプを応援した大手メディアは殆ど存在しなかった。保守系大手メディアも、トランプと反トランプに分裂していたのである。つまり大手メディアにおけるトランプ応援団は極めて少数派であったと言うことができる。それではトランプ支持者たちは、どのように運動を展開していったのかと言えば、彼らは、インターネットのTwitterやYouTubeをフルに活用して、大手メディアに対抗していったのであった。

アメリカの大手メディアがこういった状況であったのだが、日本の大手メディアが又、全く無反省にアメリカの大手メディアの情報をそのままに垂れ流しにしていた事には、更に驚かされた。アメリカの大手メディアの報道の歪みを日本のメディアが修正するのではなく、寧ろその歪みを更に拡大して日本国民に情報を流したのだ。つまり、日本国民としては、アメリカの大手メディアと日本の大手メディアという二重の歪んだレンズを通してしかアメリカの現状が見られなかったのである。
そういう事態を予備選挙の時点から把握していたので、筆者としては大手メディアが発表する両候補の支持率調査
(世論調査)をそのまま信用することは全くしなかった。初めからあてにならないと分かっていたからである。
特に数字の改竄が酷いと思われたのがCNNである。CNNは、良識あるアメリカ国民からはクリントン・ニュース・ネットワークと仇名される程に、クリントン陣営べったりであった。報道機関というよりは、クリントン選挙対策本部の広報部になったような感じであった。大衆を情報操作するために、CNNは相当、意図的に支持率調査の数字をいじっていたものと思われる。

筆者としては、大手マスコミ絡みでない信用できる世論調査を見付けて、それを継続的にフォローすることにしていた。それらの比較的に政治的に中立性があり、客観的な世論調査が物語っていたのは、実はトランプ対ヒラリーの戦いは、抜きつ・抜かれつの接戦であったが、終盤に向けて明らかにトランプの支持率が上がっているという事実であった。又、当選予測の為には、支持率調査以外にも、いくつもの経験則のようなものが存在する。例えば株価との関係や、前回大統領選挙との相関関係などである。大統領選挙は4年に1度のアメリカ政治の一大イベントなので、この手の経験則の知識の蓄積にも膨大なものがある。中には参考とすべきものが多い。星占いまで持ち出す気はないが、今回、特に注目したのは、予備選挙の初期の段階の票の出方だけから、本選挙の最終結果を予測すると言う選挙予測法であった。結果として、これは今回も予測が的中している。又、ラスベガスの賭け率なども一応の参考になる。
こういった事象に加えて、最近はインターネットの時代であるから、先程申し上げたトランプ支持者からの直接のインターネット上の情報提供も又、極めて有益であった。

例えば今回、選挙戦の終盤に向けてトランプとクリントンの支持集会の様子が度々、個人のYouTubeで放映された。単純に言って、トランプ支持集会は満員で熱気にあふれ、クリントン支持集会は人が閑散として白けていたのである。そういった会場の現場を複数、観察していれば、クリントンが圧倒的に優位という世論調査は、どうもおかしいと思うようになる。これが健全な常識というものであろう。
大手マスコミの垂れ流す数字をうのみにしていた日本の所謂「評論家」たちは、生のデータを幅広く集め、虚心坦懐に自分の頭で物事を考えるという、ごく当たり前の努力を怠っていたのである。だから大マスコミに引き摺られてしまったのだ。今回のアメリカ大統領選挙を通じて、アメリカのマスコミの病根も明らかになったし、又、日本のマスコミの歪曲と無能さも白日の下に晒された感がある。
日本のマスコミはこれだけの無責任な報道を行なっておきながら、全く反省するそぶりさえ見せていない。次は直ぐ、トランプの組閣人事だということで、またまたハシャギまわって中身のない報道合戦を繰り広げている。

筆者自身のことで恐縮だが、トランプ当選の予測を的中させたというので、少しは大手の新聞や地上波のテレビ局からインタビューや出演の依頼があると思いきや、これが全くといっていいほど無かったのである。やはり自分達の失敗は、徹底的に隠蔽したいというのが、マスコミの体質なのであろう。こんなことをしていると、大衆は益々マスコミ離れをしてゆくことになるだろう。自ら墓穴を掘っていることに気が付かないのだろうか。
アメリカでは今回の大手マスコミのあまりに酷い情報操作に対する反感が高まっている。今後、大手マスコミは、その影響力を失い、個人発信のYouTubeテレビやニューズレターのようなものが影響力を拡大してゆくだろう。日本のマスコミは相変わらず無反省のようだが、彼らの力の衰退も最早、避けることができないであろう。

