2015年11月13日金曜日


浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

支那に奇跡は起らない

2015-11-13 09:47:08 | 資料
◆アメリカを怒らせ、自滅への道を歩み始めた中国
南シナ海問題は満州国建国と同じ構図

2015.11.11 川島 博之 JB PRESS
マレーシア・スバンで開かれた東南アジア諸国連合の拡大国防相会議に出席した中国の常万全国防相(右、2015年11月4日撮影)。(c)AFP/MANAN VATSYAYANA〔AFPBB News〕
 中国が領有を宣言している島の領海に米国の駆逐艦が入った。このことについては既に多くのことが報道されているが、ここでは少し焦点を引いて、より長い時間スケールから考えてみたい。

90年前の日本を彷彿とさせる中国

 100年後の歴史の教科書は、中国が南シナ海の島を埋め立てたことは大失敗であったと書くことになるだろう。それは、戦前に日本が満州国を作ったようなものである。

 19世紀までは力のある国が海外の島などを勝手に自国の領土に組み入れても誰も文句を言わなかった。だが、20世紀に入ると国際世論なるものが醸成されて、力を持って勝手に領土を広げることはできなくなった。

 満州事変は1931年。日本はそれが原因で国際連盟を脱退しなければならなくなった。その後に起きた国際的な孤立とあの戦争については、今ここに書く必要はないだろう。
「赤い舌」などと称される九段線。中国が南シナ海での領有権を主張するために引いている破線(緑色)。(画像はwikipediaより)
 中国による南シナ海の領有宣言は満州国の建国によく似ている。誰がどう見ても「赤い舌」と呼ばれる水域は中国の領海には見えない。中国は明の時代に鄭和が領土宣言したなどと言っているが、そのよう歴史物語を持ち出すこと自体が国際的な常識とはかけ離れている。

 本稿の目的は中国を非難することではない。南シナ海の領有宣言が中国の未来に及ぼす影響を冷静に分析しようとするものである。

 領有宣言の背景には、過去20年間の中国の奇跡の成長がある。中国は大国になった。そして、軍事強国にもなった。その中国はアヘン戦争以来、屈辱の100年を経験している。強国になれば、過去の屈辱をはらしたいと思うのは歴史の常だろう。
日本はペリーによって無理やり開国させられ た。その屈辱をはらすために「坂の上の雲」を目指して駆け登った。そして第1次世界大戦の戦勝国になって大国の仲間入りを果たすと、高揚感を押さえること ができずに対外膨張策に打って出た。現在の中国は90年ほど前の日本によく似ている。

9億人の農民は置き去りのまま

  そんな中国には今も多くの農民がいる。現在でも農村に6億人もの人が住んでいる。都市に住む人は7億人。その中の3億人は農村からの出稼ぎであり、戸籍も 農民のまま。「農民工」と呼ばれて低賃金労働に甘んじている。奇跡の成長の恩恵を受けたのは、都市に住み都市戸籍を持っていた4億人だけである。

 今、中国政府が真っ先に行わなければならないことは、成長から取り残された9億人のもなる農民戸籍を有する人を豊かにすることだ。農民が豊かになれば中国はもっと強い国になれる。

 行うべきは国営企業の改革と規制の撤廃である。その目的は、既得権益層である都市戸籍を持つ人々からお金を奪い取って、農民戸籍の人々に再配分すること。もちろん、中国共産党も頭ではこのことは理解している。

 だが、どの国でも既得権益層の利害に切り込むことは難しい。掛け声だけに終わることが多い(これについては『中国が民主主義導入を嫌う本当の理由』をご参照いただきたい)。

「国威発揚」の代償は大きい

 中国は改革よりも対外膨張政策に力を注ぎ始めた。その目的は国威発揚。それによって、成長から取り残された人々の不満をそらしたいと考えている。

 だが、対外膨張政策は高くつく。南シナ海を領有したところで、そこから得られる利益はたかが知れている。海底油田があるとされるが、原油価格が低迷している現在、そんな海底を掘っても採算ベースには乗らない。

 また、日本などを封じこめようとして船舶の航行を本気で邪魔すれば、それは大戦争の原因になりかねない。つまり、領有したところでなんのメリットもない。それは日本が作った満州国によく似ている。

 その一方で、領有宣言によって東南アジアやオーストラリアの不信を買い、挙句の果てアメリカまで怒らせてしまった。その反動でイギリスを抱き込もうと多額の投資を行ったが、冷静に考えればあの老大国に成長産業など生まれるはずもない。投資の大半はムダになるだろう。習近平がバッキンガム宮殿で飲んだワインは途方もなく高いものに付くはずだ。

 また、周辺国を味方に付けるべくAIIB(アジアインフラ投資銀行)を作って資金をばら撒こうとしているが、いくらお金を撒いたところで「赤い舌」の領有を言い続ければ、周辺国の信頼を勝ち得ることはできない。
中国経済の低迷は目に見えている

 中国はGDP世界第2位の大国になったと言っても、1人当たりのGDPは8000ドルであり、中進国に過ぎない。大国面してパワーゲームを繰り広げるのはまだまだ早い。

 習近平は対外膨張政策に打って出ることにしたが、それは、
歴史の法廷において大失敗との判決が下されると思う。泉下の鄧小平も、まだまだ「養光韜晦」(能ある鷹は爪を隠す)を続けるべきだと思っているはずだ。習近平はあの世で鄧小平に叱られることになるだろう。

  奇跡の成長を成し遂げることができた要因の1つに、米国が中国の製品をたくさん買ってくれたことがある。これまで米国は日本を牽制する意味もあって、中国 に甘かった。それが中国の奇跡の成長を可能にした。だが、強硬路線は経済成長に欠かせない米国の支持を台無しにしてしまった。

 米国を怒 らせては輸出の拡大など望むべくもない。次の20年、中国の成長率は大幅に鈍化しよう。そして成長が鈍化すれば、中国指導部内の権力闘争が激化する。天安 門事件以来、中国の内政が安定していたのは経済が順調に発展していたからに他ならない。成長が鈍化し、もしマイナス成長に陥るようなことがあれば、共産党 内部で深刻な路線対立が起きる。そして、その対立は経済成長を一層減速させることになろう。

 22世紀の教科書は、日本が満州国を打ち立てたことによって自滅の道を歩んだように、南シナ海の領有を宣言することによって中国は長期低迷に陥ったと書くに違いない。

 中国は曲がり角を迎えた。そして、それを決定的にしたのはこの9月に行われた習近平訪米である。未来の教科書は、ミュンヘン会談や松岡洋右による国連脱退宣言のように、それを歴史のターニングポイントとして大きく扱うことになるだろう。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45196
◆中国ショックは「二番底」に…国営含めた企業でデフォルト状態相次ぐ

2015.11.11 産経ニュース

  上海株が復調の気配を見せるなど一時のパニックは収まったようにみえる中国経済だが、実体経済は厳しさを増している。国営企業を含む社債などのデフォルト (債務不履行)状態が相次ぎ、輸出や輸入が大幅に落ち込むなど、チャイナショックが「二番底」を迎えつつある。(夕刊フジ)

  山東省が地盤で、香港市場に上場する中国山水セメントは5日、12日に期限を迎える20億人民元(約389億円)の債務返済が不確実だと公表した。これが 支払えない場合、2020年に期限を迎える5億ドル(約617億円)の社債デフォルトの引き金になる恐れがあるという。

  また、四川省に拠点を置く石炭生産の恒鼎実業(ヒデリィ・インダストリー)が4日、1億9060万ドル(約235億円)の社債の元本と金利の支払いが期日 通り履行できなくなり、事実上のデフォルト状態となった。ブルームバーグは「恒鼎実業の苦境は、中国の実体経済における連鎖反応かもしれない」とするアナ リストの見解を紹介している。

 国営企業も事実上、初のデフォルト状態となった。10月19日、大手資源商社 の中国中鋼集団(シノスチール)が20億元(約389億円)の社債が返済できず、支払いを延期している。政府が救済に乗り出すとの見方もあるが、巨額の負 債を抱える国有企業はほかにも多く、習近平政権が進める国有企業改革の有名無実ぶりが露呈する可能性もある。

 中国経済の失速ぶりは鮮明だ。中国税関総署が発表した10月の貿易統計によると、輸出が前年同月比6・9%減、輸入は18・8%減と大幅に落ち込んだ。輸出と輸入を合わせた貿易総額のマイナスは8カ月連続で、減少幅は9月の11・4%よりも拡大している。

 1~10月累計の貿易総額は前年同期比8・5%減となった。年間で6%増とする政府目標を大きく下回っており、目標達成はほぼ絶望的な状況だ。国・地域別で見ると、日本は11・2%減と引き続き低調。欧州連合(EU)は8・3%減少した。

 中国企業のデフォルトの波は収まりそうもない。

http://www.sankei.com/world/news/151111/wor1511110006-n1.html
◆“限界”迎えた中国の価格統制 タクシー、地下鉄、株価… 市場無視できず

2015.9.30  産経ニュース

 8月下旬、中国東北部の吉林省長春を訪ねた。かつては旧満洲国の首都として新京と呼ばれた土地だ。関東軍司令部や満洲中央銀行など、満州国時代の建物がいまも健在で、主として政府機関として使われている。

  タクシーを呼び止めてみたら、先客が乗っているのでまごついた。私に行き先を聞いた運転手はそこまでの料金を告げ、話がまとまった。どうも、行き先が違う 複数の客を相乗りさせるのが習慣化しているらしい。見ていると、ほかの利用者も客が乗っているタクシーを呼び止めて交渉している。

 中国のほかの街では、あまり見たことがないシステムだ。地元の名門校である吉林大学の経済学者に聞いてみた。初乗りが5元(1元は約20円)のタクシー料金は1998年から上がっておらず、運転手が収入確保のために客を相乗りさせるようになったようだ。

 国際通貨基金(IMF)のデータでは、2010年を100とした中国の消費者物価指数は1998年には81.76だった。今年4月の推計値は114.60だから、物価水準はこの間に4割も上がっていることになる。これでは運転手も対策を講じざるを得ないだろう。

  長春は人口762万人を数える大都市だが、公共交通機関があまり発達していない。タクシー利用者の不満を高めたくない政府が、料金を低いままに抑えてきた ものと思われる。過去に何度か値上げの是非を利用者に問うアンケートが行われたが、当然ながら反対が圧倒的だったために実現していないそうだ。価格決定の 権限を政府が一元的に握っているがために、庶民から不満をぶつけられるのを恐れる当局はかえって値上げしにくいという構図がみえる。

  この手の話は中国にはよくある。首都・北京では地下鉄料金が長らく、どこまで乗っても2元という破格の安さで押さえられてきた。これも、北京市政府が庶民 の反発を恐れて値上げできなかったといわれている。路線網の拡大と運営コストの増大を受けてそれも限界を向かえ、昨年12月には距離に応じて3元から9元 という料金体系に移行した。

                 ◇

  ベクトルは逆だが、「不満に火をつけないための価格操作」という点では、6月に世界を驚かせた株式市場への介入にも同じ構図がみえる。政府が大手証券会社 に株式買い入れを支持したり、ETF(上場投資信託)を買わせたり、「悪意の」空売りを警察が捜査したりと、あらゆる手段を講じて株価てこ入れを実施し た。

 もともと中国の株式市場は当局の関与が強い市場だが、あまりにも露骨かつ強権的な介入は世界を驚かせ た。これで世界の投資家が中国経済を見る目が一気に厳しくなった。そのことに懲りたのか、2日間で上海総合指数の下げ幅が15%を超えた8月24、25日 の暴落に際しては、当局はなんらてこ入れ策を講じずに静観したようだ。

 市場原理にさからって小手先の対策で庶民をなだめようとしても、どこかで無理が来る。そのことを中国当局も学びつつあるようだ。さまざまな分野に残る価格統制も、徐々に見直されていくのだろう。

 長春では、今年暮れに地下鉄の1号線が開業するらしい。2016年には2号線も予定されている。公共交通機関の充実に伴い、タクシーの相乗りもなくなっていくのだろう。(西村豪太)

【プロフィル】

 にしむら・ごうた 「週刊東洋経済」編集長代理 1992年に東洋経済新報社入社。2004年から05年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。45歳。東京都出身。

http://www.sankei.com/premium/news/150930/prm1509300001-n1.html
 中国には誰もが知る有名なことわざがある。

 「過了這個村,没這個店」

  村をいったん通り過ぎてしまえば、もうお店を見つけることはできない――。日本のことわざで言うなら、「柳の下の泥鰌(どじょう)」。柳の下で一度、泥鰌 を捕まえたからといって、いつもそこに泥鰌がいるとは限らない。いつも幸運を得られるものではないという戒めを込めたことわざだが、今の中国では、こんな 解釈がはやっている。

 「その職場で、権限を使わないと、2度とチャンスは訪れない」――。

 習近平は「虎(大物)もハエ(小物)も同時にたたく」とのスローガンを掲げ腐敗撲滅運動を推し進める。共産党内部の権力闘争はいまだ冷めやらず、大物取りが連日、報道で伝えられる。それを見てスカッとしている庶民が実は腐敗にどっぷり漬かっているのだ。

  子供を有名大学に入れるための袖の下は序の口だ。将来自分の子を共産党幹部にしようと、小学校の学級委員にさせたり、病院で不機嫌な看護師から機嫌良く注 射1本を打ってもらったり、ただそれだけのためにカネが動く。社会のありとあらゆるところで、賄賂の類いが頻繁に行き来する、それが中国の一面である。

  日本の場合、一般企業でも従業員が取引先から裏リベートを受け取れば就業規則違反による懲戒免職に相当する。それだけでなく、本来値引きで会社の利益にな る分をキックバックとして受け取ったことが立証されれば、背任や詐欺、業務上横領などの刑事責任を問われる可能性もある。雇用主の企業にとっては思わぬイ メージダウンにつながりかねない。独フォルクスワーゲンや東芝の不祥事で企業統治にこれまでにない厳しい目が注がれる中、日系企業はいつまで見て見ぬふり をできるだろうか。
日本国内の就業規則をこの国に持ってきては誰も企業活動 など出来やしない。業者間や一般市民にまで常態化しているなかで日本だけが日本の企業倫理でやろうとしても、提携者すら相手にはしない。それほど社会に とってはリベートも謝礼も当然の行為である。これは習近平や共産党の誰が出てこようが止められない。
 「これ(腐敗)は、もはや中国の商習慣なんです」「中国の文化、必要悪なんです」「いまさら言ったところで、しょうがない」「目をつぶっておいた方がいいんですよ」「知らないふりが一番」
それを理解できない日本の本社は支那に企業進出する資格さえ無いと断言できるほどの常識なのである。

◆中国の過剰在庫も世界経済の重荷に

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)10月30日(金曜日)参
       通算第4709号   (特大号)
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 設備投資過剰という中国バブルは「鬼蔽」。過剰在庫をたたき売る
  AIIBも、BRICSも「一帯一路」のそのために設立したのだ
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 KFC(ケンタッキー)と「ピザハット」が中国から撤退する。
業績不振で採算があわないから?
 正確にいうと、親会社の米食品大手「ヤム・ブランズ」は別会社に中国KFCとピザハットの経営を移管し、本社事業から分離するという奥の手を使うのである。つまりファストフード業界さえ、中国では不振なのである。

「こ れからの世界経済を牽引する国々は?」という電子版アンケートによれば、第一は日米欧の先進国(25・9%)、ついでインド(19・8%)、三位が「先進 国と新興国の両方」(19・2)、四位は東南アジア(18・4)、そして中国は僅か8・2%で五位(日経クイックボート、2015年10月22日)。
 この調査でも明らかになったように中国への期待は突然死を迎えたかのように世界的規模で萎んでしまった。

 上海株暴落と人民元切り下げを契機に外国資本はほぼ一斉に中国から撤退態勢にはいり、海外華僑のあらかたは資金を引き揚げた。
 猛烈に中国から流失するドルは、とうに外貨準備高を切り崩しており、小誌でも指摘したように海外旅行の外貨持ち出しを制限し、連銀カードの上限を設定した。だから、爆買いも、近日中に「突然死」を迎えるだろう。

 げんに日本の財界は数年前から「チャイナ・プラス・ワン」を標語に中国での生産活動を縮小もしくは撤退し、アセアン、インドへ進出を加速させてきたが、逃げ遅れた企業も夥しく、上海株暴落に連動してJFE、コマツ、資生堂、伊藤忠などは株価下落に見舞われた。

 中国の景気減速によって各社は利益を下方修正したが、なかでも日立建機は50%もの減益を記録した。キヤノンは12%の減益となった
 中国企業の経費削減で事務機、コピィ機器などが売り上げ低迷、また工作機械が頻度激しく使うベアリングも注文が激減して、日本精工もかなりの減益を強いられた。

