2013年9月29日日曜日

日本に潜む北朝鮮工作員の実態 プリント メール
(本記事は当サイト運営者Vladimirが別冊宝島Real「笑ってられない『北朝鮮』画報」に寄稿したものに加筆してあります)

在日全部が工作員予備軍?

「そんなオドロオドロしいもんじゃないさ。どうやら巷ではスパイといえば007映画を想起するらしいけど、一人であれもこれも手掛けてる工作員なんかいやしないよ」

  筆者の質問を一笑に付したのは公安警察官A氏だ。国内に潜伏する北のスパイを見分ける専門家A氏に、「日本国内で暗躍する北朝鮮スパイ」の実態についてインタビューを試みた。

  氏は最初にこう語った。

「『民族差別だ!』と糾弾されるの恐れずに言えば、在日全部が工作員予備軍と思っておいてもあながち間違いじゃないんだよ」


日本では通用しない、韓国国情院の「スパイの特徴」

 韓国国家情報院ホームページ(http://www.nis.go.kr)には、お国柄を反映するかのような「間諜識別要領」、すなわち「スパイの見分け方」が公示され、国民の防諜意識に訴えている。以下、ざっと見てみよう。

間諜識別要領
(訳は筆者による)

* 20~30代の青年で職業と容貌が不釣り合いで、携帯電話や自販機、バスカードなどの使い方が不慣れで、周囲をとりわけ意識する人

* PC房(インターネットカフェ)などの片隅でネットを利用し不穏な内容を掲載、伝播しては、パソコンでの作業後にすぐ離席する人

* 無意識のうちに北朝鮮の用語(訳注:トイレを衛生室と呼んだり、また住民登録証を公民証などと呼ぶ)を使用した後、ごまかしたり朝鮮族や脱北者として振るまう人

* 特に職業を持たないまま旅館、高試院(訳注:司法試験受験生用の下宿)、読書室、下宿、観光地などに長期滞在しながら、外部と連絡を取らずまた主人や従業員との対話を敬遠する人

* 明確な目的なしに北朝鮮の放送や北朝鮮関連のインターネットサイトなどを随時聴取、閲覧する人

* 事務室や自宅に電話・コンピューター・FAXなどがあるにもかかわらず、おもにネットカフェやホテルのFAX、公衆電話などを利用して外国と隠密に連絡を取る人

* 外国人として入国しているにもかかわらず韓国語を流暢に駆使し、韓国の政治・軍事に関心が高く、左派進歩的文化人や学生労働運動圏との接触を試みる人

* 偽造または他人名義の住民登録証を所持していたり発給を試みる人
(以下略)
 これら「スパイの特徴」は、あくまで韓国国内で暗躍するスパイの典型的行動だ。

  韓国内には北朝鮮が活動資金を提供し作り上げた、いわゆる「親朝組織」が存在する。

  開発独裁のもとで経済的急成長を遂げた韓国にはびこる反政府市民勢力。「運動圏」(反体制運動圏)には、もっぱら学生が中心の「韓国大学総学生会連合(韓 総連)」をはじめとする反体制勢力が跳梁し、ハンギョレ新聞など左派紙がこれを後押ししているのだが、この「運動圏」は、韓国で暗躍する北工作員の温床で もある。

  共産主義が法律で禁じられ防諜意識の高い韓国にあって、北工作員が活動するには「親朝組織」の存在が不可欠なのだ。

  日本の場合、韓国とは決定的な違いが存在する。またその違いにより、北工作員の活動は韓国よりはるかに容易なものになっているのだ。

  朝鮮総聯と、在日朝鮮・韓国人層に存在する「土台人」である。


「土台人」とは何か?

「土 台人」とは北朝鮮諜報機関(対南工作機関)で使用される用語だ。在日のうち北朝鮮の出身か、肉親が北朝鮮に現存している者を指し、またこれらの条件を「土 台性」と呼ぶ。北諜報機関は土台人を選定して接近し、その親族らの身の安全と引き換えに工作任務を強要するのである。 

  北諜報機関が重用するのは、土台人のなかで以下のような条件を備える者だ。

  1. 資産を持つ者
  2. 朝鮮総聯に直接の関係を持たない者
  3. 帰化人
  4. 韓国籍の者
  5. 「日本人妻」の親族
  在日朝鮮・韓国人の人口は約65万人という。日本の総人口1億2000万に対しておよそ0.5%。200人に1人の割合だ。そのうち「終戦時に日本に残っ た朝鮮人とその子孫であり、現在も韓国籍か朝鮮籍を持っている」者は多数を占めている。そのため一人の「土台性」を有する人物の係累・縁戚関係をも視野に 入れると、「血のつながりでいつ何時スパイと化すやも知れぬ」潜在的工作員予備軍は膨大な数になることは想像に難くない。「在日全部が工作員予備軍の恐れ あり」という言葉の根拠は、この「土台人」というリソースの有限性とその特質に置かれている。