グローバリズムから新ナショナリズムへ

少し視野を拡げて今回のアメリカ大統領選挙を見ると、世界では現在、グローバリズムから新ナショナリズムへの大きな潮流の変化が起きていることが分かる。米大統領選におけるトランプ当選は、今年6月の英国のEU離脱と全く同じ方向の現象である。過去30年から40年、世界を席巻してきたのは、ボーダーレス・エコノミーを目指す経済グローバリズムの潮流であった。ボーダー、即ち国境を廃止し、人・モノ・カネが世界を自由に動き回るグローバル市場主義こそ、世界経済を成長させてゆくエンジンであると散々に喧伝されたのである。人々はその理論を詳細に検討することもなく、安易に受け入れ、世界経済はボーダーレス化の方向に変化してきた。

しかし振り返ってみれば、この市場経済最優先のグローバリズムは、先進国にとっては損するところが多く、益するところが誠に小さい構造変化であった。つまり、グローバル経済推進で大儲けしたのは一部の多国籍大企業だけであり、先進国の中産階級は押しなべて、その経済的地位が没落していった。多くの雇用が低開発国に流出し、先進国の勤労者の賃金は、相対的に引き下げられた。
先進国の大企業は、例えばアップルなどがそのよい例だが、低開発国で低賃金を利用して製品を製造し、それを先進国の豊かなマーケットで売って利益をあげ、更にその利益をタックスヘイブンに蓄積して先進国では納税しないという巧みな経済行動をとるようになってきた。多国籍企業というよりは、まさに無国籍企業である。こういった企業はグローバル化によって大儲けが出来たが、先進国の中産階級、特にアメリカの中産階級は、この動きにより大きな損害を受け続けてきた。
アメリカでは過去30年間、まさに中産階級は崩壊を続けており、それには歯止めがかからなかったのである。民主党も共和党も、アメリカ中産階級を救う政策を打ち出すことは出来なかった。その欲求不満がトランプ現象を生み出したのである。トランプは堂々と自由貿易を否定し、保護貿易によって中産階級を保護すると主張した。従来の二大政党が決して言い出せなかった政策である。結局、グローバリズムは先進国の国民、特に中産階級を不幸にしただけであるという結論が、もう出てしまっているのだ。もうグローバリズム幻想には騙されないぞ、というアメリカの有権者の出した答えが、トランプ当選であった。

イギリスのブレクジッドに関しても同じことが言える。イギリスという国家の独立を放棄して、EUの一部になり、経済的繁栄をイギリスが享受できていたなら、英国民はEU離脱を決して決断しなかったに違いない。結局、独立を放棄し、EUの経済統合に身を投じてみたが、平均的イギリス人の生活はよくなるどころか、寧ろ貧困化していったのである。イギリスの場合、特に金融業のエリート達は大いにグローバル化とEU統合によって利益を上げることができたが、その他の国民はコストのみを押し付けられ、不満は蓄積してゆく一方であった。そのコストの最たるものが外国難民の流入、特に中東からのイスラム系難民のイギリス流入であった。EUに留まり続けていれば、大量の難民を継続して引き受けなければならない。それはイギリスの国柄を完全に破壊してしまうことになる。経済的にもイギリスにプラスにならない。そう見限ったからこそ、イギリス国民はEUからの離脱を決意したのである。ここにおいても、グローバル化、ボーダーレス化がイギリス国民を決して幸福にはしなかったという厳然たる事実が存在する。
つまり、経済のグローバル化は先進国の国民にとって、決してよい結果をもたらさなかったというのが過去30年の結論なのである。それ故、もう一度、国民経済を再建しよう、国家という秩序を再構築しようという方向にイギリスとアメリカの国民は大きく舵を切ったのである。