 日本企業ばかりではない。
金融バブル時代にとことん利益を上げていた米国の金融関連企業も軒並み、中国失速の所為で足をすくわれ、経常利益を減らした。
 筆頭はゴールドマンサックスで、18%のマイナス(「トムソンロイター」が調べた2-15年7月―9月決算の速報による)、同、モルガンスタンレーが13%減、JPモルガン・しぇー素が6%、シティグループが5%、バンカメが2%となった。

▼深刻な在庫滞留とダンピング輸出

 さて、次なる難題は、ありあまる在庫処分である。
 鉄鋼、アルミ、塩化ビニール、板ガラス、そして自動車、精密機械部品等々。石炭も同類だが、倉庫に積み上がり、企業城下町は従業員を解雇している。大量の失業は町に溢れ、新しい職場を求めて都会へと散った。

 典型は鉄鋼である。
  2014年、世界鉄鋼協会の累計で実需より1億トンも多い8億2269万トンの鉄鋼を生産した中国は背に腹は代えられず、ダンピング輸出を開始し、うち 2096万トンをアセアン諸国へ、381万トンをインドへ売却した。安値攻勢はWTO規則に抵触するが、被害企業が提訴し、結審されるころに当該企業は倒 産している。

このあおりを受けたのは日本と韓国、そしてインドだった。
 日本からアセアンへの鉄鋼輸出は1205万トン、インドへ157万トンとなったが、中国の輸出攻勢でインドのタタ鉄鋼はリストラに追い込まれ、タイのSSIはとうとう経営破綻を迎えた。

ベトナムでは、鉄鋼の安値でくず鉄価格が暴落し、くず鉄業者は休業状態に陥ったという。
末端ユーザーは粗鋼やコイルなどは、安ければ買う。資本主義論理の宿命である。

 造船はどうか。フェリー事故であきらかにように軍艦はつくっても、フェリーなどを造れないのが造船王国の韓国と中国である。
 中国の造船城下町だった江蘇省南通市では「南通明徳重工」が倒産した。このため8000名の従業員が路頭に迷い、バブル期に開店した豪華ホテルには客がひとりもおらず、居酒屋、レストランは閑古鳥で廃業。まるでゴーストタウン化した。
 鉄鋼と造船、あるいは軍事産業が集中するのは遼寧省の通化、鉄嶺、営口、大連そして胡露島など。南へ降りて青島、上海などとなる。

 こうした中国の在庫処理的な安値輸出は世界の貿易秩序を破壊する。以下、同様にアルミ、セメント、石炭、そして精密機関部品、スマホ、液晶の分野も、中国は在庫処分に迫られる。
つまり各国の当該産業は大打撃を蒙ることになるのだ。

 ならばスマホなどで液晶を生産する台湾系の鴻海精密工業などはどういう処置を講じているのだろう
 鴻海は、じつは早くから工場の労働者不足になやみ(なにしろ最盛期、中国全土で120万労働者、同社人事部は毎日二万人が辞め、二万人が就労するという一種「職業安定所」(いまの言葉で言う「ハローワーク」)と化けていた。

 その奴隷工場のごとき悪魔企業の実態は、映画でも中国の暗部として取り上げられた。
 そこで、ロボットを大量に導入し、FA(ファクトリーオートメーション)を大胆に展開してきたのだ。結果はファナック、京セラなどロボット増産となり、やがて経済失速で両社の株価は暴落したままである。

 ▼新興工業国軍にも甚大な悪影響

 投資は中国からロシアから、そしてアセアンの一部から逃げ去り、逆に投資が増えているのはインドである。

  国際金融協会が予測する各国からの資本逃避は中国が抜群の一位で、同協会の数字でもプラスマイナスがマイナスの4776億ドル、以下韓国から743億ド ル、ロシアから575億ドル、サウジアラビアからも854億ドルとなる。マレーシアも政治不安の襲われて不況入りしており、216億ドルが逃げた。
 とりわけ中国は海外からの直接投資が激減し、富裕層が海外へ資産を移転し、おまけに中国人ツアーの爆買いによるドル資産流失が加わって金融収支は赤字となっている。

 対照的にインドへの海外投資によるドル流入はプラスで475億ドル。ほかに海外からの流入が増えているのはブラジルとインドネシアなどで、これらを合計すると、新興工業国家群からは、じつに8000億ドルが流失したことを意味する。

 かくして「中国は非効率的な投資を積み上げて、実需を上回る過剰生産能力を築いた」のだが、その結果は「在庫の山を築き稼働率を落とし、価格低下を招いてこれがデフレ圧力となる」(渡邊利夫氏、産経。10月27日)
 
 果てしなき蟻地獄に中国経済は陥没した。だから拙著の新刊タイトルも『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』としたのである。

http://melma.com/backnumber_45206_6280100/
 ◆中国軍内で死亡事故が頻発している
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)10月20日(火曜日)
         通算第4689号   <前日発行>   
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 軍人を30万削減し、軍改革を前進させると習近平は獅子吼したが
   軍隊の事故は殆どが隠蔽されている
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 甘粛省酒泉の郊外、それも二百キロは離れた場所が中国の宇宙船打ち上げセンターである。
華々しい宇宙船打ち上げ成功のニュースの影で、これまでに五百名前後の兵隊が死んでいることは知られていない。付近には「英雄烈士」の陵園がある。

 2006年6月3日に安徽省で早期警戒機が墜落し、墜落現場の住民ともども40名が死亡したことは、つい最近になって明らかにされた。陵墓が建築されて判明したのだ。

  総政治部に特別調査班を組織して、過去の事故の報告をもとめた習近平は、ことし第三四半期まで(一月? 九月)の僅かな期間内にも陸海空ならべに第二砲兵 (戦略ミサイル軍)で100件前後の「事故」が発生し、すでに40枚の軍人が犠牲になっているとわかって愕然としたという(博訊新聞網、10月17日)。

 空軍の事故は墜落事故が多いため、報道されることが多いが、軍の基地内部でおきた事故は決して外部に知らされることはない。
また軍艦区内でのみ報告されるため、中央への報告が遅れるか、報告されないでうやむやに消される。

 海軍事故は海の上のことなので、これまた外部はうかがい知れず、潜水艦事故などは、決して表沙汰になることはない。軍はこうした事故の秘密を守秘義務があるという。
 2003年4月6日に北海艦隊所属の361号潜水艇が山東省興で事故にあい、乗組員70名が死亡した。十日後に事故艦が浮上して漁船が発見したため、大騒ぎとなったが箝口令が敷かれた。

 14年6月17日、湖南省衝陽市にある76112部隊武器庫で爆発があり、17名が犠牲になったらしいが、殆どのメディアは報道せず、また軍の正式発表はなかった。

 ことほど左様に中国人民解放軍はあらゆることが機密になっており、内部のことをうかがい知るのは至難の業と言える。

http://melma.com/backnumber_45206_6274784/
◆「大風呂敷」広げる中国 ニカラグア運河建設、実現性に深まる疑問符
2015.9.28  SankeiBiz

 中米ニカラグアで昨年末、中国系企業が着手した運河建設。総工費500億ドル(約6兆415億円)を投じて太平洋とカリブ海を結ぶという壮大な事業だが、かねて実現性を疑問視する声も多い。実際に現場を訪れると、その疑いは払拭されるどころか一段と深まった。

 作業員の姿なく…

 トタン屋根の家の外を鶏がひょこひょこ歩き、解体を待つばかりの豚が木に結ばれている。酔っ払いが歌う地元の民謡ランチェラが訪問者を出迎える-。内陸部にあるニカラグア湖の南東の村、エル・トゥーレ。中米の典型的な田舎の風景が広がる。

 ニカラグアの当局者らによると、ニカラグア湖を経由し国を東西に貫く全長約280キロの運河建設で、同村は重要な場所に当たる。村は分断され、運河のために原則として湖に沈められることになっている。

  この運河建設は中米で過去最大のインフラ事業となり、2020年までの完工を目指す。オルテガ大統領が13年、中国人実業家の王靖氏が率いる香港企業 HKNDに工事と運営の権利を付与した。南東約480キロにあるパナマ運河を通航しづらい大型船舶を引き寄せようとしている。

 この運河 は当初から国内外の専門家に「無謀」とみなされてきたが、現地を歩くと実現性への疑いがますます強まった。もちろん、こういった大規模な公共事業で作業が 進んだり止まったりを繰り返すことはよくある。パナマ運河も完成に何十年もかかった。だがエル・トゥーレの住民は、もう何カ月も建設作業員の姿を見ていな いと証言する。これまでに終わった作業は、湖東岸での測地、西岸の港湾建設予定地での道路拡張や信号機改修など、ごくわずかだ。

 地元実業家の男性(32)は、事業が進まないことを確信しているので、村外れにゲストルーム3室を備えた2階建て家屋と、隣接するコンビニエンスストアを建てている。「運河なんてできっこない」とぶっきらぼうに語る。

 HKNDは取材に対し、運河の港湾は年内に着工されると回答した。また事業を進める前にニカラグア側が環境影響評価を承認するのを待っているとし、出資をめぐって世界中の企業と交渉しているとも明らかにした。

  だが、これまでのところ資金調達は難航している。総工費500億ドルは中米最貧国であるニカラグアの国内総生産(GDP)のほぼ5倍に当たる。HKNDに よると建設にはコンクリート1600万立方メートル、鉄筋などの鋼材100万トン近く、岩石や土壌40億立方メートルの除去が必要なほか、ブルドーザーな ど機材は輸入しなければならない。

 工事中断は茶飯事

 中南米やほかの発展途上国で影響力を広げようという中国の過去の試みは、成果にむらがある。バハマのリゾート建設(35億ドル)やコスタリカの製油所刷新(13億ドル)など、幾つかの事業は着工後に中断されている。

  ニカラグアの運河については、需要も見通せない。ファーンリー・コンサルタンツの海運専門家、スヴェレ・スヴェニング氏は、パナマ運河では50億ドルかけ て進められている拡張で現行より大型の船舶が通航可能になると指摘。これに加えてニカラグアの運河を支えるほどの海運需要はないとの見解を示す。

 このほか、自然条件も厳しい。米ビジネス団体、米州評議会のエリック・ファーンスワース氏はニカラグアの運河について、国内の火山によって遮断されないようにするなど、克服すべき工学的・環境的課題が山積していると説明。「実現には大いに疑問がある」と語る。

 住民の間では建設への反発も強い。最も懸念してるのが立ち退き強制で、次が環境への影響だ。太平洋沿海のリオ・グランデ村に住む老女は、移住は「私の目の黒いうちは絶対にしない」と宣言。19歳の孫娘は中国語で「出ていけ、中国人」と書いたプラカードを見せてくれた。

 もっとも、住民の間でも支配的なのはやはり懐疑論だ。同村近郊に住む農場主の男性は「政治家はいつも壮大な計画をぶち上げては結局何もしない」と冷めた見方を示した。(ブルームバーグ Michael McDonald)

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/150928/mcb1509280500011-n1.htm
◆中国人民解放軍30万人削減 軍内部で習近平氏への不満高まる

2015.10.04 NEWSポストセブン

  中国の習近平国家主席兼中央軍事委員会主席が、9月3日の軍事パレードに先立つ抗日戦争勝利と反ファシスト戦争勝利70周年の記念式典で、中国人民解放軍 の30万人削減を発表したことについて、軍内では将校を中心に不満が高まっていることが分かった。削減されるのが非軍事部門のほか、高位の将校クラスが主 で、特に将校の場合、年齢が高いことから再就職が難しいためだ。ロイター通信が報じた。

 習氏は記念式典で、「中華民族は一貫して平和を愛しており、発展がどこまで至ろうとも、中国は永遠に覇権を唱えないし、永遠に領土を拡張しない。中国は今後、軍隊の人員を30万人削減する」と宣言した。

 しかし、30万人削減については、事前に軍の将校らには伝えられておらず、突然の発表だったために、テレビの生放送を見ていた地方軍区の将校らは顔色を変え、パレード終了後、地方軍区の幹部らは司令官らに食って掛かり、不満を口にしたという。

  今回の軍削減について、軍機関紙「解放軍報」は「非戦闘部分などを削減して、戦闘力を高めることで、中国の軍事力を増強させて、他の国から攻撃を受けない ようにする」としているが、元陸軍少将の徐光裕・中国軍制御削減協会理事は同紙に対して、削減の主な対象は陸軍で、旧式の歩兵部隊が中心であり、現在の地 方の7大軍区のうち2大軍区を整理すれば17万人が削減され、残った18個師団のうち3個師団約3万人を整理するというもの。

 さらに、これに加えて医療、通信、文化宣言工作団など非戦闘部隊計10万人を加えて、30万人の削減を実現しようというものだ。新華社電によると、30万人の人件費だけで年間600億元(約1兆2000億円)節約できるが、これを振り分ければ、兵器・装備の一層のハイテク化が可能となると報じている。つまり、今回の削減はていのよい将兵のリストラというわけだ。

 中国では1978年末の改革・開放路線導入以来、1985年のトウ小平氏の100万人、1997年には江沢民氏の50万人、2003年の胡錦濤氏による20万の計3回実施されたが、削減とは名ばかりで、国防費は年々二ケタ成長を続け、兵器もハイテク化が進んできた。

 北京の外交筋は「非戦闘部門のスタッフの場合、一芸がある分、再就職は比較的容易だが、高齢の陸軍将校や兵士は切り捨てられる運命にあるだけに、軍内ではクーデターが起こりかねない状況だとの情報もある」と指摘する。

http://www.news-postseven.com/archives/20151004_353979.html
 


史上最大の詐欺国家

2015-11-11 21:50:22 | 資料
【異形の中国】史上例をみない“詐欺的作為”か 海外投資家は中国から一斉引き揚げ開始

2015.11.07    zakzak

  中国の外貨準備高は帳面上、世界最大で3兆6500億ドル(約443兆1465億円)=2015年6月末現在=だが、それなら、なぜ、米国債を徐々に取り 崩しているのだろう? 直近の7月から9月だけでも、2290億ドル(約27兆8028億円)を売却しているのだ(米財務省速報)。

 従って、中国の外貨準備にはカラクリ、それも史上例をみない“詐欺的作為”がなされているとみるエコノミストが増えている。ドル資産が、一夜にしてブラックホールに吸い込まれるように消える恐れが強まった。

 CIA(米中央情報局)筋の調査で、中国から不正に流れ出した外貨は3兆800億ドル(約373兆9428億円)とされる。となると、15年6月末の外貨準備高は、差し引き5700億ドル(約69兆2037億円)でしかない。

 単純計算はともかく、複雑な要素が絡む。

  第1に、最も重要な外貨準備指標は「経常収支」である。この数字をみると15年3月まで1年間の統計は2148億ドル(約26兆788億円)。ところが、 外貨準備は同期間に2632億ドル(約31兆9551億円)減少している。膨大な外貨が流失しているから、数字の齟齬(そご)が起こるのだ。

 そこで嘘の上塗り、つまり架空の数字をつくりかえ、粉飾のうえに粉飾をおこなう。となると「GDP(国内総生産)が世界第2位」というのも真っ赤な嘘になる。GDPのなかで、「投資」が締める割合が48%、こういうことはどう考えてもあり得ない。

  例えば、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」は財源が400億ドル(約4兆8564億円)である。ベネズエラに投資した額は450億ドル(約5兆 4648億円)前後、アンゴラへの海底油田への投資は焦げ付いたという情報があり、リビアでは100ものプロジェクトが灰燼(かいじん)に帰した。

  以下、スリランカ、ジンバブエ、スーダン、ブラジルなど。世界中で中国が展開した世紀のプロジェクトが挫折している。つまり、対外純資産が不良債権化して いる。オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどでは鉄鉱石鉱区を買収し、開発していたが、鉄鋼不況に遭遇して工事を中断。このあおりで、豪ドル、カ ナダドル、NZドルが下落した。

 13年末の海外直接投資残高は6605億ドル(約80兆2111億円)だったが、15年3月には 9858億ドル(約119兆7155億円)と急激な増加が見られる。15年3月末の対外債務残高は、直接投資が2兆7515億ドル(約334兆1421億 円)、証券が9676億ドル(約117兆5053億円)。合計3兆7191億ドル(約451兆6475億円)となる。

 つまり外貨準備は事実上、マイナスである。だから、海外投資家は一斉に中国から引き揚げを始めたのだ。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151107/frn1511071530001-n1.htm
◆【異形の中国】軍事パレードは外交的失敗 「抗日戦争勝利」というインチキが世界に可視化 

2015.11.05   zakzak

 世界が注目した、中国の「抗日戦争勝利70周年・軍事パレード」(9月3日)は、大量の兵器陳列と示威行進で盛り上げた。だが、習近平国家主席の目的だった、「愛国主義」によるナショナリズムの収斂には失敗した。

 外国からの国賓よりも注目されたのは、「権力闘争の最中」と言われたのに江沢民元国家主席がヨタヨタと現れ、習氏の隣に並んだことだった。対立中の胡錦濤前国家主席もひな壇に登場し、病気欠席が予測された李鵬元首相も出てきた。

