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2015年04月24日
海自3空にいよいよ哨戒機P-1実戦配備(P-1あれこれ)
海上自衛隊の哨戒機P-1もいよいよ厚木の
第3航空隊に実戦配備されますが
海自哨戒機P-1にまつわるあれこれについて
解説してみたいと思います。
現在、自由世界で開発された新鋭の
哨戒機といえば
米海軍のP-8ポセイドンと海上自衛隊の
P-1の2機種になります。
海上自衛隊のP-1哨戒機
米海軍のP-8哨戒機
(ウイキペディアから)
日本を含む世界16カ国で使用されている
P-3Cも、老朽化が著しく
今後、新型の哨戒機に、換装されて行くと
思いますが
なんと、現時点で選択肢に入るのはほぼこの
2機種に限られてしまいます。
現実的にはほとんどの国が米海軍のP-8を
採用することになるとは思いますが
日本がイギリスにP-1の採用を働きかけるなど
新型の哨戒機を開発しているのが日本と米国
しかないという事実に、感慨深いものを
感じるのは私だけでしょうか。
海自P-3C
そこで今回は、この海自P-1にまつわる
あれこれについて解説してみたいと思います。
1 なぜP-3Cを延命、改修する道を
選ばなかったのか
今でこそP-1はなかなか良い哨戒機だと
いうことで、この手の批判は少なくなって
きましたが
開発を始めた当初は、P-3Cを延命、改修
した方が安上がりだという議論がずいぶん
ありました。
哨戒機は機体そのものの性能より、搭載
している電子機器の性能が重視されることが
多いためこのような意見が出てきたのかも
しれません
とはいっても、P-3Cの母体となった
旅客機、L-188エレクトラは
1950年代に開発された航空機です。
ロッキードL-188エレクトラ
機体の設計そのものが60年以上前の
代物ですから、能力不足というか、
運用や改良の限界に来ていたと言えます。
それと哨戒機という地味なイメージから
輸送機のように、我慢してだましだまし
使えばいいという発想があったのかも
しれません
しかしP-3Cは輸送機ではなく作戦機です。
主な任務は敵の潜水艦を発見して撃破する
ことです。
各国の潜水艦は日々改良され、新鋭艦も
配備されて、性能も年々上がっています。
陸自の戦車74式を改修するのではなく
90式とか10式戦車を開発するのと同じ
事ですね。
特に日本周辺は
かってのソ連極東艦隊、そして現在は発展
著しい中国海軍潜水艦が多数行動している
海域です。
ヨーロッパ諸国などは、各国が協力して作戦を
行ったり、最終的には米海軍の対潜水艦網を
あてにできますから、
まあ、哨戒機も米海軍がP-3Cの後継機を
開発するだろうと考えていたのかもしれません
日本も、米海軍に頼るところはあったかも
しれませんが
冷戦期、ソ連極東艦隊の、世界最大の潜水艦隊を
相手に、丁々発止、警戒監視、追尾を行ってきた
海上自衛隊からすれば
海のものとも山のものとも分からない米海軍の
P-3C後継機を当てにしているわけには
行かなかったと思います。
それに、新型哨戒機の開発はP-2Jの
後継機PX-Lの時からの海自悲願でも
あったということもあったかもしれません
注PX-L:P-3Cの導入前の海自主力
哨戒機P-2Jの後継機の開発が計画されたが
米国の横やりで頓挫した。
2 エンジンをなぜジェットエンジンに
したのか
哨戒機は艦船や潜水艦を監視、追尾するための
ものですから、速力はそれほど必要ないと
されてきました
あるいは場合によっては低速で飛行できた方が
都合が良い場合もありました。
ということもあって、これまではターボプロップの
哨戒機が多かったのですが
潜水艦の性能が上がり、探知距離も短く
なってきている現在
任務の多様化にも対応できるようジェット
エンジンが採用されました。
例えば、航空基地から450海里のところで
直ちに発進して潜水艦の発見された地点まで
急行するとして
ジェット機:速力450kt(ノット)=1時間
ターボプロップ:速力300kt=1時間半
注:1ノットは1時間で1海里進む速力
時間(速力)にすると1.5倍ですが
その間に、仮に潜水艦が30ktで待避したとして
潜水艦の存在圏は
1時間で2826平方海里(半径30海里の円内)
1時間半で6258平方海里(半径45海里の円内)
速力が1.5倍速ければ、哨戒機が捜索
しなければならない海域の面積は半分以下
になります。
簡単に潜水艦を探知できなくなっている現在、
一刻も早く現場に急行できるかどうかは
重要な要素となっています。
海自旧式機のレシプロエンジン
3 なぜエンジンを4発にしたのか
P-1の計画段階の時に、当時防衛庁長官
だった石破さんが、
信頼性の高い実績のあるエンジンを使って
双発機にしたらどうかという疑問を呈し
それに対して海自側としてはパイロットの
安心感と言うことで4発にした経緯があります。
その後も色々ネット上などで議論があった