  土台人に与えられる主な任務は、「工作員へのアジト提供」「工作員の密出入国の手助け」などだが、かつては「拉致対象の選定」もここに含まれていた。

  A氏は語る。

「自分の経験からしても、国内に潜伏するスパイは在日もしくは帰化人、あるいはその子息たちってのが多いねえ。北諜報機関にしたって純粋な日本人を使うのはリスクが大きいし、そんな七面倒くさいことやるより土台人使う方が楽だからね」


工作活動はシステム

「ど こまでを『工作員』と捉えるか……。まず厄介なのはこの線引きだ。一般に信じられているのとは異なり、工作活動を一人であれこれ手掛ける奴なんかいない。 むしろ工作活動は、パーツが組み合わさったシステムなんだ。戦後から現在に至るまで、何十年もの間に築き上げたネットワークを利用して指令を出す者、中継 する者、実行する者などさまざまパーツが連携している。また一口に『工作活動』と言ったって、その『仕事』はあらゆる分野にわたっている。

も ちろん、軍事情報を収集するとか、潜入ポイントを調査する工作員もいる。そういうわかりやすい『典型的スパイ』を挙げるならば……。最近の事例で言えば、 2000年12月に逮捕された康成輝(2004年4月逝去)の『新宿百人町事件』がある。だが典型的スパイ事件ってのはそう多くはないんだ。『新宿百人町 事件』以前で摘発されたのは、有名な『西新井事件』が最後だったんだから、そういう『工作員』は、十五年以上も摘発されなかったってことだ」

  日本においてキリスト教系の団体を設立し20年以上にわたって国内に潜み、日本国内に入り込んだ北工作員に情報を流し、対韓国工作(地下革命組織の建設) 指令を行っていた康成輝は、「対南工作」のみならず、日本全域に隠れ住む北朝鮮工作員に対する司令塔的存在ともいえる人物であった。康成輝の活動拠点がお もに東京都新宿区百人町であったため、この事件は「新宿百人町事件」と呼ばれる。

  西新井事件についてはいまさら説明の必要もないだろう。「朴」と名乗る北工作員が小熊和也さん(結核で死亡)、小住健蔵さん(失踪)になりすまし国内で暗 躍していた事件である。昭和六十二年の大韓航空機爆破事件の実行犯・金賢姫の教育係「李恩恵」とされる田口八重子さんの拉致事件にも関与していた疑いが強 まっている。警視庁公安部は昭和六十年、この北工作員を旅券法違反容疑などで国際手配したが、日本人女性と家庭をもち、正月には和服姿で初詣までして十五 年間も日本人を装っていた主犯格のスパイ「朴」はいまだ捕まっていないのだ。

「まあ、結果として検挙された連中が『典型的なスパイ』ということになるんだろう。だが自分の経験からいえば、検挙されないスパイ……尾行・張り込み等の調査活動で発見した不審人物にも、それなりの特徴を感じるよ」


「指導員」と国内工作員

 一般の方はあまりご存じないかもしれないが、日本には年間100団体以上、「学術交流研修団」「経済交流団」、親族訪問、病気治療などさまざまな名目の、北朝鮮からの「代表団」が来日している。

  彼らは「代表団」であるからして団長がおり、副団長がおり、その他の団員がいるのだが、各代表団には最低でも一人、労働党所属の「指導員」が随行している。

「大 体、工作目的で入国してくる人物は団長にはならない。代表団リストにも、指導員はケツから2番目に入っていたりするんだ。だから団長は専用車で移動して も、指導員は後続のワゴン車で移動したりする。ところが面白いことに、その指導員と団長とが会話するときの様子は……わかるとは思うけど、団長の方がぺこ ぺこしているんだよ。団長のほうが目下だからね。指導員は歩く姿もそれなりに偉そうだったりするから、偽装の意味がないんだな」

  指導員の目的は何か。もちろん代表団そのものの監視もあろう。だが最も大きな目的は……。

「当然、本国からの重要な指示を伝えに来るんだよ。手紙や電話、はたまた特殊通信では伝えてならない類のものだ。そんな指示を伝達しに来るんだから、その接触相手だって、日本国内で『対日有害活動』を行っている連中さ。言わずもがなの『工作員』だよ。

彼 らの様子は一般人と変わらないし、タイプもさまざまだ。上は社長さんから下はそこらのおねえちゃんまでね。観察していると、自分が『工作員』として使われ ていることに気付いていない場合も多分にあるようだ。怪しげな指示を受けても、彼らは北朝鮮の公民のつもりだから、基本的に『祖国統一のために』という大 義名分さえあれば、全てが善行なんだよ。日本の法律なんて警察に捕まらなきゃ守らなくたって平気ってわけさ」