 ほかにも、江氏の右腕だった曽慶紅元国家副主席が数年ぶりに公の場に姿を見せ、白髪頭の朱鎔基元首相や、温家宝前首相らの顔が並ぶ。

 この場面を、中国国営中央テレビ(CCTV)は意図的に小さく扱い、ロシアのプーチン大統領や、韓国の朴槿惠(パク・クネ)大統領、カザフスタンのナザルバエフ大統領らの風貌ばかりを映し出した。また、李克強首相の影を薄くして報道した。
 習氏は演説で、「中国は覇を唱えず、軍を30万人削減し、永遠に拡張もしない」などと、大ウソを平然と言い放った。

 もし、覇権を唱えないのなら、南シナ海の軍事拠点構築をどう説明するのか。軍を削減しても、人民武装警察が増えるだけの目くらまし戦術にも一切の言及がなかった。しかも、軍事パレードは今後、毎年続けると言い切った。

 「強い中国」の演出は、習政権がスローガンとする「中国夢」の実現であり、軍事パレードを反対を押し切って挙行できたことは、習氏が軍を掌握したことを内外に示したかったのだ。
 しかし、実態はといえば反対の様相が強い。

 対外的には「軍 国主義」のイメージを与えたため、西側諸国が総スカンを示した。日本ばかりか、欧米英に加えて、スリランカ、ケニアなどが欠席し、AIIB(アジアインフ ラ投資銀行)に参加を表明した57カ国のうち、30カ国の代表しか出席しなかった。明らかに外交的失敗といえる。

  また、「抗日戦争勝利」というスローガンのインチキが世界中に知れ渡った。抗日戦争を戦った主体は国民党であり、中国共産党に「勝利」をいう合法性がない と、米紙ニューヨーク・タイムズまでもが厳しく批判した。台湾でも、一部政治家や老兵の軍事パレードへの参加に激しい非難の声が巻き起こった。

  習氏の「強い中国」の自己演出は、かえって周辺諸国に脅威を与えた。今後、中国の進出プロジェクトへの不信感はますます増大する。「上海株式暴落」「人民 元切り下げ」「天津大爆発」など、一連の不祥事が重なって、中国のイメージ悪化は避けられないという皮肉な結果となった。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151105/frn1511051550003-n1.htm
 ◆人民元の国際通貨化、IMFと米国で判断割れる 欧州も「支持」表明、米は沈黙 

2015.10.28    zakzak

  【ワシントン=小雲規生】国際通貨基金(IMF)が準備資産「特別引き出し権(SDR)」の構成通貨に人民元を加える流れの後押しを始めた。米メディアに よると、IMFは人民元の採用に好意的な報告書をまとめ、中国側にも採用の見込みが高いと示唆。11月にも理事会で正式決定する準備を整えつつある。人民 元の採用は中国が強く求めてきたほか、欧州でも支持が広がっている。ただし現状の人民元改革には不十分な点も多く、米国は明確な立場を示していない。

  ロイター通信は25日、IMFの事務方が人民元の採用に青信号を出したとし、関係者の話として「政治的な障害は残されていない」と報じた。また米通信社ブ ルームバーグによると、IMFは中国側との面談で、IMF内で人民元採用への支持が得られることを「強く示唆」したという。

 SDRは現在、ドル、ユーロ、ポンド、円の4通貨で構成されており、5年に1度の見直しが行われる今年、中国が人民元の採用を求めている。構成通貨になれば国際通貨としてのステータスが得られるためで、IMFは11月にも理事会を開いて是非を判断する。

  IMFは構成通貨に求められる要件として「自由に取引できること」などを挙げているが、米国は人民元取引を含む中国の金融市場の自由化が不十分だと繰り返 し指摘してきた。構成通貨の見直しには議決権で70%の以上の賛成が必要で、共同歩調をとる日米に加えて欧州の主要国が反対すれば、人民元の採用は難し い。

 半面、中国はこのところ人民元の国際化に向けた施策を打ち出している。英国やフランスが人民元採用への 支持を表明し、ドイツやイタリアは「オープンだ」とする声明を出している。中国の習近平国家主席は21日、英国でキャメロン首相と会談し、ロンドン市場で 人民元建て国債を発行することを発表。中国は23日には商業銀行による預金金利の上限を撤廃すると発表するなど、金融活動の自由化のアピールにも躍起だ。

  しかし人民元の為替市場は依然として中央銀行の管理下に置かれた官製相場のままで、「自由に取引できるという状況からはほど遠い」(元IMF高官)。習氏 は9月下旬のオバマ米大統領との首脳会談後の共同記者会見で「人民元がIMFの基準を満たした場合に構成通貨となることを、米国が支持していることを感謝 する」と述べたが、米国側はSDRの基準を満たしているかどうかについては見解を明らかにしていない。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151028/frn1510281540009-n1.htm

IMF=USAなのに判断が分かれるというのも可笑しな話。米国一国で拒否権を持っているだろう。
変動相場制に支那が同意するはずもないし、党が相場に介入する状態で自由な取引などあり得ない。
やれば必ず支那共産党は崩壊する。
各国が持っている使えもしない元を他の通貨と交換して終わりじゃないのかな。

◆米国知識人パンダハガーの悔恨

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)11月5日(木曜日)
       通算第4717号   <前日発行>
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 「いまさら遅すぎる」とも言いたいが
  親中ハト派のピルスベリー氏も「中国に騙された」と悔恨の書
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 「わたしは中国に騙されていました。中国は本気でアメリカを打倒する夢に取り憑かれ次々と国際金融機関を騙し、アメリカから技術を盗み取り、日々、その百年の目標に向かって、実行しているのです」というのが、彼が書いた話題の書『百年マラソン』の骨子である。

 本が出版されたことは原書の段階で知っていたが、翻訳がでても読もうという気力がなかった。
 ある日、勉強会で多くの保守系論客が、この本を話題にしたのは意外だった。中国の野望に関しては百万言を費やしてもまだ足りないことを同時に痛感した。

 ピルスベリー氏が言っていることはこうである。
 『中国の軍事拡張は平和を目ざすゆえになされる』と中国は西側に信じ込ませることに成功した。

これに一役買った中国宣伝のラウドスピーカー役を演じたのが、キッシンジャー、ブレジンスキー、スコウクラフト、ディブ・シャンボー、エズラ・ヴォーゲルらの「パンダハガー」だった。

日本でもごろごろと名前を挙げるいとまもないくらいにいる、いる。
 政治論客はおおよその人は知っているだろうが、たちが悪いのは経済畑の論客等で、中国経済は破綻しない、崩壊論を言っている人たちはあまたがおかしいなどという言説を展開している。

 『アメリカの多数は中国の本当の狙いに気がつかず、貧しい中国を助けるのは良いことだ』と信じてきた。
貧困中国をなんとか救出しようと、日米欧は支援を尽くした。

 だが中国の指導者は本音をふせて、芝居を演じてきたのだ。
 しかし本当の中国の夢とは習近平のいう「愛国主義による中華民族の復興」の言葉の浦に隠されている。革命から百年後の2049年に、中国がアメリカを打倒し、世界の覇者となる」という野望を。これが中国の『百年マラソン』である。

 この発想の基本は中国春秋時代の古典の教訓にある、とピルスベリー氏は言う。
 「才能と野心を隠し旧体制を油断させて打倒し、復讐を果たす」(養光韜晦)。

 しかし西側は中国に民主主義を教え、資本主義メカニズムを教えれば、やがて中国は民主化すると無邪気にも信じてきた。
 
結 果は西側から巨費を借金して軍拡を果たし、貿易では模造品と海賊版がGDPの8%をしめるほどの悪辣さをみせて外貨を稼ぎ、西側の経済を脅かすうえ、つい には覇権の野望を剥き出しにして、南シナ海の岩礁をつぎつぎと埋め立てて人口島を造成し、3000メートルの滑走路を参本もつくり、おおきな軍事的脅威と してアメリカの前に立ちはだかる。

 『騙したものが勝つ』というのは中国古来の諺、実践訓令だ。ピルスベリー氏も、気がつくのが遅かった。だが日本の左翼知識人等と異なって気がつくと悔恨するところは正直である。

http://melma.com/backnumber_45206_6282402/

◆実名!中国経済「30人の証言」  日系企業が次々撤退、大失速の真相~こんなに異変が起きていた

2015年10月09日 週刊現代  現代ビジネス

「習近平にドッグフードを喰わせろ!」。中国の国家主席を、アメリカがこれほど冷たく迎えたことはなかった。中国の主要都市で中国人と日本人駐在員に取材し、失速する中国経済の真相に迫った。

中国経済は発育不良

9月25日、米ホワイトハウスでオバマ大統領と米中首脳会談に臨んだ習近平主席は、「中国経済は順調に7%成長している」と力説した。

だが9月23日に明らかになった中国の製造業の景況感を示すPMIは、47.0ポイント。リーマンショック直後以来の低水準となった。

中国経済の本当のところはどうなのか。本誌は今回、中国に暮らす30人にナマの声を聞いた。

「中国の景気は悪いなんてもんじゃない。以前は政府が、石橋を叩いて渡るような慎重かつ的確な経済政策を取っていたが、いまの政府が進めているのは、石橋を叩いて割る政策だ」(南楠・食品卸会社社長)

「多くの産業が生産過剰に陥っている。そして、中国経済を牽引する投資、輸出、消費のうち、GDPに占める投資の割合が高すぎる。これでは今後、多くの外資系企業が中国から撤退していくだろう」(孟旭光・外資系企業中国総代表)

「私は銀行員なので、普段からよく顧客の動向を見ているが、せっかく貯めた貯金を、株式投資でパーにしてしまった人がいかに多いことか。こうした現状では中国経済は今後さらに悪化していくだろう」(張微微・銀行員)

「中国経済は、一言で言えば発育不良の状態だ。そして財産を築いた人から、海外へ移住してしまう」(趙夢雲・テレビ記者)

こうした中、9月にひっそりと、北京北東部に建つパナソニックのリチウムイオン電池工場(従業員1300人)が、閉鎖された。日本企業研究院の陳言院長が解説する。

「このパナソニックの北京工場は、1979年に鄧小平が松下幸之助と建設を決めた外資系工場第1号でした。パナソニックはこれまで先端技術でリチウムイオン電池を生産してきましたが、中国市場における電池の過当競争の波に揉まれ、もはや撤退するしかなくなったのです」

20年いて、こんなのは初めて

パ ナソニックは、上海工場や山東工場なども閉鎖しており、中国事業を縮小する方向にある。7月29日に発表した4月~6月期決算では、純利益が前年同期比 56.9%アップの595億円と、完全復活をアピールした。だがその陰に、創業者の松下幸之助が邁進した中国事業の縮小があったのである。

陳言氏が続ける。

「シチズンは中国で二つの工場を稼働させていましたが、そのうち一つを閉鎖しました。解雇された従業員は、1000人に上ります。ニュースにもなりませんが、中小零細の日系企業は、人件費や家賃の高騰などで、撤退が相次いでいます」

シャープ、ダイキン、TDK、ユニクロ……と、2015年に入って次々と、中国工場の撤退もしくは一部撤退を始めた。

8月12日には、天津で大爆発事故が発生。その損失額は、730億元(約1兆3700億円)に上ると報じられた。

現地に進出しているトヨタの自動車4700台がペシャンコになった映像(写真左)は、日系企業にも衝撃を与えた。同じく近くに工場を持つ日系大手化粧品メーカーの幹部が語る。

「わ が社もあの爆発事故で、多大な損害を被りました。事故を起こした天津瑞海国際物流公司に損害賠償請求を出しましたが、交渉は一向に進んでいません。日本の 本社ではこの事故を機に、天津工場の撤退を決断したのですが、天津市政府が認めてくれない。中国事業は、まさに進むも地獄、退くも地獄です」

日系企業が多い大連で日系の建設会社社長を務めるベテラン駐在員も、ため息交じりに語る。

「私は大連に20年以上住んでいますが、こんな不景気は初めてです。資金繰りが悪化して工事を途中ストップするビルや、完成しても買い手がいない幽霊マンションが続出しているのです。

不 景気のあおりを受けて、かつて1万人以上いた日本人は、もう3分の1規模です。日本の駐在員仲間と話していても、取引先の中国企業が夜逃げした話ばかり。 全権を持つオーナーが、会社や従業員を置き捨てて、忽然と消えるのです。大連に進出している韓国系企業も同じことをやっていますが、日系企業は律儀なの で、損ばかり被っています」

香港に隣接した深圳で、日系企業向けコンサルタントを営む加瀬秀男氏も語る。

「深圳の日系企業も、ビジネス環境の悪化にともなって、香港にオフィスを移す会社が相次いでいます。

最 近の特筆すべき傾向としては、日系企業に勤める大卒社員の質の低下です。考えてみれば、大卒の初任給が4000元(約7万5000円)で、同年齢の工事現 場の作業員やレストランのウエイトレスの給料は、人手不足から5000元(約9万4000円)以上です。親が一人っ子に多大な教育費をかけても、報われな い社会のため、大卒の若者たちがヤル気を失っているのです」

日系企業に起こっている「変化」について、中国日本商会の中山孝蔵事務局長補佐が解説する。

「今年に入って北京の日本商会から退会した企業は40社に上りますが、新規入会も32社あるので、撤退が相次いでいるとは一概に言えません。ただ、中国ビジネスの縮小は確かに起こっている。

中国国内で生産して、先進国に輸出するというビジネスモデルが、もはや成り立たなくなってきているのです。日本人駐在員向けのだだっ広いマンションは空きだらけで、北京日本人学校の生徒数も、数年前の600人台から400人台まで減っています」

軍事パレードで大損失

中国日本商会は、毎年春に、『中国経済と日本企業白書』を刊行している。その2015年版には、次のような記載がある。

〈2014年における日本の対中投資は前年比38.8%減の43億ドルとなり、2年連続減少した。2012年には過去最高74億ドルを記録したが、2013年後半から減少基調が続いている。

今後1~2年の事業展開の方向性について、「拡大」と回答した企業の割合は46.5%(前年比7.7ポイント減少)となっている。2011年と比べると、拡大が大きく減少(66.8%→46.5%)した〉

こうしたデータを見ても、明らかに日本企業は中国市場から「引き」に走っていることが分かる。中山氏が続ける。

「加えて、9月3日の抗日戦争勝利70周年の軍事パレードのようなことがあると、首都の経済機能がマヒしてしまいます。この日本商会が入っているオフィスビルも2日間、立ち入り禁止になりました」

香港紙『リンゴ日報』の試算によると、習近平主席の時代錯誤的な軍事パレードによって、215億元(約4040億円)もの経済損失を出したという。

北京在住8年という産経新聞中国総局の矢板明夫特派員が語る。

「私の携帯電話には、日本から来た客を連れて行くため、高級中華料理の店の番号がたくさん入っていますが、このところ電話しても『現在使われていません』という音声メッセージが出ることが多い。つまり、高級レストランが続々潰れているわけです。

また、不景気で銀行利用者が激減しているため、銀行での待ち時間が、めっきり減りました。以前は2時間待ち、3時間待ちでしたが、いまは30分も待たないで呼ばれます。

それから地方出張へ行って痛感するのが、大型トラックが減ったこと。どの地方も景気が悪いのです」

思 えば5年前は、石炭バブルに沸く内蒙古自治区オルドスから北京まで車列が続き、わずか200kmの距離をトラックで20日間もかかるという世界最悪の渋滞 が話題を呼んだ。だがいまや、オルドスは中国最大の「鬼城」(ゴーストタウン)と呼ばれていて、行き交う車すらほとんどない。

こうした中国経済の悪化を、当の中国人たちはどう捉えているのか。

「患者と話していると、景気の悪い話ばかりだ。商売は上がったりだし、とにかく商品の物流が減っているという。中国経済がここまで悪化している最大の原因は、政府が金融の自由化を断行しないことだ」(柴歓・漢方医)

「私の周囲の人々の衣食が目に見えて粗末になってきた。一番の問題は、社会的に飛躍していくチャンスが、ますます狭まってきていることだ」(劉・ITデザイナー)

「教師の給料は上がらないのに物価は高騰する一方だ。そのため消費を切り詰めるしかなく、もはやちょっとした旅行さえ贅沢になってきた」(王貞樺・中学教師)

「新常態」という言い訳

習近平政権の立場について、国務院(中央政府)の経済官僚である熊氏が説明する。

「習 近平主席がアメリカ訪問でも述べたように、中国経済は悪化しているのではなく、『新常態』(ニューノーマル)という『新たな正常な状態』に移行したので す。新常態とは、高度成長から中高度成長へ、製造業中心からサービス業中心へ、そしてより環境に優しい節約型の成長へという移行です。その象徴である大型 国有企業を改革し、新たな成長へと向かうのです」

