2015年10月30日金曜日

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)10月30日(金曜日)弐
       通算第4708号   
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 安倍首相の中央アジア歴訪、3兆円のビジネスを展望
  「日本+中央アジア」にアベノミクスのひとつの重点を置いた
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 安倍首相は10月22日から28日まで一週間の駆け足旅行で、モンゴルと中央アジア五ヶ国 (カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタン) を歴訪した。
これらの国々は中国とロシアに地政学的に挟まれ、激動の歴史を刻んだ。

しかし、何れも海の出口のない、内陸国家である。
一部に資源に恵まれる国もあるが、農業だけのキルギス、山岳曠野の多いタジキスタンなど、経済的苦境にあって、先進国の支援を待っている。
 首相の歴訪には50社の企業幹部、団体役員が同行した。

  安倍首相はウランバートルに半日を費やしたあと、すぐに最も西側のトルクメニスタンへ飛んだ。日本の首相の訪問は初めてだけに、歓迎行事も多彩だったが、 実質的にトルクメニスタンは鎖国しており、なかなか入国は難しいところである(ちなみに筆者も、この国だけは行ったことがない)。

トルク メニスタンは膨大なガスの埋蔵をほこり、冷戦下ではソ連が一方的に購入していた。中国が割り込み、ここから総延長j8000キロのパイプラインを敷設し て、ウズベキスタン、カザフスタンを経由、新彊ウイグル自治区から上海へ輸送している。これを『西気東送』プロジェクトという。

日本勢は日揮、住友商事などがガス田開発、発電所建設などのプラントを受注しており、首相に随行して正式の調印をめざした。

天然ガスの脱硫プラントは一兆円、ほかに三菱商事などの化学プラントが5000億円、住商の火力発電が400億円、東洋エンジニアリングの肥料プラントが4000億円などである。
首都のアシガバードでのベルドイムハメドフ大統領(ニヤゾフ前大統領の庶子)との会談でも安倍首相は「質の高いインフラ整備に協力する」と日本の立場を協調した。

 ▼タジキスタンも首相訪問は初、ウズベクは顔見知り

 二番目の訪問国はタジキスタンである。
ラシモン大統領と会談し、地域の安定、とくに国境警備や麻薬対策に関しての協議をおこなったほか、98年に慟哭で過激派の犠牲となった秋野豊氏の慰霊碑に献花した。
 同国に日本の首相が行くのは初めてである。

 三番目の訪問国はウズベキスタンである。
 首都タシケントでカリモフ大統領との首脳会談にのぞみ、人材育成、高度技術センターの開設、物流インフラへの整備協力などが話し合われた。

またナボイ医療センター工事に68億円の無償援助がきめられた後、首相夫妻は日本人墓地を訪れて献花した。
そののち、ナボフ劇場へ赴いたのも、ソ連抑留時代の日本兵が、この劇場を造った曰くがあり、しかも66年のタシケント大地震のときに、ほかの建物は倒壊したのに、この日本人が造った劇場だけは倒壊しなかった。

ウズベキスタンはすでにカリモフ大統領が数回訪日を重ねており、日本にはなじみの深い。ガスプラント、原子力発電開発、農業指導などで協力を積み上げてきた。


▼ギルギス

四番目の訪問国はキルギス。
ここでは三菱商事、双日など五社連合による、ガスの前処理施設の建設に協力し、16年ぶりの円借款が成立した。ほかにビシュケク → オシ間の新幹線道路整備建設に120億円の円借款を金利1%、四十年償還(十年据え置き)という有利な条件で供与する。

すでにJICAを通じて多くの無償援助をなしてきたが、首相訪問であらたに16億円を無償援助し、マナス空港の施設改良工事などをアタムバエフ大統領との面談で決めた。

キルギスは風光明媚で観光には恵まれているが、工業のインフラがよわく、大学をでたキルギスの学生はロシアなどに出稼ぎへ行っている実情がある。


▼カザフスタンの首都で「日本+中央アジア」の記念スピーチ

最 後の訪問先カザフスタンで安倍首相は歴訪を締めくくる記念スピーチをこなし、「アジアの中央に位置する国々は何千年にもわたって東西の文明の交差点となっ てきた。多用な文化を受け入れる包容力、多様性のなかかから生み出され未来を切り開く活力、それこそが中央アジアの魅力だ」として、これからの『関係を抜 本的に強化する』とした。

また「日本の民間企業の意欲は高まっており、日本政府も公的協力、民間投資の後押し、インフラ整備、人作りを支援する。今後、三兆円をこえるビジネスチャンスを生み出す」と演説し、アスタナを後にした。

