2016年11月17日木曜日

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成28年(2016)11月18日(金曜日)
         通算第5096号  <前日発行>
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 楽天的、短絡的、一方的な思いこみが激しい中国のトランプ期待
  世界一の軍隊、世界一モラルの高いアメリカ軍の再建が目的なのに?
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 中国の共産党系機関紙誌や御用学者、政府系シンクタンクのトランプ観を見渡したところ、その楽天的とでもいうか、短絡的な世界観、その思いこみの激しさにむしろ感嘆するほどだ。
トランプが中国に対して何を始めるか不透明な段階で、こうするだろうと独善解釈に自ら酔うという特性は治癒の見込みがない。嗚呼、中国人のジコチュー。

 「これで米国もAIIBに加盟する」「トランプは対米投資規制を緩和し、米中間の経済交流ももっと激しくなる」「なにしろTPPに反対ということは中国包囲網に反対というのがトランプの本音だ」などと騒いでいる。

 机をひっくり返してトランプを下敷きにして、その上にパンダが乗っている構図の漫画が中国語メディアに配信された。これが中国人の心情ではないか。
 「トランプは中国に強く当たれとする民衆の意見を押さえ込み、習近平との電話会談でのべたように建設的な二国間系の改善に向かうだろう」と楽観的な近未来を述べる。 

 中国人の米国専門家によれば「米国二大政党といっても民主党も共和党も同じ船にのっているのであり、ダボス会議にエリートが集まる仲良しクラブのように、ブッシュ家とクリントン系は親しいではないか」。
ところがトランプの勝因は、このような格差の矛盾への庶民の不満を巧みに吸収し、勝機を捉えたのであり、かれは『「機会便乗主義者」だ』とする。

この分析を聞いて、反ブッシュ、反共和党の過激な旗振り役、マイケル・ムーア監督がトランプが勝つと予想していたことを思い出した。

ムーアの予測根拠は単純で「全てを失った人にとってはトランプに投票するしか方法が無いからだ」。  


▼根拠のない主張を大風呂敷に拡げるのが得意技だからね

 「トランプの言うインフラ投資には最大で3兆ドルが見込まれるが、米国民の預金では担保できないから、アジアの預金者のカネをあてにするだろう。なにしろトランプは外交的、安全保障政策的には中東を優先し、南シナ海問題には関心がほとんどない」(サウスチャイナモーニングポスト、11月17日)。

 だから資金をアジアから、とくに中国から吸収しようとしてAIIBにおっとり刀で加入してくるだろうとみるのだ。

 先進国の市場関係者はそういう見解をとらない。資金需要があれば利上げは確実であり、銀行株は上がり、預金金利も上昇すると読む。
 懸念されるのはインフレだから小売り、百貨店、スーバーや消費者物資企業の株は売られるだろうと読む。事実、トランプ反対にまわったIT関連企業の株価はぞろりと落下した。

 中国経済については中国政府系のエコノミスト等は「住宅投資、設備投資過剰など時間をかければ解決する。中国人の預金は債務額を担保しうるし、これからは内需拡大の本格化も望まれる」などと予測している。
これまた、楽天的な、あまりに楽天的な未来予測で、最後はただひたすら希望的観測を並べ立てているにすぎず裏付けがない。

外交宣伝や領土主張の根拠のない非論理に通底する。尖閣は昔から中国領、沖縄もそうだった。南シナ海全域は古来より中国領であると、いかなる歴史的証拠もなしに独善的に獅子吼する、あれと同じである。

 現実はまったく違う。
 貧困と絶望、そして幹部の腐敗。中国から逃げ出したい若人が夥しい。軍事の座り込みデモも中央軍事委員会の真ん前で行われた。
 海外へ憧れる若い女性を鴨にして詐欺も頻発しているが、その手口は深刻なほどに悲劇的である。

 先ごろ象徴的な事件が報じられた。
オーストリアの警察当局が150人以上の中国人女性に風俗店で売春を強要していた容疑で中国人とオーストリア人の計7人の身柄を拘束した。
 マフィアの犯罪である。中国マフィアは「ホームステイ先に無料で住み込み家事・育児を手伝いながら現地の文化や言語を学ぶ「オペア」やマッサージ師などの就業機会を提供凍ますなどと嘘の広告を謳って、中国人女性を募集した上、斡旋手数料に1万ユーロ(約116万円)を支払わせた。

これだけでも詐欺だが、しかもパスポートを取り上げ、ウィーンで一定期間、売春させた後、各地の風俗店などに送り込んでいた。
この悪質なマフィアは女性らの生活を監視し、売上金を巻き上げ、逃走しようとした場合は暴力を振るうなどした。
  オーストリア警察は10カ所を超える売春拠点を摘発したが、偽造身分証明書や拳銃、現金などを押収したという。

 この類の犯罪はパキスタンで、ニュージーランドで、そしてロシアで米国で頻発しており、ニュージーランドでは中国人売春婦がダンピングするので職を奪われたと既存の売春婦等が団結して訴え、パキスタンではイスラムの教義への背徳として中国人経営の風俗店が襲われ、米国では拘束する売春婦らが韓国人についで中国人が増えたと報告されている。

 これが世界GDP第二位、外貨準備世界一、米国国債保有高世界一のくにがなしている実態である。
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)17日付けの産経新聞に大きな広告(宮崎正弘 v 渡邉哲也『世界大地殻変動で、どうなる日本経済』、ビジネス社)。すぐに書店で買い求め、半日かけて半分、読み進みました。
 これはトランプ当選直前の世界の経済状況を分析されたものですが、トランプ当選以後の世界情勢を詳細に展望していて、まことに有益です。
 すべてを拝読してから、詳細の書評を遅らせていただきます。
   (UH生、横浜)



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(読者の声2) とびっきりの講演会のお知らせ

!)演題 「政治のリーダーシップー田中角栄氏を偲びながら」

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