湖南省の国有企業の経営者も語る。

「とにかく習近平主席の指示に従うこと。市場よりも党中央。企業経営の要諦はそれに尽きる」

国有企業は全国に1100社余りあり、国の基幹産業を握り、富の6割強を占めている。

熊氏が指摘した国有企業の改革に関しては、8月24日に習近平主席が「指導意見」(方針)を定めた。それは、国有企業の市場の寡占と、共産党の指導強化を謳ったもので、国民が期待した国有企業の民営化とは正反対の方向だった。

この「指導意見」が9月13日に発表されると、すぐさま市場が反応した。翌日の市場は失望感に覆われ、上海総合指数は2・67%も安い3114ポイントまで急落したのだった。

だが、こうした市場の反応を無視するかのように、国営新華社通信は9月17日、「私有化反対を旗色鮮明にしなければならない」と題した論評を発表し、習近平主席が進める社会主義の強化を後押ししたのだった。

上海ナンバーワンの名門校・復旦大学教授で、テレビニュースのコメンテーターとしてもお馴染みの馮瑋氏が指摘する。

「この新華社通信の論評には驚きました。確かに孔子も『富の分配が少ないことを心配せずに、分配が平等でないことを心配せよ』とは説いています。毛沢東時代も皆が貧しい公平な時代で、あの時代を懐かしむ人たちもいます。

しかし中国も含めて、どんな国でも経済が発展するということは、経済格差が生まれるということなのです」

馮瑋教授はその上で、中国が現在直面している経済状態について、次のように分析する。

「習近平主席は、アメリカを訪問する前日の9月21日に、『中国経済には下降圧力が存在する』と述べましたが、これは婉曲的な言い回しで、実際は真っ逆さまに落ちています。

私は常々、テレビや『微博』(ミニブログ)などで述べているのですが、中国経済の現状を判断するのに、経済学者の言うことを聞いたり、政府の経済統計を見たりする必要はないのです。

なぜなら、われわれ中国人にとって一番身近な二つの指標、物価と給料を比べれば一目瞭然だからです。私の周囲に、最近給料がものすごく上がった人は皆無ですが、誰もが物価の急上昇は体感している。

それを政府は、『経済の新駆動』とか『転換型発展』だとか、いろんな言葉を使って取り繕っていますが、要は『経済苦境に陥っている』という意味なのです」

馮瑋教授は、近未来の中国経済についても、悲観的にならざるを得ないという。

「中国が現在抱えている経済問題を、いかに解決していくかという道筋が、まったく見えてこない。低コストで製品を作って先進国に輸出するという経済モデルは崩壊したものの、それに代わる内需が拡大していないからです。

そのため、香港ナンバーワンの資産家、李嘉誠は、800億元(約1兆5000億円)もの資金を中国から撤退させようとしている。彼に代表されるように、外資の撤退が顕著になってきています。これでどうやって、中国経済が良くなるのでしょうか」

小学生の息子もアルバイト

中国で辛口コラムニストとして知られる丁力氏も、中国経済の現状を嘆く一人だ。

「不動産バブルが崩壊したところに、株バブルも崩壊した。これは『雪上加霜』(泣きっ面に蜂)というものです。

3ヵ月くらい前までは、私の『微信』(中国版LINE)仲間の主な会話は株に関することでしたが、いまや株の話はタブーです。私の周囲にはこの夏、株で大損こいた人が大勢いて、その中の一人は、小学生の息子に放課後、西洋人参売りのアルバイトをさせている始末なのです」

今後の中国経済についても丁氏は悲観的だ。

「現在中国では、今後の中国経済について、急降下していくという見方と、穏やかに落ちていくという2通りの見方があります。私は前者だと思っています。

その理由は、主に4点です。第一に、今夏の株価暴落に対する政府の政策を見ていると、常に後手後手に回っていて、稚拙な対策しか打てていないからです。第二に、今後ますます国有企業による市場の寡占化が進んでいき、民業が圧迫されることは明白だからです。

第 三に、習近平政権の極端な反腐敗運動によって、その副作用である官僚たちの『怠工』(サボり癖)が顕著になってきています。第四に、環境保全や社会福祉と いった高度経済成長時代に先送りしてきた問題のツケが、今後一気に襲ってくるからです。こうしたことを勘案すると、どうしても楽観的な気分にはなれないの です」

上海人民出版社の曹楊編集長は、マスコミによる影響について語る。

「い ま中国メディアは、中国経済に対する悲観論一色で、それを見た人々は、ますます将来を不安視するようになっています。確かにいまの中国経済は底に来てい て、しかも底はしばらく続くのかもしれませんが、中国経済が崩壊することはないでしょう。昨今のマスコミ報道は、煽りすぎです」

もう一人、南部の広東省を代表する高級紙『時代週報』の張子宇編集委員も、「負の連鎖」について語る。

「つい数ヵ月前までは、オフィスやマンションの1階でエレベータを待っている間にも、人々はスマホで株価に見入っていたものです。もはやそんな光景は皆無です。

中国経済を俯瞰すると、ほぼ全産業が沈滞する中で、IT産業だけが創業ラッシュに沸いている。それで猫も杓子もIT産業を目指し、それによって社会がさらにいびつで不安定になっていくという状況です。

そして経済が悪化すればするほど、毒食品を作る人が増えたりして、それがまた経済を停滞させる要因となる。つまりいまの中国では、様々な意味で、負の連鎖が起こっているのです」

食いつなぐのに必死

張編集委員が指摘するように、IT産業は、いまや製造業に代わって、中国経済の唯一の頼みの綱と言っても過言ではない。9月22日から訪米している習近平主席は、「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる3大IT企業の創業者たちを同行させた。

元日本銀行北京事務所長で現在、NTTデータ投資チーフストラテジーオフィサーの新川陸一氏(北京在住)が語る。

「中国のインターネットユーザーは、約6億5000万人もいます。IT産業の発展は目覚ましく、昨年の名目GDPの2割を超す規模に育っています。中国経済は当面、現在の『まだら模様の景気』が続くでしょうが、IT関連の消費が、景気下支え材料として続くと見ています」

前出の陳言氏も、IT産業に期待する一人だ。

「私のオフィスは『中関村』(北京のシリコンバレー)にありますが、付近の喫茶店は投資家と、アイデアを持った若者たちとの交流の場となっています。彼らは2万元(約38万円)くらいを手にして、次々に起業していくのです。

李克強首相が先日、『中国は1日1万社が起業している』と述べていました。日本は全国で600万社ですが、中国は2年で600万社が誕生しているのです。この活力に中国の未来を感じます」

他にも、少数ながら楽観主義者もいた。

「北京で日本料理店を経営しているが、折からの日本旅行ブームのおかげで、千客万来の状態。いま店舗を広げて改装中だ」(張煥利・日本料理店経営者)

「私の周囲は、7対3で景気のいい人が多いし、富裕層は相変わらず豪華な家に住み、高級車を乗り回している。中国はいまだに世界第2位の経済大国なのだし、IT産業に期待していいと思う」(陳旭・ファッションデザイナー)

「習近平政権は、今年初めから、毎月の年金を580元(約1万1000円)も引き上げてくれた。周囲も皆、ありがたがって、満足な老後を過ごしている」(李便新・大学名誉教授)

その一方で、今後のIT産業の発展に疑問を持つ向きもある。

「中国では『BAT』がサクセス・ストーリーの象徴のように持て囃されているが、バイドゥはグーグルの、アリババはアマゾンの、テンセントはホワッツアップのそれぞれパクリではないか。今がピークだろう」(呂之言・エッセイスト)

「IT産業に期待したって、そんなものはまた一つの新たなバブルに過ぎない。世界に通用する自主ブランドを作れない限り、中国経済の未来はない」(巴一・広告会社社長)

他にも、様々な職業の中国人に、中国経済に関するホンネを聞いた。

「中国経済が発展できないのは、実力ではなくコネばかりですべてが決まる社会だからだ。それでも、ギリシャよりはマシだろうが」(肖揚・広告会社勤務)

「政府の過度の金融緩和によって、インフレを招いた。それで製造業が打撃を受けたのだ」(毛傑・大学博士課程)

「中国の企業は、経営者と社員との関係が悪すぎる。このことが、中国経済が落ち込んでゆく最大の原因だ」(謝林玲・大型国有企業社員)

「3年前まで国有企業には手厚い福利厚生があったが、習近平時代になってすべて消え、初任給も毎年1000元ずつ減っている。それで優秀な若者から辞めていく」(胡麗芳・別の大型国有企業社員)

「中国人は、以前は懸命に働いて生活を向上させようとしていたが、いまや懸命に働いて何とか食いつなごうとしている。子供のいる家庭は悲惨だ」(孫江韵・設計士)

こうした声を総合すると、「習近平不況」はやはり当分、収まりそうにない。

「週刊現代」2015年10月10日号より

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45627

◆住宅ローンを組んだ中国人は99%破産する
  バブルの崩壊は早くから予測されていたのだが。

   ♪
石平『暴走を始めた中国2億6000万人の現代流民』(講談社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 大量の流民が発生すると、その王朝は末期、いずれ崩壊することは過去の漢、新、後漢、随、唐、宋、元、明、清の興亡を描くだけでもすぐに納得がいく。
 小学生でもわかる歴史の鉄則である。
1949年以来の共産党王朝とて、すでに息切れ激しく、新興宗教が陰に栄え、年間18万件もの暴動が中国全土あらゆる土地で発生している。天安門事件以来なかった暴徒への軍出動も広東省で起きた。
くわえて250万の大学新卒に職が無く、若者の閉塞感と絶望の行き着く先は、暴動、内乱になる。
また圧政に抗議する自爆テロも激増した。
 本書は最終章でざっと上記をおさらいするが、そうしてありきたりな歴史観よりも、本書ででてくる驚愕の経済数字に注目である。

 石平氏は中国の地方紙、ミニコミ誌から統計データを細かく蒐集し、経済データの盲点を鋭角的につきつめていけば、近未来の中国経済は真っ黒、先の見えない闇の中を漂っていることになると警告する。
 中国語で「商品房」というのはショッピングモール、テナントだけではなく、オフィスビル、分譲住宅を含む販売不動産の総称である。
2015年の『公式統計』で、第一四半期の『商品房』の販売面積は1億8254平方米だったが、「その三・五倍以上の在庫が山積みとなっている」(29p)
評者(宮崎)の推計では売れ残り『商品房』は1億1000万戸だが、公式統計は『軒数』であらわすことを避けて、一見するとわかりづらい面積で発表している。これも数字統計のからくりであろう。
発狂的投資により不動産投資は『十年で百倍となった』(51p)が、

 「不動産業に対する融資の総額が10年で100倍以上になった」というのも驚きである。すなわち「1998年には400億元だったものが、2007年6月には43兆元にまで膨らんだ」(54p)。
ところが、この間「10%ダウンした個人消費率」という矛盾した統計に出くわす。つまりインフレが庶民を襲い、野菜を安く買うためにチャリンコで市内を走る消費者(これを「菜奴」という)があちこちに大量に出現していたのである。
 中国は外貨準備高が猛烈に増えたが、これは相対取引で人民元となって国内へ環流する。このため中央銀行は札束を『増産』する。
 輪転機は休み無く印刷をつづけ、人民元は大量に市場にばらまかれた。
 通貨供給量は「1978年には859億4500元だったが、それから30年経って2009年はというと、じつに60兆600多く元で、なんと705倍」になったのだ(63p)
ちなみに同期のGDPは92倍という計算になる(101p)

 本書には日本のエコノミスト等が『意図的』に『用いない』数字がずらりとならんでいるが、これらを一瞥しただけでも、中国の経済発展のいびつな成長のからくり、その果てしなき絶望の近未来を掌握できるだろう。
 中国を礼賛して止まない人たちは、本書を『悪質な宣伝文書』と非難するだろうが、真実は真実である。
真実に近い数字を前にして、中国御用学者の出る幕はなくなった。

http://melma.com/backnumber_45206_6271506/

 
 

習近平は焦っている

2015-11-10 20:38:42 | 資料
これが世界の現実だ~日本の安保法制に真正面から反対する国は1つもない

2015.10.27 筆坂 秀世 JB PRESS

安全保障関連法案が成立した日の国会議事堂周辺の様子(2015年9月19日撮影、資料写真)。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO〔AFPBB News〕
 先の通常国会は、安保法制を巡って、とにもかくにも大いに盛り上がった。国会外では、60年安保以来とも言えるほど、 安保法制に反対する人々が集結した。民主党の岡田代表や共産党の志位委員長、生活の党の小沢代表、社民党の吉田党首らが、国会前の集会で声をからして、 「戦争法を廃案に」と訴えた。共産党や社民党は、その後も「戦争法を廃止」とこぶしを振り上げ続けている。だが国会前に集結した人々の熱は早くも冷め始め ているようだ。

 ネット上で見た、北海道のある組織によるデモ行進は、8月には500人参加していたが10月には7人ほどしか参加者がいなかったという。「ふるえて眠れ、自民党」という横断幕を掲げているが、参加者が寒くて震えていたのではないかと心配になる。

 共産党の「国民連合政府」の提案を、朝日新聞や毎日新聞は大きく報道したが、予想通り、遅々として進んでいない。本来なら、あれだけの運動があったのだから、国会内の力関係で法案は成立したとはいえ野党がもっと元気になってもよさそうなものだが、そうはなっていない。

安倍首相、5カ国訪問で成果着々

 その一方で安倍首相は、10月22日から28日までの日程でモンゴルやトルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタンの中央アジア5カ国訪問を行っている。

  トルクメニスタンでは、産業高度化のための日本企業への期待が表明され、事業規模総額2兆2000億円に上る案件に合意がなされた。タジキスタンでは、給 水の改善のため2億6500万円の無償資金協力に合意し、大いに歓迎された。ウズベキスタンでは、医療施設の改善のため6億8600万円の無償資金協力に 合意した。

 中央アジアは、天然資源を豊富に産出し、ユーラシアの中心に位置する重要な地域である。これらの国々との協調関係を強化したことの意義は大きい。

 安倍首相は、これらの国々で安保法制や積極的平和主義について説明を行ったそうだ。反対の声などは、もちろんどこからも聞かれなかった。

安保法制に反対する国は1つもない

 そもそもアジアでも安保法制に反対する国など1つもない。

 まず東南アジア諸国はどうか。

  フィリピンのアキノ大統領は9月22日、ABS-CBNテレビとのインタビューで、日本で安全保障関連法が成立したことについて、「平和維持活動などさま ざまな活動で(日本は)より優れたパートナーになった」と歓迎した。さらに、「ある時点で非常に攻撃的だったからといって、権利を抑制されるべきだろう か」と述べ、日本の安保法制を擁護している。

 ベトナムのズン首相も「高く評価する」と述べた。マレーシアのナジブ首相は、「日本の積極 的平和主義の下での貢献への歓迎」を表明している。ラオスのトンシン首相は、「日本が地域と国際社会の平和の促進に多大な貢献をしていることを賞賛する」 と述べている。どの国も安保法制を高く評価しているのが現実である。

 アメリカ政府が歓迎していることは言うまでもない。国務省報道官は、「地域および国際社会の安全保障に係る活動につき、積極的な役割を果たそうとする日本の継続した努力をもちろん歓迎する」と述べている。

 またドイツのメルケル首相は今年6月の日独首脳会談で、安倍首相の安保法制の説明に対して「日本が国際社会の平和に積極的に貢献していこうとする姿勢を100%支持する」と述べている。

中国や韓国はどうか。

  中国は、5月14日の中国外交部定例記者会見で、報道官が質問に答えて、「歴史の教訓をきちんと汲み取り、平和発展の道を堅持し、我々が共に暮らしている このアジア地域の平和と安定、そして行動発展のため、多くの積極的かつ有益なことを成し、多くの積極的かつ建設的な役割を果たしていくことを希望する」と 述べているだけで、こぶしを振り上げて反対するような態度はとっていない。

 韓国も、朝鮮半島有事の際に韓国政府の承認なしに日本が集団的自衛権を行使することがなければ、おおむね反対はしないという姿勢を示している。

 つまり、正面から反対し、批判している国はないのである。安保法制反対派は驚くかもしれないがこれが世界の現実というわけだ。

共産党が絶対に損しない「国民連合政府」構想

 野党の中で、野党らしく頑張っているのは共産党だけだ。上手くいくとは到底思わないが、「戦争法廃止、立憲主義を取り戻す」の1点で結束する「野党連合政府」構想は、それなりに考え抜かれたものだと思う。

  まずタイミングがよかった。一強多弱の政党構図の下で、野党の中で相対的に共産党の比重が高まっており、民主党などもまったく無視するわけにはいかない状 況にあるからだ。これまで何度も暫定政権構想を発表してきたが、まったく無視されてきた過去とは、この点が大きく違っている。

 この提案の最大の特徴は、どう転んでも共産党は絶対に損をしないということにある。共産党は、自衛隊活用、日米安保凍結という方針も打ち出した。別段、特別のことではない。これまでも言ってきたことである。大方針転換のように言われているが、実はそんなこともない。