2017年には、フランスで大統領選挙が行なわれる。2回投票制の為に、4月から5月に行なわれる選挙だが、ここでフランスのナショナリズムを代表する国民戦線のルペン候補が当選する可能性が高まってきた。ルペンが当選すれば、少なくともフランスは、統一通貨ユーロを離脱することになるし、国民投票を経て、場合によってはEUそのものから離脱するかもしれない。例え、ルペンが当選しないにしても、これ以上、国家の独立を犠牲にしてEUという国際共同体に権限を委譲するという流れは、完全に逆転しつつある。国家はその自己決定権を取り戻そうとしている。そして自国民の面倒は自国でみる、という方向に世界政治のトレンドは動きつつある。国境をなくしてみても、いいことより悪い事の方がはるかに大きかったということだ。日本もこういった国際社会の動向を踏まえて、国家秩序の再構築と国民経済の再生に取り組まなければならない。自由貿易を拡大すれば経済が自然に発展するなどというのは、全くの幻想にすぎなかったのだ。我々は過去30年から40年、社会実験を行ない、その結果が既に明らかになっているのである。同じ失敗を繰り返すことは許されない。



(私のコメント)

イギリスで起きたブレグジットの流れは、アメリカ大統領選挙におけるトランプ氏の勝利によって拡大されてきた。国家と多国籍企業との戦いは、人々の意識からは隠されていたが、行き過ぎた多国籍企業資本主義は国民の幸せをもたらさない。国民を守るのは国家の責務であり、多国籍企業は儲けた利益をタックスヘイブンに隠してしまう。

グローバル資本主義経済は、海賊資本主義であり国家の手の及ばない所に利益を隠してしまう。タックスヘイブンと言う隠し金庫はケイマン諸島やバージン諸島にある。パナマ文書で暴露された内容の多くは脱税した個人資金や課税逃れの多国籍企業の名前が列挙されている。国民から収奪された資金がタックスヘイブンに隠されている。

このような事実がネットによって暴露されて、イギリス国民やアメリカ国民の怒りに火がつけられて国民投票や大統領選挙によって現れて来た。マスコミは多国籍企業の味方でありCMのスポンサーになっているからだ。だからクリントンを応援するコメンテーターしかテレビに出ることが出来ない。しかし国民もネットによって反グローバリズムの動きが起きて来ている。

日本企業の内部留保は380兆円にまで膨らんでいますが、本来ならば従業員の給料として給付されるべきカネであり、それがタックスヘイブンに隠されている。タックスヘイブンの子会社にカネを移し替えれば税金がかからないからだ。アップルやグーグルやアマゾンはアメリカで得た利益をタックスヘイブンに持って行ってしまう。

タックスヘイブンは何もしなくても、世界中からカネが集まって来て、資金運用して得た利益で、今やタックスヘイブンには超高層ビルが林立している。そしてイギリスやアメリカの工業地帯は廃墟と化して、労働者は失業してホームレスになってしまった。つまり1%の富裕層だけがますます豊かになり99%の貧困層は職を奪われる恐怖に慄きながら低賃金で働かされる。

考えてみれば、TPPも喜ぶのは多国籍企業であり、TPP加盟国からは移民が押し寄せてくる。トランプがメキシコ国境に壁を築けと言うのはアジテーションですが、アメリカにあった工場もメキシコに行ってしまった。中南米からは多くの低賃金労働者がやって来て、アメリカ国民の給料が上がらなくなってしまった。

トランプ新大統領は、関税を35%に引き上げると言っている。藤井氏は「トランプは堂々と自由貿易を否定し、保護貿易によって中産階級を保護すると主張した。」と述べていますが、その動きがイギリスやアメリカで起きている。日本でもこの動きが出て来るだろう。TPPはこの動きに逆行する事だ。

先進国の多国籍企業は、新興国に惜しみなく技術や資本を供与して工場を建てて安い賃金で働かせて、その製品を先進国で売りさばいてきた。しかし今やその動きの反動が起きて来て、中国製や韓国製のパソコンやテレビやスマートフォンが世界で大きなシェアを取るようになった。だからトランプはアップルのアイフォーンをアメリカで作れと言っている。

パソコンやテレビやスマホは、価格破壊が起きてしまって10万円で売られるべきものが3万円で売られるようになってしまった。安く売られれば製品の普及にはプラスだが、日本の家電産業は儲からなくなってしまった。これもグローバル経済の行き過ぎから起きた事であり、新興国からの安売り製品にはダンピング課税をかけるべきだろう。

藤井氏は日本やアメリカのマスコミを批判していますが、グローバル資本主義を批判する事は新聞やテレビで批判する事は許されない。すれば極右扱いされて人種差別主義者のレッテルが張られる。移民も行き過ぎれば、その国の労働者にとっては低賃金で働かされる事になる。

0 件のコメント:

コメントを投稿