ようですが
なぜ4発にしたのか
開発中の国産エンジンの信頼性が低かったので
4発にする必要があったというような意見も
あるようですが
4発にしたのには安全上のいくつかの理由が
あるようです。
北朝鮮工作船に搭載されていた武器
まずは、交戦時の生残性
開発が始まったころは北朝鮮の工作船による
事件も発生した時代です。
機銃や、携SAMで攻撃を受けた場合に、
エンジンが1、2発やられても、基地に帰る
余力が必要というものです。
注:携SAMはエンジンの熱などに反応する赤外線
誘導装置のものが多い。破壊力は大きくないため、
大型機だと1発が命中したぐらいでは撃墜できない
場合が多い
双発機でもエンジン1発で飛行できるという
議論もありますが、哨戒機は低高度を飛行
することも多く、
燃料や弾薬の搭載量など条件によっては高度を
維持できない場合もあり、民間機とは同列に
論じられないと思います。
海面ぎりぎりを飛行するP-3C
次に低高度を飛行する事による塩害
民間機は洋上を低高度で飛行することは想定
されていません、
ですから当然エンジンも塩分にさらされると
いうことは想定外だと思います。
塩害がエンジンに及ぼす影響について、
議論する知見を私は持っていませんが
海上を低空で飛行するとコックピットの窓が
塩で真っ白なると聞きます。
P-3Cは低高度を飛行した時は、基地に
帰った後、エンジンや機体を水洗いする
という事です。
それでもオーバーホールの時には機体の
あちこちに無数の穴(腐食)が見つかる
そうですから、
民間機などとは比べものにならないくらい、
機体やエンジンに負荷がかかっているはずです。
P-1に採用されたF7ターボファンエンジンが、
どれだけ塩害や低空性能に優れているかについても
技術的なことは分かりませんが
少なくとも、一般の民間機用に作られたエンジン
よりは、哨戒機P-1との相性は良いような
気がします。
3つめとして、哨戒機は長時間、洋上を超低空で
飛行することが多いと言うことです。
何時間も高度数十メートルで飛行する
そんな時にエンジンが故障したらどうなるか
双発機なら1発のエンジンが止まると推力は
50%低下します。
4発機なら推力の低下は25%です。
どちらが精神的に、技術的に楽かということに
なります
結局、双発の米海軍P-8は低高度での運用を
あきらめ、低高度で使用する磁気探知機(MAD)は
搭載せず
低高度での水上艦線などの監視には、地上から
制御する無人機MQ-4Cトライトンを使用
する事になりました。
無人機MQ-4Cトライトン
そうなると米海軍のP-8は高度1000mとか
2000mを飛行しながら潜水艦を追いかける
ことになるはずですが
注:P-3Cは潜水艦を追いかける時は高度
数十~百メートルくらいで飛行する。
(まさかいくら何でもジェット機に都合の良い
1万メートルくらいの高度で潜水艦を追いかける
とは思えないので・・)
ソノブイや魚雷など、これまでより高い高度で
使用出来るよう何らかの改良が加えられている
のかもしれません。
4 調達コスト
調達コストについては、以前は国産の方が圧倒的に
高く付くという意見が多かったようですが、結局
海自P-1 約170億(2015調達予定価格)
70機調達段階で1機124億円
一方、P-8は1機約300億円
ちなみにインドは、第1弾8機で21億ドル
(最終的に24機を予定)
1ドル120円として(2015.4.23現在)
1機315億円
加えて、MQ-4Cトライトンを導入することも
考えるととんでもない金額になってしまいますから
調達金額としてはP-1で良かったということに
なります。
P-3Cのソノブイランチャー
5 P-1の輸出
日本も以前では考えられなかった武器輸出の
緩和があり
イギリスにP-1の導入を打診したという話が
報道されています。
これまでの同盟関係、軍用機の実績、乗員の教育
日本との関係や、武器販売のノウハウ
あるいはヨーロッパ諸国の多くがが米国製の
P-3Cをこれまで採用していたことを考えると
イギリスが日本のP-1を採用する可能性は
ほとんど無いように思われますが
まずは武器市場に乗り出す第一歩としての
意義は大きいと思います。
プラスして
P-8が低空で運用できないという、
とんでもない欠陥?
アメリカですからこれまでのように画期的な
パラダイムシフトを考え出し、
従来の洋上哨戒や対潜戦のやり方を根本的に
変えてしまうという可能性もありますが
取りあえず、これまでの哨戒機の運用方法から
発想すると、P-8が使い物にならない
なんて可能性も、個人的に想像(きたい)したり
しながら、今後の推移を見守りたいと思います。
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タグ:P-1
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