  共産党は、自衛隊についても、日米安保についても、「国民の合意があれば、自衛隊を解消し、日米安保を廃棄する」と言ってきた。しかし、こんな国民合意な ど、まずほとんど考えられない。このことは共産党も百も承知のことである。つまり、自衛隊活用、日米安保凍結という方針にならざるを得ないのである。ただ それだけのことだ。

 安保法制反対派からは、当然のように共産党の方針に歓迎が表明されている。決断を迫られるのは他の野党である。民主 党内には、共産党との選挙協力に、選挙に強い議員を中心に否定的な声があるようだ。だが共産党との選挙協力なしに、今の民主党が自民党と対抗できるのか。 無理であることが目に見えている。それどころか、協力しなければ安保法制反対派からの批判を受けることになるだろう。

 だが共産党は、「自らの主張をいったんは棚に上げても、安保法制廃止のために頑張った」という評価を受けるのである。選挙協力が実現しなくとも、おそらく共産党は次の国政選挙でも票を伸ばすことになるだろう。実に賢明な提案なのである。

あきれるしかない維新の党の分裂劇

 維新の党の分裂劇には、あきれる他はない。この党の離合集散は珍しくない。2014年6月には、石原慎太郎氏らの次世代の党と日本維新の会に分党している。同年9月には、江田憲司氏率いる結の党と合併し、維新の党となった。そして今回の分裂劇である。

  この人の発言を信じたことはないが、「政界を引退する」と明言した橋下徹大阪市長が今回も指揮をとって「おおさか維新の党」を作った。新代表は、馬場伸幸 前国対委員長である。橋下氏の場合、何を言ってもどんでん返しがある。要するになんでもありなのだ。東京組と大阪組が互いに批判し合っているが、結局、中 身は政党交付金の奪い合いなのだから程度の低い喧嘩である。

 橋下市長は、「永田町組の子ネズミ連中がまた飲み食いに使うから」と言っ て、政党交付金の振り込まれた銀行口座の預金と印鑑を持っている。しかし、「大阪組で前国対委員長の馬場伸幸衆院議員の金遣いの荒さが大問題になっている のだ。なんと毎月300万円もの党のカネを使って、連日連夜、飲めや歌えやのドンチャン騒ぎをしていたという」(10月3日付「日刊ゲンダイ」)との報道 もある。こんな人物が代表なのだから、「おおさか維新の党」も人材がいないということだ。そう言えば、上西小百合という人騒がせな議員もいた。

 橋下氏が言うことにただただ従う議員だけを集めると、こういうレベルの低い人材しか集まらないということであろう。こんな党がいつまで存在し続けるのだろうか。そう長くはないような気がしてならない。

 それにしても安倍首相はついている。こんな野党ばかりなのだから。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45086
 ◆日中韓首脳会談、終わってみれば日本の圧勝だった!~中韓の焦りは想像以上。安倍首相はどっしり構えていればいい

2015年11月06日 長谷川 幸洋  現代ビジネス

具体的な成果よりも、なぜ開かれたのかが重要だ【PHOTO】gettyimages
習近平は焦っている

日本と中国、韓国の首脳会談が10月31日から11月2日にかけてソウルで開かれた。日中韓の首脳がそろって会談するのは3年半ぶりだ。時間の空白はなぜ生まれたのか。そして、なぜいま首脳会談だったのか。

会談を避けてきたのも再開に動いたのも、鍵を握っていたのは中国の習近平政権である。

マスコミは首脳会談について連日、大報道を繰り広げた。日中韓については「自由貿易協定(FTA)の交渉加速や首脳会談の定例化で合意」、日中は「東シナ海のガス田共同開発協議の再開を目指す」、日韓は「慰安婦問題で交渉加速」といった具合だ。

それぞれの合意内容や首脳たちの表情はそれなりに詳しく報じられた。だが、そもそも今回、会談がなぜ開かれたのか、逆にこれまでなぜ長い間、開かれなかったのかについての分析はまったく不十分だったと言わざるをえない。

それだけ長い間、開かれなかったのは、もちろん理由がある。その理由を探っていけば、これから3国の関係がどうなるか、日本はどうすべきかもおのずと見えてくるはずなのに、そんな問題意識はまるでないかのようだ。

私に言わせれば、3国が交渉加速で合意した日中韓FTAや韓国の朴槿恵大統領がこだわった慰安婦問題などはサイドストーリーにすぎない。そんなことより、ずっと3国首脳会談を避けてきた習政権が一転して再開・定例化に動いた意味のほうがはるかに重要である。

なぜ習政権が鍵を握っていたと言えるのか。中国に開く気がなければ、日中韓首脳会談は開けなかったからだ。よく知られているように、安倍政権は中国にも韓国に対しても、一貫して「日本はいつでも会談の門戸を開いている」という姿勢だった。日本が会談を避けた事実はない。

韓国はどうかといえば、朴大統領はここ数年、異常なほど中国にすり寄ってきた。これまで朴大統領は習主席と実に6回も首脳会談を開いている。直近は2015年9月に北京で開かれた対日戦争勝利70周年記念の軍事パレードを参観した際の会談である。

韓国が日本と緊張関係にあったのは事実だ。だからといって、中国が3国会談を開こうといえば、韓国は断れない。韓国は歴史的にも地理的にも、日中両国の狭間で生きてきた国だ。まして中国と異常接近している現状では、3国関係にかかわる主導権は中国が握っている。

つまり、3年半にわたって3ヵ国会談を開けなかった最大の理由は、中国が拒否してきたから、というシンプルなものなのだ。

中国はあまりに日本をナメすぎた

なぜ中国が拒否し続けたか。習政権は2012年11月の発足以来、米国との関係を最重視する一方、安倍政権については敵視あるいは軽視していたからである。

時系列でみると、事態が一層はっきりする。前回の日中韓首脳会談が開かれたのは、中国が胡錦濤政権だった2012年5月だ。その後、同年11月に習近平が中国共産党中央委員会総書記と党軍事委員会主席に就任して実権を握った。

習 政権は発足すると直ちに「軍事闘争の準備を進めよう」と陸海軍に大号令を発した。実際、12月には初めて尖閣諸島付近で中国のプロペラ機が領空侵犯した。 翌13年1月には中国海軍の艦艇が海上自衛隊のヘリコプターと護衛艦に射撃管制用のレーダーを照射する事件が相次いで発生した。

これはほとんど交戦一歩手前の事態だった。交戦に至らなかったのは、日本の自衛隊側がぎりぎりの極限まで自制したからだ。

同6月になると習主席は訪米してオバマ大統領と会談した。このときの大テーマは米国との縄張り分割論である。習主席は「太平洋は米中両国を受け入れるのに十分広い」という有名な台詞を吐いて、オバマ大統領に太平洋の縄張り分割を提案した。

「ハワイを分岐点に東は米国、西は中国の縄張りにして互いに尊重しよう」ともちかけたのだ(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/36121)。

ところが、オバマ大統領は「日本が米国の同盟国であることを忘れるな」と釘を刺した。つまり縄張り分割案を拒否した。これは習主席にとって大きな挫折である。この後に起きたのが、同年11月の中国による防空識別圏の設定だった。

これは主として日本を標的にした仕掛けだったが、米国を強く刺激した。米国は直ちに大型爆撃機2機を「識別圏内」に飛ばして、中国の一方的な設定を無視する行動に出た。このあたりから米中関係はぎくしゃくしていく。

米国は当初、中国が提起した「新型大国関係」論にのりかかったフシがあったが、太平洋の縄張り分割論と防空識別圏設定をみて、警戒感を強めていった。ここまでの展開をみれば、当時の習政権の思惑ははっきりしている。

中 国にとって肝心なのは、あくまで米国との関係だったのだ。縄張り分割論で米国を抱き込むことさえできれば、日本も、ましてや韓国など取るに足らない。米国 が「ハワイから西は中国の縄張り」と認めてしまえば、自動的に日本も韓国も中国の縄張り内に入る。あとは煮て食おうと焼いて食おうと中国の勝手になる。そ ういう思惑である。

だからこそ、日中韓首脳会談など眼中になかった。「いずれ子分になる国との話し合いなど、する必要はまったくない」という話である。

付け加えれば、2012年11月の政権発足前後は、中国国内で反日運動が最高潮に達していた時期だった。9月11日に当時の野田佳彦政権が尖閣諸島の国有化を決めたからだ。

日 本が尖閣諸島を国有化したのは間違っていないし、そもそも日本の領土の話だから、中国がいかに憤激しようと筋違いである。そうであったとしても、中国は 「尖閣は中国のもの」と言い続けてきたから、国内で反日運動が予想以上に盛り上がってしまった。それもあって日本と首脳会談を開くわけにはいかなかったの だ。

本筋に話を戻すと、習主席が提案した縄張り分割論はオバマ大統領に拒絶されてしまった。防空識別圏の設定をきっかけに米中関係は冷ややかになっていく。そこで習政権としては対日戦略も練り直さざるをえなくなった。

その結果、どうなったか。それが14年11月の安倍首相との例の「仏頂面会談」である。

世界中に失笑された中国

アジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて開かれた初の安倍・習首脳会談は習主席にとってみじめな会談になった。ホスト国でありながら、ろくに言葉も交わさず礼を失した態度で安倍首相を出迎え、世界で失笑を買った。

なぜ、そんな無礼な態度で接したかといえば、中国が根本的な戦略練り直しを迫られたからだ。

自分が「日本などモノの数ではない」という態度をとり続け、とりわけ軍部に対しては政権発足直後から戦争準備をあおりたててきた手前、いまさらみっともなくて笑顔で首相を出迎えるわけにはいかなかったのである。

そ れが証拠に、それから5カ月経った15年4月の日中首脳会談では、習主席はうってかわって愛想笑いをふりまいた。「会うのも2度目なら、みっともなさも少 しは薄まるだろう」という話である。肝心の米国が思うようにならない以上、なんとか日中関係を打開しないことには東アジア外交の主導権を握れないと悟った のだろう。

それから何が起きたか。

まず日米両国は日本の安保関連法成立を先取りした形で防衛協力の指針(ガイドライン)を見直した。これは日米による南シナ海の警戒監視を視野に入れている(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/43504)。そのうえで15年4月の日米首脳会談では、日米が中国の脅威に共同で対処する方針を確認した。

南 シナ海における中国の人工島埋め立て・軍事基地化を念頭にオバマ大統領は「中国は間違っている」と国を名指しして批判し、安倍首相も「力による現状変更を 許さない」と呼応した。その後、日本では安保関連法が成立した。これは中国の脅威に対抗するために日米同盟を強化するのが最大の目的である。

続 く10月には懸案だった環太平洋連携協定(TPP)も大筋合意にこぎつけた。TPPは単なる貿易自由化協定ではない。中国によるアジア太平洋の主導権構築 を許さないという、すぐれて安全保障上の戦略に基づく枠組みである。日米ガイドラインと日本の安全保障法制見直し、それにTPP合意が続き、アジア太平洋 の国際秩序は大きく変わった。

日米を軸にした中国包囲網の完成である。今回の日中韓首脳会談は、こうした文脈の中で開かれたイベントなのだ。


向うから必ず歩み寄ってくる【PHOTO】gettyimages
実に単純な韓国の思考法

も うあきらかだろう。反日運動とともにスタートした習政権は「日本など取るに足らない、オレたちは米国と縄張りを仕切るんだ」と大風呂敷を広げてみたもの の、米国の反撃に遭って自らつまづいてしまった。その挙げ句、面子を取り繕うために応じざるを得なくなったのが、今回の日中韓首脳会談なのだ。

南シナ海をめぐる米中間の緊張も、この延長線上にある。

かつてはアジア太平洋全域の縄張り分割という妄想にとりつかれていたが、いまは「南シナ海の支配」という少し縮小した妄想にとりつかれているのだ。だが、実態は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/46130)で指摘したように、中国は米国の駆逐艦派遣に事実上、手も足も出ない状況に追い込まれている。

この核心部分を見過ごしてしまえば、首脳会談の意義は分からない。単に「3年半ぶりか、ようやく会ったのか」程度で終わってしまう。日本のマスコミ報道は大局観がまったく欠けている。

以上を踏まえたうえで、韓国に触れよう。韓国は情けない国だが、現実的な計算もできる国だ。解決済みの慰安婦問題をいつまでもぐだぐだと持ち出すのは情けない。だが自分を取り巻く大国である日米中の風向きを読んで、さっと軌道修正するあたりは現実的なのだ。

貿易で中国に依存する韓国は、中国が沈めば韓国経済も沈む関係にある。中国がバブル崩壊で沈んだ以上、自分たちが生き残るには日米重視に舵を切り替えざるを得ない。だからこそ環太平洋連携協定(TPP)にも入りたい。

もちろん、北朝鮮に対峙する韓国は安全保障面で日米に依存しているという根本的な事情もある。そんな実利的背景の下で慰安婦問題とは対日交渉で値段をつりあげる材料にすぎない。だから、安倍政権はじっと様子をみていればいい。黙っていて、焦るのは韓国である。

安 倍政権は「TPPに入りたいなら慰安婦問題と水産品の対日輸入規制問題にケリをつけなさいよ」と言えばいいのだ。さらに言えば、韓国が「慰安婦問題を未来 志向で最終的に解決したい」というなら、安倍政権は「世界中に作った慰安婦像を韓国政府の責任で撤去せよ」と要求すればいい。

韓国が慰安婦像撤去に応じないなら、韓国は口ではともかく、本音は慰安婦問題を終わりにする意図がないという話になる。慰安婦像撤去に応じるかどうか、少なくともその努力を約束するかどうかが、韓国政府の本気度を測るリトマス試験紙になるだろう。

この隙に日本は足場を固めればいい

中国も焦っている。足元の経済が崩壊寸前であるのに加えて、権力闘争は激化する一方だ。加えて南シナ海の人工島周辺に米国のイージス駆逐艦が進入してきた。それでも護衛艦を追尾するくらいしかできず、一歩間違えれば、国内のタカ派から政権批判が飛び出しかねない状況だ。

日中韓FTAの交渉促進を言い出してはみたものの、TPPが大筋合意した以上、FTA交渉が大きく前進する見通しは暗い。なぜかといえば、日本は当然、TPPを貿易自由化の基盤に据える一方、FTA交渉でもTPP合意の内容が事実上の基準になるからだ。

中国とFTAを結ぶとなれば当然、知的所有権保護や投資保護が重要テーマになる。パクリが横行している中国はTPP水準で知的所有権を保護できないし、投資保護はもっと難しい。

日本企業は対中投資促進どころか、バブル崩壊を目の当たりにして静かに中国からの撤退が始まっている。中国側は「逃げるなら事務所や工場はぜんぶ捨てていけ。撤退に伴う損害賠償も払え」と要求するケースまであるようだ。まさに「泥棒に追い銭」である。

そんな国とまともな投資保護交渉をするのは、どだい無理な話ではないか。そうであるとすれば、中国についても日本はじっと様子を見ていればいい。

いま喫緊の課題は南シナ海情勢である。日本は自分の足元を固めつつ、米国や東アジア諸国、オーストラリアなどと連携を強めていくべき局面だ。中韓と無理に歩調をそろえていく必要はさらさらない。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46233

◆賄賂と宴会を禁じられて転げ落ちる中国経済
「反腐敗運動」のさらなる強化で金融危機が勃発か?