国内工作員VS公安警察

「『自 覚のある工作員』の生活ぶりだって、ごく普通のものだよ。何より一般社会に身を潜めるのだから、これは当然のことだね。だがひとたび『仕事』が絡むと、彼 らの身のこなしは同一人物とは思えないほどだ。それはちょうと、日本の極左暴力集団構成員(過激派)のうち、非公然組織(中核派革命軍など)の動きとよく 似ているね」

  突如としてみせる、華麗なる身のこなし……A氏は自らの尾行経験から、具体例を挙げながら説明してくれた。

「接 触前後の彼らは見事だよ。自分が目的地に行く道筋は良く研究しているし。途中に必ず何カ所か、尾行を『点検』(確認)するポイントを設けているんだ。それ も不自然なコースじゃなく、うまい具合に点検できるような地理的条件を加味しているんだね。例えば、どんなに混んでる街でも人気のない路地や地下通路があ るだろう。あるいは自分が通ってきた道を自然な形で見通せるような場所とかさ。かと思えば、わざと間違ったふりして袋小路に入って見せたりする。

電 車で行動するときも、連中の『点検』は執拗このうえない。発車間際の飛び乗り飛び降りは当たり前、ホームの端から端まで行ったり来たり、あるいは電車を一 本やり過ごし、次の電車で先頭乗車して、降車時にはホーム上の流し点検……あきらかに『当局』の監視を前提にしているんだよ。こんなことで何度、こちらの 尾行が『切れて』(中止を余儀なくされて)しまったことか……。

尾行はワンチャンス。だからこちらも捜査員一人じゃなくチームを組むのは もちろんだが、相手に『づかれた』(気づかれた)とういう危うい状況になったら、こちらも尾行はその時点で『切って』しまう。で、次のチャンスを待つしか ないのだが、そのチャンスがなかなかめぐってこないんだな(苦笑)」

  ここまで執拗な点検を繰り返し、国内潜伏工作員は代表団「指導員」と接触するのである。

「我々 にとって興味深いのはやはり接触の瞬間だ。本国からの代表団『指導員』が、そんな点検を繰り返しながらやっと接触した相手にどんな態度をとるのかと思って いたら、驚いたことに在日工作員から逆に指示を受けているなんてこともある。そういう瞬間を捉えて、その在日工作員の大物ぶりが歴然とすることもあるん だ」


嫌がらせ部隊

 A氏はあるエピソードを聞かせてくれた。

「北のあるコンピューター開発組織の責任者が来日したときのことだ。『指導員』じゃなく、れっきとした技術者だ。北朝鮮はIT産業に力を入れているし、技術者が秋葉原に立ち寄っても不思議じゃない。だが軍事転用可能な物資の調達を目的としている場合も多々ある」

  軍事物資の場合、まず最初の代表団(指導員)が北朝鮮の商社から要請を受けて、日本の朝鮮総聯系商社に注文を出す。朝鮮総聯系商社はその注文を、秋葉原の プローカーに発注して探させる。ブローカーは、先に記した秋葉原の中古店はもとより、初期不良品在庫を大量に抱える怪しげな「電子機器廃棄業者」に連絡す るのだ。

  個数のいらない小さな部品なら、次の代表団(指導員)が、鞄のなかに忍ばせて手荷物として持ち帰るのである。電子部品とは小さいものほど、得てして重要なのは言うまでもない。

「男 が秋葉原のある大型店舗に入ったとき、『づかれた』んだ。普通ならそこで『切る』んだが、なんとその男、大型店舗の各階を走って逃げ回りやがったんだ(苦 笑)。こっちも意地になってね。しかも男の目的は工作員への指示なんてものより、もっと重要と考えられていた。だからそのときは、もう『何もさせない』強 制尾行へと切り替えたんだ。こっちも一度ばれたら最後、そいつの今回の来日では何も得るものがないようにしてやろうとね……嫌がらせ部隊と化したんだよ (笑)」


工作の設計図

 A氏は最後にこう付け加えた。

「繰 り返すが、『工作活動を行う在日』と『工作活動と無関係な在日』との間で、どこに線を引くのかは難しい。血のつながりで、普通の在日が突如、工作活動の パーツと化すかも知れないしね。ホントに、考えたらキリがないんだ! パーツを洗う奴、パーツを組み立てる奴、工作の『設計図』を書く奴がいれば、その 『設計図』の発注元もいるわけだ。何処までたどれるか……それが我々の腕の見せどころだと思っている。

自分の経験から言えば、結論はこうだ。

在日はみな、何がしかの『工作的』なことをやっている。あるいは、気づかぬうちにやらされている。だからまさにこれを仕切っている奴を、『工作員』と認識したほうがいいんじゃないか。

つまり『工作員』と呼ぶべきは、工作活動を遂行する各パーツじゃなくて、コントローラーのことだね」

(おわり)

 


 
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