 こうして安倍首相の「地球儀を俯瞰する外交」は中国の後背地を丹念に訪問して、地政学的にも楔を打ち込む格好となった。

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西村眞悟の時事通信           平成27年10月29日
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南シナ海の緊張と辺野古
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 中国共産党の重要大会である第18回中央委員会第5回総会というのが二十六日から始まったその時に、アメリカ海軍は、南シナ海の「航行の自由作戦」(フリーダム オブ ナビゲーション)を実施したようだ。
 習近平主席は、九月にアメリカで「スプラットリー諸島は中国固有の領土だ」と言い放ち、サイバー攻撃の加害国でありながら、被害国だと憎たらしく居直 り、今月の十月にはイギリスで「日本軍国主義の残虐性」を強調し、さらにかの大英帝国に巨額資金援助をする大中華の頭目を演出して意気揚々と共産党の第五 総会に臨んだ。
 そして、「航行の自由作戦」によって晒し者になった。何のことはない、習近平とは他国の領土領海を強奪する「ならず者国家」の頭目に過ぎないではないか、アメリカに舐められているではないか、と。
 アメリカは、一隻であるが、イージス艦「ラッセン」を出している。
 イージス艦は、空中、海上そして海中の複数の敵を同時に撃破できる。従って中共が埋め立てている島の十二浬以内を悠々と航行する「ラッセン」の存在感は強烈である。
 アメリカ海軍のイージス艦のROE(ルール オブ エンゲージメント、交戦規定)は厳しいから、かつて、中共が、尖閣沖で漁船を海上保安庁の巡視船に衝突させたようなことはとうていできない。また航空機をイージス艦の上空に飛ばすこともできない。
 要するに、東シナ海で中共が我が国に対してしてきたことは総てできない。この「ラッセン」の母港は我が横須賀だ。
  前の通信で、我が国の海上自衛隊も、南シナ海でアメリカ軍と共同行動を執っていることを願ったのだが、現在、我が国内はマンションの杭の問題やらが連日 トップニュースで、 一億総活性化という一億で「ええじゃないか踊り」でも始めるような掛け声は聞こえるが 九月まで、あれほど熱心に我が国の安全保障問 題に関心を示した国会は、現実の安全保障「事態」に対しては、あれはウソでしたと言わんばかりに関心を示さない。
 つまり、あいつらは、「空論」は言うが、現実の問題には「無能」なのだ。これが我が国の現実なら仕方がない。
はやくこいつらが国会からいなくなるのが国のためだ。

しかし、仕方がないとだけ言っていても仕方がない。そこで辺野古についてだけ言っておく。幸いにして辺野古は、中共の傀儡知事のお陰で「法的処理の世界」に入っている。
従って、政府は、迅速に法的手続きを済ませ、断固として工事を進めなければならない。
 その上で、南シナ海での事態が辺野古の必要性を如何に高めているかを国民に衆知させねばならない。特に沖縄県民に周知させねばならない。
官房長官や防衛大臣は、沖縄の街頭に立ったらどうか。シナの屏風を背景にして沖縄県庁であの傀儡知事と話をするのは無益だが直に県民に訴えいることは大いに有益である。
 我が国政府の辺野古に関するこの断固とした姿勢が、我が国の抑止力を高め、南シナ海のイージス艦「ラッセン」のプレゼンスを高める。つまり我が国の国際貢献に繋がることなのだ。

さて、南シナ海は、これからどうなるのか。
マスコミには、専門家による、米中が「落としどころ」を探っているなどの解説がある。しかし、「おとしどころ」など探って見あたるのだろうか。
習近平の背景は軍は軍閥化して汚職摘発で習に怨みをもつ分子も多い、習の暗殺未遂が発覚している、共産党組織は汚職に塗れている、
中国経済は「自壊段階」に入っている、民衆の貧富の格差の増大は危険水域に入っており年間二十万件の暴動が起こっている。要するに、何が起こるか分からない、
つまり自壊段階にある共産党独裁国家を相手にして、「おとしどころ」などあろうか。
ただ一つ、確実に言えることは、何が起こっても対処できるようにしておくこと。つまり、戦いに備えておくことが死活的に必要である。

          (にしむら・しんご氏は前衆議院議員)
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)アメリカの軍艦が南シナ海にはいって、アジア全体に軍事的緊張感が漂っていますが、テレビでは例によって唐変木コメンティターが「おとしどころ」を捜しているとか、言っています。
何を言っても聞く耳をもたかない中国と交渉するに「おとしどころ」がないことくらい、宮崎さんの『大嘘つき国家 中国の犯罪』(文藝文庫)でも読んでいれば分かりそうなものをと思いますが、交渉する余地はあるのですか?
  (HG生、茨城)


(宮崎正弘のコメント)日本では「妥協は美徳」ですが、それは日本にだけ通じる論理で、中国人にとって妥協は「悪徳」なのです。
ハッカーでも、南シナ海工事中断でも、米中首脳会談でオバマが強く要請しても習近平は聞く耳がなく、ようやくオバマは納得したのです。この人たちは交渉する相手ではない、と。それで米中首脳会談が終わるやいなや、オバマへ軍に出動を命じたのでした。
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