2015.11.6 藤 和彦 JB PRESS


中国の反腐敗運動はいつまで続くのだろうか。北京市内にはためく中国国旗(2015年7月9日撮影)。(c)AFP/GREG BAKER〔AFPBB News〕
 10月28日付のブルームバーグが、中国の反腐敗運動が金融界を狙い撃ちしていることを伝えている。

  中国の反腐敗運動を主導する共産党中央規律検査委員会は、10月23日に発表した声明で、中国人民銀行や中国工商銀行をはじめとする中国5大銀行、政府系 ファンドの中国投資(CIC)、国家開発銀行、上海・深セン両証券取引所、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会(証監会)、中国保険監督管 理委員会など31機関を、不正行為または汚職の可能性をめぐる検証の対象として挙げたという。

 2012年11月の習近平総書記就任直後から、党内の「腐敗分子」をあぶり出す反腐敗運動が開始された。「ハエ(小物)もトラ(大物)も叩く」との宣言どおり、元政治局常務委員の周永康や人民解放軍の最高幹部だった徐才厚らが摘発された。

 これまで「石油閥」や「電力閥」などにメスが入れられてきたが、金融業界が公式にターゲットになるのは初めてである。

  中央規律検査委員会は、第13次5カ年計画(2016~20年)について討議する第18期中央委員会第5回総会(5中総会)の開催直前という微妙な時期 に、あえて声明を出した。国家行政学院の竹立家教授はそのことについて、「中国経済に対する下振れ圧力が強まる中、腐敗した金融システムは中国の経済的な 安全保障を脅かす恐れがある」からだとしている。

反腐敗運動が中国経済の減速をもたらした

  中国政府は6月中旬からの株価暴落以降、その犯人捜しに躍起になっていた。8月末には、中国最大の証券会社である中信証券や証監会の幹部が株価暴落を招く 不正行為を自供したとして拘束された。また、中央規律検査委員会が声明を発表した10月23日には、大手証券会社である国信証券総裁が自殺し、翌27日に は証監会上海先物取引所の元理事長が職務怠慢などを理由に解任された(10月29日付「大紀元」)。

 江沢民一派の追い落としのための権力闘争との見方もあるが、金融業界にまで本格的な反腐敗運動を展開することになれば、中国の金融危機勃発のリスクがますます高くなってしまうのではないかと筆者は危惧している。

 そもそも中国経済が減速し始めた原因の一端は、反腐敗運動にある。

  習近平指導部がスタートして最初に迎えた春節期(1年を通して最も消費が活発になる期間)の飲食業界の売り上げは前年比8.4%増と過去10年で最も低い 伸び率となった。高級ブランド品の買い控えはそれ以上であったと言われている。バブル経済を支えている共産党幹部が財布のひもを締めた結果である。その 後、不動産投資などにも波及し、広範な経済活動に悪影響を及ぼした。

 中国政府は輸出主導型からサービス・消 費主導型経済への構造転換を図ろうとしているが、専門家の間では「政府は国内に潤沢にある貯蓄(GDPの約5割を占める貯蓄率)を活用して必要なインフラ 投資を進めないと、中国経済は失速しかねない」との懸念が高まっている(10月26日付ブルームバーグ)。公共事業など投資活動が低調だからだ。

  反腐敗運動の総元締めは王岐山 政治局常務委員である。王氏の下で、何万もの捜査官が役人や経営者を取り調べ、1日500人以上が処分される状況が続いている。その恐怖が官僚機構や国有 企業の経営陣全体に広まり、多くの幹部たちは目立つことを恐れて重要な決定を下すことを避けてしまうようになってしまった。

 中国メディアによれば、「役人らは面従腹背で、裏で仕事をさぼっている。賄賂も宴会もダメなら仕事もしない。執務時間中は政治学習と称して小説を読んでいるため、公共事業の許認可の遅れや手続きの停滞を招いている」という。

世界最大の鉄鋼業界が深刻な危機に

 10月29日、中国銀行は「第3四半期決算はリーマン・ショック後初めての減益となった」と発表した。その要因は、中国の景気低迷と過去最大規模となる貸倒引当金の計上である。

  中国の銀行から欧米勢の出資引き揚げの動きが相次いでいる。著名な投資家であるマーク・ファーバー氏は「債務で警戒を要する中国の上場企業数が昨年の 115から今年は200に急増している」ことに警告を発している(10月27日付ブルームバーグ)。上場企業数の債務総額は前年比で約23%増加している が、この増加のペースはGDP成長率の3倍である。

 業種別に見ると石油・石炭などのコモデイテイ分野(92 社)と鉄鋼などの工業分野(43社)がおおかたを占める。中国鋼鉄工業協会は10月28日の定例記者会見で、「業界では値崩れととともに需要が急落し、銀 行が貸し渋り姿勢を強め、損失が積み上がっている」と、世界最大の鉄鋼業界が深刻な危機に見舞われていることを明らかにした。

 前述の5中総会は、内部意見の対立により例年より遅れて10月26日に北京で開かれたが、難産の末出てきたのが1979年以来続いてきた「一人っ子政策」の廃止である。

 2016年3月に開催される全国人民代表大会における法律承認の手続きを経ずして共産党が早急な政策変更を望んだのは、経済成長を支える生産年齢人口(15~59歳)の減少が危機的な状況にあることを示している。

  中国経済に見切りをつけた投資家たちが、当局の規制をかいくぐる形でいわゆる地下銀行を通じて海外へ資本を流出させるという動きも活発化している(10月 29日付ウォール・ストリート・ジャーナル)。前述のファーバー氏も、「私も中国国民が記録的なペースで国内から資金を移しつつあるとの見方に賭けたい」 としている。人民銀行は11月2日に人民元の大幅引き上げを行ったが、資本流出がますます深刻化しているのではないだろうか。

中国経済が世界2位の座から陥落?

  旧ソ連が崩壊した一因として「クレムリンの役人たちが相互に連帯することなくサボタージュが同時多発的に発生した」ことを指摘する専門家がいる。中国が未 曾有の金融危機勃発のとば口に来ている最中に、反腐敗運動の矛先を向けられ恐れをなした金融業界の役人や経営者達の間で大規模なサボタージュが起きたらど うなるのだろうか。

 ソ連崩壊後に7年間GDPが減少し続けたため、GDPは旧ソ連時代より44%減少したと 言われている。現在の中国は資本主義国の体裁を擁しているが、その実態は共産党一党支配の計画経済国または計画型疑似資本主義国である。そのため、中国政 府が発表するGDPは実績値ではなく計画値に過ぎない。本当のGDPの数字が分かるのは、中国で大規模な金融危機が発生し、旧ソ連の場合と同様に経済シス テム全体の見直しを余儀なくされる事態を経てからだろう。

 著書『やがて中国の崩壊がはじまる』で知られる ゴードン・チャン氏は、「日本が成長しなくても中国が落ちるため、中国はいずれ世界経済第2位の座を日本に明け渡すだろう」としている(10月22日付大 紀元)。今の中国は、それが「全くの空想話」として一笑に付せる状況ではなくなってきている。

在庫が積み上がる中国、米国の石油業界

 中国の石油業界は、鉄鋼業界と同様に過剰な債務に苦しんでいる。

  中国最大手の石油・天然ガス企業であるペトロチャイナ(中国石油)の第3四半期の純利益は、原油安が売り上げに悪影響を及ぼしたため、前年比81%減と予 想以上に悪化した。アジア最大の石油精製企業であるシノペック(中国石油化工集団)の1月から9月までの純利益も、前年比48%の大幅減であった。

  10月23日に発表された統計によれば、9月末の中国の原油在庫は前月比2.4%増の3358トンとなり、景気減速の影響で国内のガソリン消費が低迷して いることが明らかになった。10月30日付ウォール・ストリート・ジャーナルが「原油相場の反発、中国には期待するな」と報じているように、中国の原油輸 入量の減少はいよいよ本格化するだろう。

 米国でも在庫の積み上がりの状況は深刻である。過去4週間に2260万バレル増加したため、原油在庫は10月としては1930年以来の高水準に達した。

 供給過剰に加え、この時期にしては比較的温暖な気候が原油・ガス需要を抑えている。米国の天然ガス価格は2012年4月以来の100万BTU当たり2ドル割れを記録し、原油価格にも下押し圧力となっている。

  アラブ首長国連邦(UAE)経済相は10月25日、「原油価格は1バレル=45ドルで底打ちした後、来年は60ドルまで上昇する公算が大きい」と予想し た。だが、「大手石油会社にとって、原油価格1バレル=60ドルは魔法の数字になりつつある(10月28日付ブルームバーグ)。「原油価格は1バレ ル=36ドルに向かいつつある」とするのが市場関係者のコンセンサスだからだ。

 8月以来の原油価格1バレ ル=40ドル割れは、シェール企業のみならず大手石油会社にとっても打撃は大きい。このため米国の大手石油会社は、コストとリスクの高い超大型プロジェク トから撤退し、不安を抱える投資家らを納得させるためにより安全なシェール層掘削事業に軸足を移している。

 格付けの悪化を懸念するエクソン・モービルとシェブロンはシェールオイル事業により米国の原油生産を大幅に増やす計画を発表した(10月30日付ブルームバーグ)。

 石油稼動リグ数が578基にまで減少し、大手石油会社のシェール企業買収が本格化する兆しが見えてきているが、これによる金融市場に与える負のインパクト(ジャンク債市場の崩壊等)が心配である。

ますます苦境に陥るサウジアラビア

 前回のレポート(「原油価格下落で袋小路のサウジアラビア」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45069) でサウジアラビアの苦境を説明したが、イランメデイアによれば、10月26日、サウジアラビアの軍艦がイエメン南西部沿岸でイエメン側からのミサイル攻撃 を受けて沈没するなど苦戦を強いられているため、サウジアラビア政府は米国の民間軍事会社であるブラックウオーターの支援を要請したという(イエメンで化 学兵器を既に使用したとの噂もある)。

 また10月26日、サウジアラビアの王子がレバノン空港で過激派組織 イスラム国との関係が疑われる薬物の密輸容疑で拘束されるというスキャンダルが発生した。さらに翌27日にはサウジアラビア主導の連合軍がイエメン北部に ある「国境なき医師団」の病院を空爆し、国連の事務総長がこれを非難する声明を発表している。

 欧州議会は10月29日、優れた人権活動をたたえるサハロフ賞を、保守的なイスラム教国のサウジアラビアで言論の自由を訴える人権活動家であるバタウィー氏(現在服役中)に授与すると発表した(2011年には「アラブの春」に寄与した活動家達が受賞した)。

 こうした状況のなか、国際社会におけるサウジアラビアの立場が急速に悪化し始めている。

 中東原油の最大需要国である中国への原油輸出が減少するなど、サウジアラビア政府を支える原油収入の見通しも明るくない(米格付け会社S&Pは10月30日、原油安による財政悪化を理由にサウジアラビアの格付けを引き下げた)。

  9月に、中国のロシアからの原油輸入量は前年比42%増の404万トンだったのに対し、サウジアラビアからの輸入量は前年比17%減の395万トンだっ た。ルーブル安による生産コスト低下により、ロシアの10月の原油生産は日量1078万バレルと過去最高水準を再び更新した。ロシアの原油が中国市場にお けるサウジアラビア原油のシェアをさらに奪う可能性が高い。

 最後に南シナ海だが、「米国と中国の『熱い平和(ホットピース)』時代に入った」と分析する専門家が出てきている。「ホットピース」とは「冷戦(コールドウオー)」の相対概念だ。地域的には直接衝突するが、その衝突は世界的には広がらない、とするものである。

 だが、南シナ海は年間約4万隻の船が通過する世界第2位の貿易航路である(貿易額は年間約5兆ドル)。この地域における米中の軍事衝突は、たとえ小規模であっても日本経済にとって致命的な打撃となる。サウジアラビアとともに今後の推移に要注意である。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45144

イラン核合意はオバマの敗北

2015-11-07 08:19:26 | 資料
中東の核拡散を助長しかねないイラン核協議最終合意
米国の歴史的誤算か?

2015.7.16 宮家 邦彦 JB PRESS

 イラン核協議をめぐり長らく懸念されていたことが現実となった。7月14日、イランと国連安保理常任理事国など6カ国が最終合意に達したからだ。

 早速、日本の一部メディアは「原油安定調達拡大」「エネルギー価格下落」や「日本企業進出」に期待が高まるなどと浮かれている。

 一体どこからそのような楽観論が生まれるのだろう。というわけで、久し振りの「一神教世界の研究」はイラン核開発問題を取り上げる。

「合意されたこと」と「されなかったこと」

 最終合意が発表された直後、米国のバラク・オバマ大統領は「核兵器へのすべての道は絶たれた(Every pathway to a nuclear weapon is cut off.)」と述べた。相変わらずのナイーブ発言だ。

 これに対し、イランのハサン・ロウハニ大統領も「イランが核兵器を作ることは決してない」と述べたそうだ。

 しかし、待てよ。もしかしたら、両大統領の発言は厳密には正確なのかもしれない。筆者の見立ては以下の通りだ。

 誤解のないよう申し上げる。外交で最も重要なことは最終合意文書に「書いてあること」では必ずしもない。むしろ「書かれていないこと」、すなわち「合意されなかったこと」こそが本質であることも少なくないのだ。

 ここからは内外メディアが報じる合意内容の概要とそれに対する筆者の独断と偏見をまとめてみた。これをお読みいただければ、筆者が悲観する理由をご理解いただけるだろう。

合意(1)イランの核開発は今後8~15年間、大幅に制限される

 イランは既存の遠心分離機を今後10年間、現在の約1万9000基を約6100基に減らす。新型遠心分離機の研究・開発は一定の制限下において継続が認められる。

 今後15年間、イランは濃縮度3.67%を超えるウランを製造しない。現在保有する10トンの低濃縮ウランは300キロにまで減らす。今後15年間、ウラン濃縮活動はナタンズ核施設に限定される。

 中部フォルドゥの地下核施設での濃縮ウラン製造は停止され、同施設は研究関連用に転換される。アラクの重水炉は兵器級プルトニウムが生産できないよう設計を変更し、同重水炉の使用済み核燃料は国外に搬出される。

筆者の見立て(1)

 ケリー米国務長官は、これまで「2~3カ月以内」に可能だったイランの核兵器レベルウラン濃縮が、最終合意により「1年以上」に伸びたと胸を張った。しかし、最終合意文書をいくら読んでも、イランは核兵器製造「能力」と「施設」までは放棄していない。

 言い換えれば、最終合意でも、イランは核兵器製造「能力獲得」を断念せず、米国は真実の時(moment of truth)を8~15年先延ばしただけなのだ。

  米国・イラン両大統領の言う通り、イランが「核兵器」そのものを獲得することは当面ないだろう。今イランが望んでいるのは核兵器の「製造」ではなく、いつ でも、恐らくは(イスラエルのように)ごく短期間で、核兵器を製造・配備できる技術的・物理的能力を獲得・維持することだ。

 その意味で両大統領の発言に嘘はない。真の問題は米国がそのようなイランの「能力獲得」をもは阻止できないと事実上認めたことだろう。

合意(2)イランはNPT(核不拡散防止条約)に残り、かつIAEA(国際原子力機関)の厳しい査察を受け入れた

 確かに、IAEAの権限は拡大された。イランはIAEAの「追加議定書」を批准し、未申告核関連施設の調査や抜き打ちの査察を受け入れる。

 具体的には、IAEAは未申告核物質の存在など疑惑のある施設に検証のため立ち入りを求めることができる。さらに、査察につき意見が対立する場合、関係当事国からなる仲裁委員会が助言のうえ、イランは3日以内に必要な手段を取るという。

筆者の見立て(2)

 最終合意にはIAEAによる査察につきあれこれ書いてあるが、どうやら核開発疑惑のあるパルチン軍事施設など特定施設の査察にはイラン側の事前承認が必要らしい。されば、イランが軍関係施設へのIAEAの無条件査察を事実上認めない可能性もあるということだ。

 この点で我々には似たような経験がある。イランがイラクや北朝鮮と同じインチキ行為を繰り返さないという保証はない。 

合意(3)イランに対する経済制裁を段階的に解除する

 イランに対する経済制裁はIAEAがイラン側の核開発制限を確認した段階で一括して解除される。万一、イランが合意内容に違反すれば、65日以内に制裁を元に戻す。対イラン武器禁輸は、防衛目的武器の輸出入制裁措置が緩和され、5年後に完全に解除される。

筆者の見立て(3)

 これ自体曖昧な内容だが、より重大なことは、最終合意が現在中東各地でイランが行っている諸紛争への政治・軍事的介入につき何も触れていないことだ。当然だろう、今回の合意はイランの「核開発」を「阻止」すべく結ばれたものだからだ。

 逆に言えば、このまま経済制裁が解除されれば、イランの財政は大幅に改善し、米国が「国際テロ支援」と呼ぶイランの対外干渉は止むどころか、むしろ一層拡大するということ。

 イスラエルやサウジアラビアなど湾岸・アラブ諸国が最も懸念するのがこの点である。

的外れの各社社説

 以上を踏まえ、7月15~16日の主要日刊紙各社の社説をもう一度お読みいただきたい。紙面の都合もあり筆者の責任で要約させてもらった。詳細は全文を参照願いたい。

【朝日】イラン核合意―流れを確かなものに

○(イランの)核武装の悪夢は遠のいた。国際的な結束が欠かせない。
○隔たりを克服して合意にこぎ着けたのは、双方の理性の勝利と言えるだろう。
○エネルギー市場でのイランへの期待はかねて大きい。
○安倍首相はこの湾岸での機雷掃海を挙げるが、もはやそんな想定は難しい。
○発想の転換は、日本にも求められる。

【毎日】イラン核合意 中東安定への転機に

○難産の末に生まれた歴史的合意を大事にしたい。イランの誠実かつ厳密な履行が不可欠である。
○キューバとの関係正常化に続く外交得点。イランと米国の歩み寄りは確かに画期的である。
○核協議を足場に米・イランが協力関係を築ければ中東安定にはプラスになろう。
○イランと欧米が関係正常化へ向かうなら、日本は経済も含めてイランとの緊密化に努めたい。
○中東情勢を好ましい方向へ導く日本の役割を考えることも大切だ。

【日経】イラン核合意を中東地域の安定にいかせ

○イランに核兵器を持たせないようにする歴史的な合意である。
○合意を確実に履行し、中東地域の安定実現にいかすことを望みたい。
○粘り強く交渉を続けた双方の努力を評価したい。
○核合意を中東が混迷から脱する足がかりにしていきたい。
○イランの国際社会復帰を後押しすることは日本のエネルギーの安定調達にも寄与する。

【産経】イラン核合意 着実な履行で不信克服を

○イランの核武装阻止に道筋を付け、同時に国際社会への復帰を促す歴史的合意。
○軍事施設を例外としなかったのは評価できる。
○イランの歩み寄りは経済制裁の効果である。
○もろさを抱えた合意であることを認識すべきだ。
○イランが国際社会に復帰し、責任ある地域大国として中東の安定に役割を果たすことを期待したい。

 以上の通り、7月15日の各社社説は似たり寄ったりだ。各社とも申し合わせたかのように、「歴史的合意を評価」し、「イランの合意履行が必要」としつつ、「中東地域安定」と「エネルギー安定調達」への期待をにじませている。

 「コップは半分満たされている」と見るこれらの社説がいかに当たり障りのない、付け焼刃の論説に過ぎないかは繰り返すまでもないだろう。これに対し、7月16日の以下の社説は実に的を射ており、他社との違いは歴然だ。

【読売】イラン核合意 中東安定への転換点になるか

○イランは本当に合意を守るのか。楽観はできない。
○合意文書では、イランの核開発の能力や核施設は温存される。
○合意期限が切れる15年後以降は、何の制約も設けていない。
○イランへの経済制裁が解除されれば、原油の増産と輸出増が期待できる。
○日本も調達先の多角化を図るため、情報収集を強化したい。

合意は中東湾岸核拡散の始まり

 読売の社説は「コップは半分空だ」と指摘している。その通りだ。今回の最終合意の本質は、

(1)イランが核兵器開発能力獲得の意図を放棄せず
(2)イランが合意を完全に履行するかにつき懸念が残るにもかかわらず
(3)米国はそのようなイランを受け入れた

 すなわち、武力などによってイランのイスラム共和制の体制変更は行わないと事実上認めた、ということに尽きる。これは米国の歴史的誤算かもしれない。

 残念ながら、始まったのはイランの「非核化」ではなく、中東湾岸地域での「核兵器拡散」だ。これのどこが「米国とイランが歩み寄った結果」なのか。

 一部分析は、米国が中東安定化のためにイランを必要としており、米国とイランはIS(イスラム国)との戦いで「共闘」する可能性があるとまで書いている。これらが中東における戦略的問題と戦術的問題を混同した俗論であることは言うまでもないだろう。

 今回イランは最も守りたかったこと(核兵器開発技術獲得)を皮「一枚」どころか「何枚」も残して守る一方、最も取りたかったもの(政治体制維持と経済制裁解除)をほぼ手に入れた。

 今回はイランの粘り勝ちであり、オバマ政権は米国が「実力以下の外交」しかできないことを再び天下に晒したのだ。これ以外の解決方法はなかったとの反論は理解するが、それを言っても現実は何一つ変らない。

 頼みはイラン一般国民だが、今のところ彼らは沈黙を守ったままだ。テヘランとコムにいるイラン保守強硬派の高笑いが聞こえてくる。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44319?utm_source=rss&utm_medium=feed&utm_campaign=link&utm_content=link
◆イラン核合意、共和党が国務長官を痛烈批判 米上院公聴会

2015年07月24日  AFP

【7 月24日 AFP】ジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官は23日、上院外交委員会の公聴会に出席し、困難な協議を経てまとまったイラン核協議の最終合意を擁護した。ケリー氏がこの合意に ついて議会で公式に発言したのはこれが初めてで、議員らからは同氏がイランに「言いくるめられた」「けむに巻かれた」と痛烈な批判が相次いだ。

 ケリー氏は懐疑的な姿勢を示す議員らを前に、「世界にとって良い合意」だと訴え、承認を要請した。

 前週オーストリアの首都ウィーン(Vienna)で結ばれたこの合意についてケリー氏は、「実際のところこのウィーン合意はイランの核計画を制限していく上で、これまで俎上(そじょう)に載せられた他のどんな選択肢よりも強力で包括的、持続的な措置となる」と述べた。

  さらに、履行されればイランを「永遠に厳しい監視」下に置くことができ、同国の核活動が「全面的に平和的なものであり続ける」よう国際社会も結束していけ ると付け足し、「これは世界にとって良い合意、米国にとって良い合意、地域における米国の同盟国と友好国にとって良い合意だとわれわれは信じており、議会 からの支持に値するものだと考えている」と話した。

 しかし共和党議員らからは懐疑的な意見が相次ぎ、公聴会は4時間半に及んだ。ケリー氏は細い銀縁眼鏡の後ろに疲れたような目を見せていた。

 議会はこの合意を承認するかどうか、60日間の審査期間に入っているが、上下両院で特に共和党議員らから強い抵抗を受けている。

 議会は不承認の動議を可決することができるが、これに対しバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は拒否権を発動することができる。この拒否権を覆すには、上下両院のそれぞれで3分の2の票が必要となる。(c)AFP/Robert MACPHERSON

http://www.afpbb.com/articles/-/3055365?ctm_campaign=pcpopin
◆力の均衡が決定的に変化した

2015年10月20日 マスコミに載らない海外記事

Paul Craig Roberts
2015年10月10日

9 月28日、ロシアのプーチン大統領が国連演説で、ロシアはもはや耐えることができないと述べて世界情勢の大転換が起きたことを世界は認識し始めている ワシントンの卑劣で愚劣で破綻した政策が解き放った混乱は、中東、そして今やヨーロッパを席巻している。二日後、ロシアはシリアの軍事情勢を支配して「イ スラム国」勢力の破壊を開始した。

おそらくオバマ顧問の中にも、傲慢さに溺れておらず、この大転換を理解でき るごく少数の人々はいる。スプートニック・ニュースは、オバマの安全保障担当幹部顧問の何人かが、アメリカ軍勢力をシリアから撤退させ、アサド打倒計画を あきらめるよう助言したと報道した。彼らは、ワシントン傀儡のヨーロッパ諸国を圧倒している難民の波を止めるため、ロシアと協力するようオバマに助言し た。望んではいなかった人々の殺到で、アメリカの外交政策を可能にしておくことによる大きな犠牲に、ヨーロッパ人は気がつきつつある。顧問たちは、ネオコ ンの愚かな政策がワシントンのヨーロッパの帝国を脅かしているとオバマに言ったのだ。

マイク・ホィットニー や、スティーヴン・レンドマンなど、何人かの評論家たちが、「イスラム国」に対するロシアの行動について、ワシントンができることは何もないと正しく結論 している。ロシアを追い出すための、ネオコンによるシリア上空の国連飛行禁止空域計画は夢物語だ。そのような決議が国連で行われるはずがない。実際、ロシ アが既に事実上の飛行禁止空域を設定してしまったのだ。

プーチンは、言葉で脅したり、中傷したり一切することなく、力の均衡を決定的に変え、世界はそれを理解している。

ワシントンの対応は、罵倒、大言壮語や、更なるウソしかなく、しかもその一部を、更にいかがわしいワシントン傀儡がおうむ返しする。唯一の効果は、ワシントンの無能さの実証だ。

もしオバマに、多少の思慮分別があれば、政権からワシントンの力を浪費したネオコンの能なし連中を追放し、ヨーロッパやロシアと協力して、ヨーロッパを難民で困らせている、中東におけるテロの支援ではなく、破壊に注力するはずだ。

もしオバマが過ちを認めることができなければ、アメリカ合州国は、世界中で信頼性と威信を失い続けるだろう。

Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでい る。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOSTが購入可能。

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/10/10/decisive-shift-power-balance-occurred-paul-craig-roberts/

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-9154.html
◆<イラン>核合意が発効 制裁解除は年末から16年1月か

毎日新聞 2015年10月18日

  【テヘラン田中龍士】イラン核問題を巡り、同国と国連安全保障理事会常任理事国(米英仏中露)にドイツを加えた6カ国が7月にウィーンで最終合意した「包 括的共同行動計画」が18日、発効日を迎えた。米国と欧州連合(EU)は核関連制裁の解除に向けた準備に着手し、イランは核活動の抑制措置を始める。制裁 解除は年末から来年1月とみられている。

 最終合意は7月14日に発表され、同20日に国連安保理で承認決議が採択された。採択から90日後の18日が「合意採択の日」として発効日となっていた。

 イランは18日、国際原子力機関(IAEA)に査察頻度の増加や抜き打ち的な査察が可能になる「追加議定書」の暫定適用を通告した。

 イランメディアによると、イランは合意前に保有していた遠心分離機約1万9000基を5060基の稼働に限定し、西部アラクの重水炉では兵器級プルトニウムが抽出できないよう改修に着手する。

 その後、IAEAがイランの措置の進捗(しんちょく)を確認した上で「合意履行の日」が設定され、制裁が解除される。また、IAEAはイランに関する過去の核兵器開発の可能性に関する調査を進め、天野之弥事務局長が12月15日までに最終報告する。

  イラン学生通信によると、イランのサレヒ原子力庁長官は18日、「履行の日は、おそらく2カ月ほど後になるだろう」と述べた。一方、ロイター通信による と、ドイツのシュタインマイヤー外相は同日、制裁は少なくとも来年1月まで続くとした上で「イランが合意事項を履行できることを示せるかが重要だ」と語っ た。

 イランの国会(定数290)は今月13日、最終合意を賛成161、反対59、棄権13で承認。米議会では野党共和党が最終合意に反対したが、オバマ政権は議会が不承認とする事態を9月に回避した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151018-00000058-mai-m_est
◆日本政府、イランへの経済制裁を解除へ

2015-08-11  企業法務ナビ

1 日本による経済制裁の概要
  イランは核開発を進めたことが原因で、2006年12月に国連安保理決議がなされて以降、国際社会による経済制裁が課されてきた。日本も、国連安保理決議 を受けて、『外国為替及び外国貿易法(外為法)』に基づき、イランに対して経済制裁を課してきた。具体的には、日本企業によるイランのエネルギー分野への 投資を禁止したり、核開発計画に関係する個人や会社の資産を凍結したりした。
 なお、外為法は、①国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、②国際平和のための国際的努力に日本として寄与する必要があると認めるとき等に、経済制裁を課すことができると規定する。国連安保理決議がなされた場合、上記①と②に該当する。
2 なぜ日本は経済制裁を解除するのか
今 年の7月14日に、イラン核開発問題について協議をしていたアメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・ロシア・中国の6か国とイランが、最終合意に達した。 その内容は、イランが核開発能力の制限と国際原子力機関(IAEA)による査察を受け入れる代わりに、国際社会が経済制裁を解除するというものである。こ れによって、外為法における①国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、②国際平和のための国際的努力に日本として寄与する必要があると認め るとき、という要件には該当しなくなったため、日本も経済制裁を解除することとしたのである。

3 イランの大きな可能性
  イランは、世界第4位の原油埋蔵量及び世界第1位の天然ガス埋蔵量を有する有数の産油国であり、経済制裁前には日本の主要原油輸入先であった。経済制裁の 解除によって、日本はイランからの原油輸入を拡大することができ、原油調達先の多様化を実現することができる。これは日本のエネルギー安全保障上、非常に 有益である。
 また、イランは人口が7740万人と多く、今後も増加が予測されている上に、経済制裁の解除によって経済が成長すれば、購買力も増す。そのため、イランは、市場としても魅力的なのである。

4 コメント
欧州諸国は、官民一体の訪問団を派遣し、イランとの関係強化の動きを強めている。これに対して、日本は出遅れ感が否めないという。
本 件からいえることは、日本企業としては、経済制裁のようなある種の「法規制」の解除に対して、それを見据えた動きが鈍かったために、ビジネスチャンスを逃 してしまうリスクに見舞われていることは否定できない。日本国内においても、規制緩和など「法規制」の解除が多方面で検討されているのであるから、情報感 度を上げ、それを見据えた動きの迅速化が求められているといえる。

http://www.corporate-legal.jp/houmu_news1903/
◆日本企業の市場復帰歓迎 イラン石油相、経産副大臣と会談 

2015/8/9   日本経済新聞

  【テヘラン=共同】イラン訪問中の経済産業省の山際大志郎副大臣が9日、首都テヘランでザンギャネ石油相と会談した。石油省によると、ザンギャネ氏はイラ ン産原油や天然ガスの対日輸出に関し「日本がイランのエネルギー市場で制裁強化前のシェアを回復することは可能だ」と述べ、日本企業のイラン市場への復帰 を歓迎する考えを表明した。

 石油省高官は、欧米など6カ国とイランの核協議が最終合意した後の7月20日、米国の制裁強化による影響で日本が2010年に撤退した南西部アザデガン油田の開発について「日本が復帰することは可能だ」との考えを示している。

 ザンギャネ氏は具体的なプロジェクトには言及しなかったが、油田の開発、生産の分野で「日本企業と話す準備がある」と述べ、日本からの技術移転に期待を示した。

  日本はかつて原油輸入量の約3割をイランに依存。だが1979年のイラン革命後の米国との関係悪化や、核問題による欧米の制裁に伴って輸入量を次第に減ら し、近年は約5%にまで低下している。核問題の最終合意を受け、制裁解除後を見据えた関係強化のため、山際氏が企業関係者らと共に8日からテヘランを訪問 した。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM09H3W_Z00C15A8000000/
◆イランは莫大な軍事地下基地を明らかにした

2015-10-16  世界のメディア・ニュース

イギリスの新聞「ガーディアン(The Guardian)」は2015年10月15日に、イランの国テレビは、ミサイルおよびカタパルトユニット役員が言ったことについて、より一杯にされた地下のトンネルを2015年10月14日水曜日に、前例がない映像を放送した。

これが使われえたなら、「敵は誤りを犯す」ことになると言った。

イランが、新しい長期のミサイルtは、米国言われる国連安全保障理事会決議を破ったかもしれないテストをしたちょうど3日後に、写真はリリースされた。

イランの議会が6つの世界能力と、2015年07月14日の核取引を承認した1日後に、映像はまた来た。

イランの役員は、核の協定が特にその弾道ミサイルプログラムというその軍隊の力に影響しないと言った。

ミサイル発射および地下の映像は、軍隊が取引により弱められなかったことを証明するために、議員からのプレッシャーに続いていた。

トンネル、長さ数百mおよび高さ約10mのであることは、ミサイルとハードウェアによって満たされた。

イ スラム共和国の革命家国防の航空宇宙部門の司令官アミール・アリ・ハジザデー准将(Brigadier General Amir Ali Hajizadeh, commander of the Islamic Republic’s Revolutionary Guards)が多く言ったそのようなトンネルは深さ500メートルで、全国いたるところで存在した。

それはまるで1970年代の映画に出てくる地下基地で、スタートレックの世界であった。




http://blog.goo.ne.jp/jiten4u/e/70fbbca2c3a58c5afd56669ca4181178
◆イランから戦闘部隊が大挙シリアへ向かっている~ロシアの制空権の保護の下、シリア政権を擁護する目的か

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)10月16日(金曜日)
       通算第4685号   <前日発行>

 トルコの『ヒュリエット・ディリー』(10月15日)が伝えた。
 ヒズボラなど既存の戦闘集団にくわえて、イランからシリア支援に向かう戦闘員およそ数百がロシアの制空権確保という新状況下に、シリアの空港に到着し始めた。大挙しての戦闘部隊の移動は初めてである。

 シリアの反政府軍スポークスマンによれば、ヒズボラなど地上軍の存在は珍しいことではないが、ロシアの参戦以降、イランからつぎつぎと戦闘員が空路シリア入りし、アレッポなどの戦闘現場へ移動していることはこれまでに無かったという。

 いま、なぜこのタイミングでロシアが本格介入したかについてはウクライナ問題を反らず為、中東で主導権を握るためとか、様々な解釈があるが、ワシントンタイムズは、[ITIS OIL,STUPID]と論じた。
 ロシアの石油戦略は、原油値上げによる景気回復である。だからプーチンの戦略は、石油に立脚しているとの指摘である。

 ロシアはイランのガスパイプラインがシリアを経由しているルートの安全を確保し、さらにトルコ経由のガスパイプラインの欧州向け拠点つくりを本格化させる。露西亜空軍が空爆している地域はガスパイプラインの通り道でもあるという。

http://melma.com/backnumber_45206_6273001/

◆「ロスオボロンエクスポルト」:ロシアとイランはS300の契約作業を順調に進めている

2015年11月03日 Sputnik 日本

ロシアの国営兵器輸出企業「ロスオボロンエクスポルト」のアナトリー・イサイキン社長は、テレビ局「ロシア24」の番組で、地対空ミサイルシステム「S300」の供給に関するイランとの契約締結に関する作業は順調に進んでいると発表した。

イサイキン社長は、「我々は、この契約に関する作業を順調に進めている。私は、締結に向けて障害は一切生じないと思っている」と述べた。リア・ノーヴォスチ通信が伝えた。

「イラン・プレス」紙のエマド・アブシェナス編集長は、通信社「スプートニク」のインタビューで、新契約の交渉状況について、次のように語った―

「イ ランによるロシア製の地対空ミサイルシステム『S300』の購入は、2007年に締結された契約条件に基づいて行われている。しかしロシアには今、さらに 近代化された地対空ミサイルシステムがあり、イランはその所有を望んでいる。そのため、契約には供給の特質に関する変更が加えられた。

双 方は、イランがS300の他に、ロシアの他の地対空ミサイルシステムも購入することで合意した。これらはイランのMD(ミサイル防衛)システムの基盤にな るばずだ。契約の微妙なニュアンスについての交渉プロセスは事実上終了し、技術的な実行段階に入った。私は、1-2か月後にも納入が始まるのではないかと 思っている」。

http://jp.sputniknews.com/politics/20151103/1116920.html#ixzz3qULj8YQM

かって2006年にオバマ政府により日本のイラン石油開発をつぶされた
 内外のエネルギー資源開発をすすめる国策企業である国際石油開発帝石 (筆頭株主・経産相)は、イランのアザデガン油田開発から撤退することをきめた。これはオバマ政府による圧力によるものである。アメリカ帝国主義は、イラ ン経済制裁を口実に、日本の独自の石油開発の芽をつぶしたのである。日本のアメリカからの経済的自立はいっさいゆるさないということである。

イランのアザデガン油田 経済制裁の対象に
 国際石油開発帝石は、国際石油開発(インペックス)と帝国石油が統合してできた一部上場の民間企業であるが、政府が指揮権をもっている国策会社である。同社は、主として海外のエネルギー資源の確保を目的に活動してきた。

  日本資本主義は全エネルギーの47%を石油に依存している。50%をわったとはいえ、石油は依然として利用エネルギーのなかで最大のものである。その石油 の大半は中東の石油であり、石油輸入の87%をしめている。日本は大量の石油を中東から輸入しているにもかかわらず、主な油田の権益は米欧の石油メジャー に独占されている。日本は2000年にサウジアラビアのカフジ油田の権益をなくしていらい、イランのアザデガン油田が将来に期待のもてる唯一の油田であっ た。アザデカン油田はイラン南西部にあり、原油埋蔵量260億バレルといわれる世界有数の油田である。

 2000年にイランのハタミ大統領が来日し、日本政府と共同でアザデガン油田の開発をすすめることで合意した。この油田開発は日本にとっては希望であったが、アメリカにとっては当初から容認できないものであった。

  イランと日本の国家関係にはなんの障害もなかったが、アメリカはそうではなかった。アメリカは戦後、石油を国有化するモサデク政府を転覆し、親米パーレビ 王制をつかってイラン人民を抑圧してきた。そのため、1979年にパーレビ王制を打倒したイラン人民と政府は反米斗争を堅持している。そこでアメリカ政府 は、反米姿勢をくずさないイランにたいし、「核開発」を理由に経済制裁政策をとるなど露骨な敵視政策をとってきた。日本にたいしてもこれに同調するようせ まり、イランの石油開発を中止するよう再三要求していた。

  こうしたなかイラン政府の対米姿勢がわずかにやわらいだところをねらって、2004年に国際石油開発を中心にした日本側の企業体はイランの国営企業とのあ いだで油田開発の契約をかわし、75%の権益を得た。このときの計画では、日産26万の石油を生産することを目標にした。

  しかし、2005年に反米姿勢がより強固なアフマディネジャド大統領が就任すると、アメリカはふたたび開発中止を要請してきた。やむなく06年10月に は、国際石油開発は権益を10%に縮小して開発を継続することにした。07年には同油田で生産が開始され、現在まで日産2万の石油を生産している。日本 の投資額は100億円をこえている。

日本の重要な石油の供給国 イ ラ ン 

  日本とイランとの関係はアザデガン油田開発だけでなく、なによりもイランは原油の大口輸入先である。2009年の実績では、イランから日本への原油輸出量 は日本の原油全輸入量の11.2%をしめ第四位(第三位のカタールとはわずかの差)である。また、イランにとっては日本が最大の輸出先である。イランから の原油輸入を維持するためにも、アザデガン油田開発はなんとかして継続したいというのが日本の政府・独占資本の願望であった。

 しかし、オバマ政府はそれをゆるさず、より強硬なイラン制裁法を成立させ、国際石油開発帝石を経済制裁対象の企業にリストアップすると最後通牒をつきつけてきた。こうして日本政府、国際石油開発帝石は、イラン油田開発からの撤退を余儀なくされたのである。

  オバマ政府の、イランの核開発(原発やウラン濃縮など)禁止要求は、まったくダブルスタンダードである。原発どころか核兵器開発をおこなったイスラエル、 インド、パキスタンなどにたいしては「核開発」をもって経済制裁をするなどのことはしていない。ことの中心問題は、反米か親米かであって、アメリカのいう ことを聞くなら核兵器開発だって目をつぶるというものである。同時に、日本の中東原油権益の拡張のように、アメリカ覇権に脅威をもたらすようなことについ ては同盟国であろうと絶対にみとめないということである。
 オバマ が署名したイラン制裁法案は、2006年の「イラン・リビア制裁法」を改定したもので、①イランにガソリンや石油精製品を輸出する企業の米国での取引制 限、②革命防衛隊などと取引する金融機関にたいする米銀行との取引制限、③通信監視技術をはじめイランの人権侵害に利用される技術などを供給した企業を米 政府調達から排除――などが柱となっている。

 イラン制裁 法はイランに投資する外国企業への制裁をおこなうもので、2006年改定法をいっそう強化するものであり、特徴は金融的な制裁もくわえる点にある。日本の 国際石油開発帝石はほそぼそと権益だけは維持するかたちでアザデカン油田開発の事業をつづけてきたが、ここにきて新法を成立させたオバマ政府から制裁対象 企業のリストにはいることを告げられ、ついに事業中止をしいられた。アメリカに頭のあがらぬ民主党政府は、抗議することもなくイランの油田開発からの撤退 をきめたのである。

 イラン制裁法は、反米的姿勢をとって いるイラン政府に経済的打撃をあたえるために、外国企業による石油などの取引を禁止した法律である。同法は、アメリカの国内法にすぎないが、したがわなけ れば金融的な報復制裁措置をとるというもので、事実上、イランに投資しているすべての外国企業を同法の制裁にしたがわせるものであり、ヒットラー以上の ファッショ的な手口である。

 オバマ政府は、平和的な互恵貿易の発展を破壊し、世界各地で対立をあおり、戦争の危機をひきよせている。とりわけ日本にたいしては資源エネルギーや食料などで自立・自給はゆるさず永遠にアメリカの奴隷になるよう強制している。

                  



欧州の難民問題はシリア強奪を欧米が諦めれば解決出来る

2015-11-04 13:12:18 | 資料
ヨーロッパはなぜロシアのシリア政策を支持する必要があるのか

2015年11月 4日 マスコミに載らない海外記事

Finian CUNNINGHAM
2015年11月1日 | 00:00
Strategic Cultural Foundation

ロシアは単純かつ簡潔に述べた。もし難民危機を解決したいのであれば、ヨーロッパはシリア紛争を終わらせる必要があると。統合的な解決は、外国に支援された政権転覆を狙う秘密戦争を打ち負かす、主権を有するシリア政府を尊重することを意味している。

こ れは、自らの政治的将来を決定するシリア国民の権利を尊重することを意味する。そして、またシリアのバッシャール・アル・アサド大統領を打倒するというワ シントン、ロンドンとパリの違法な狙いを、ヨーロッパが拒否することを意味する。要するに、ヨーロッパが、シリアに対する政策で、ロシアと組むことを意味 している。

ウラジーミル・プーチン大統領は、モスクワに、ドイツのジグマール・ガブリエル副首相を迎え入れた際、シリアに対するロシアの立場を繰り返した。まるでモスクワ発言の重要性を強調するかのように、今週、欧州連合諸国間の関係で縫い目がほつれるような新たな展開をみせた。

未 曾有の難民の人数を巡るEUバルカン諸国間の緊張は、緊密な文化的結びつきがある二大筋金入りEU加盟国であるドイツとオーストリアを反目させるほどにま で悪化した。国境を越えて流入する難民を規制するため、国境沿いに塀を作ることを予定している二番目のEU加盟国となったことを、オーストリアが発表した 後に最近の口論がおきた。

ドイツのトーマス・デメジエール内相は、オーストリアの最近の動きを、“常軌を逸し た行動”だと呼んで激しく攻撃した。ベルリンは、ドイツが引き受けるよう、オーストリアは、国境で“夕暮れの難民投棄”をしているとまで非難した。一方、 ウィーンは、メルケル首相が、“門戸開放政策”で移民の流れを奨励しているとかみついた。

これは、主な根源が シリアにおける四年間の戦争に由来する移民である難民危機に起因するEU内部における関係悪化のもう一つの兆候だ。フランスの新聞ル・フィガロは、国境に 塀を設置するというオーストリアの決定を、EU圏内での人々の自由な移動を保障する根本的な協定“シェンゲン協定を脅かす”ものだとして、強烈に非難し た。

オーストリアの動きは、国境の塀を構築し、機動隊や軍の要員を配備するというハンガリー、スロベニア、ク ロアチアとブルガリアの決定に続くものだ。難民に対する高圧的な警備戦術の報道は、ブリュッセルで大きなろうばいを引き起こした。ドイツのドイチェ・ヴェ レ新聞は今月始め、彼の反移民政策と受け取られるものに対して“忍び寄る独裁制”を監督していると、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相を非難する記 事を載せた。

欧州委員会大統領ジャン=クロード・ユンケルは、そのような手段はEUの精神に反すると言って、難民を締め出す劇的な傾向を非難した。ヨーロッパの縫い目はほころびつつあるというのが、暗黙の了解だ。

一方ドイツ国内で、メルケルの与党キリスト教民主同盟は、有権者が余りに緩い難民受け入れ政策と認識するものを巡り、圧力を受けている。バイエルン、ハンブルクとドレスデンで反移民抗議行動が行われた。しかも激怒しているのは極右ペギーダだけではない。

世 論調査では、中道派のドイツ人の間でさえ、ドイツにやってくる外国人の急増を巡り、不安が増大していることが分かっている。ある世論調査では、ドイツ人の わずか三分の一しかメルケルの亡命希望者への“門戸開放”政策を支持していないことが判明した。今年ドイツは、800,000人の新たな亡命希望者を処理 すると報じられている。数値は150万人にのぼる可能性がある。一方イギリスとフランスは、それぞれ20,000人、30,000人という比較的取るに足 りない人数を受け入れると発表した。しかも、こうした僅かな人数でさえ、UKIPと国民戦線のような反EU政党に選挙上の弾薬をたっぷり与えることになっ ている。

この観点から見れば、ヨーロッパは、シリア危機に対する解決を見いだす必要があるというロシアの忠告 は極めて重要だ。もしシリア紛争が荒れ狂い続ければ、ヨーロッパを圧迫している難民の人数は増大し続け、それはやがてEU加盟国内の、実にとげとげしいい さかいや分裂を確実に招く。シリア紛争と、付随する難民危機が、文字通り、ヨーロッパを引き裂き、EU圏の存在そのものを危うくするという警告は誇張では ない。

難民に対する高圧的な警備や官僚の敵意は確かに遺憾ではあるが、同時に、未曾有の難民流入に直面する “最前線”のEU諸国における不満にも理由はある。比較的少ない人口と弱体な経済からして、スロベニアのように、わずか200万人しか国民がいない国々 が、戸口に絶望的な人々が突然急増したのを、歓迎されざる難題と思うのは無理もない。

ハンガリーのオルバン首相も、トルコは安全な国なのに、一体なぜそれほど多数の難民が、領土を通過してヨーロッパに向かうのを、アンカラ政府によって許されるのだろうかという妥当な指摘をした。

しかも、歴史的人数の難民の源泉であるシリア紛争で、大半のヨーロッパ諸国は、その発生に全く関与していない。

イ ギリスとフランスは、十分な証拠によって、アサド大統領を打倒するためのシリアでの紛争を醸成し、油を注いでいると非難されている。ロンドンもパリも、中 東における根気強い覇権の野望のため、ワシントンが率いる政権転覆計画を追求する上で。2013年に、元フランス外務大臣ローラン・デュマが、2009 年、イギリス当局から秘密裏に、アサド政権打倒の秘密計画を持ちかけられたことを明らかにしたことを想起されたい。それは、欧米マスコミが組織的にウソを ついてきた“民主主義志向の反乱”という装いの下、シリアで外国が支援する反乱が勃発する、少なくとも二年前のことだ。

過激派傭兵によって遂行されている欧米、アラブ諸国と、トルコが支援するシリアにおける秘密戦争の残忍な現実が、覆い隠すには余りにはっきりしてしまったため、“民主主義志向の抗議行動”という説明は雲散霧消した。

ワシントン、ロンドン、パリや地域同盟諸国が今週ウィーンでのシリア“和平交渉”で、ロシアやイランと共に集まったが、欧米諸国が政権転覆の狙いを放棄した兆しはない。

ア メリカのジョン・ケリー国務長官と、イギリスの相手方フィリップ・ハモンドは、アサドは“退任すべきだ”という傲慢な要求から、放棄される権力の移行過程 へと軟化したように見える。しかし狙いは依然として政権転覆だ。一方、フランスは、アサドの即時退任を要求し続けている。フランスのローラン・ファビウス 外務大臣は、ウィーンでの交渉前に“アサド退陣の明確な線表”を要求した。

だから、ワシントンとそのヨーロッ パの同盟諸国がシリア危機の“解決”について語る際、彼らが意図しているのは、彼らが長年抱き続けてきたシリア政権打倒計画という最終結果を実現させるこ とだ。これでは紛争の平和的解決を見いだす確約にはならない。更なる政治的手段による紛争の追求だ。しかも、これはシリアの国権に対する言語道断の侵害で あることを指摘しなければならない。

アメリカが率いる狙いで確実なのは、シリアにおける紛争を荒れ狂い続け、 難民の人数は増大し続けるだろうことだ。今週国連は人道支援が緊急に必要なシリア人の人数を1350万人に改めた。全国民の半分をはるかに上回る。更に一 体何百万人が悲惨な人々に仲間入りするのだろう? 更に一体どれほど多くの人々が最終的にヨーロッパに向かうだろう?

ヨーロッパの運命は、その手が既にシリア人の血にまみれている二つのアメリカ追従国家、イギリスとフランスにまかせるべきではない。ヨーロッパの国々にとって、自らが招いたわけではない難民危機という結果を背負い込まされるのは受け入れ難い。

シリア紛争の解決には、ワシントンと同盟国が国際法を順守し、即座に彼らの不法な政権転覆計画と、シリア国内で、彼らの戦争の犬たちの吠え声を止める必要がある。それは難民危機に対する全体的解決でもある。国際法の順守。実に単純ではないか?

ロ シアとイランは、シリアの国権は尊重されるべきだと主張して、この解決を明確かつ説得力をもって述べている。この政策で、ロシアとイランを支援し、ワシン トン、ロンドンとパリという犯罪的政権転覆枢軸と縁を切って指導力を示すのは、ドイツや他の好戦的でないEU諸国次第だ。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/11/01/why-europe-needs-back-russia-syria-policy.html

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-2965.html
サウジアラビア、カタール、クウェートやアラブ首長国連邦等の湾岸アラブ諸国のシリア難民受け入れはゼロだ。
4年前、シリアの経済改革を要求して行われた“数百人”の抗議行動が、一体なぜ、恐ろしい宗派内戦へと悪化し、過激主義を煽り立て、現在、世界を悩ませ、世界で二番目に大きな難民危機を生み出しているのだろう?

マスコミは、シリアのバシャール・アサド大統領の樽爆弾を非難し、政治評論家達は更なる対ISIS空爆と、より厳しい対シリア経済制裁を呼びかけ、危機が始まって4年目なのに、大半の人々は、この戦争が、一体どのようにして始まったのか全く知らない。

この“内戦”は、宗教を巡るものではない

シリアへの外国の介入は、シリアでの反乱開始の数年前に始まった。ウイキリークス は、内戦を引き起こして、シリア政府を打倒するというアメリカの計画と、こうした命令を、テル・アビブから直接受けていることを明らかにするアメリカ国務 省の2006年の漏洩電報を公表した。この漏洩は、サウジアラビア、トルコや、カタールや、エジプトの様な国々とのアメリカの協力関係同盟が、スンニ派 と、シーア派の分裂を利用して、シリアを分割し、イランとヒズボラを弱体化する為、シリアを不安定化させるのに、宗派心を利用するためであることを暴露し ている。イスラエルも、ゴラン高原占領を拡張する石油採掘を増加する為、この危機を利用しようとしていることが明らかにされた。
BBCや、AP通信等の主要マスコミによれば、シリアで行われたとされる抗議行動 は、わずか数百人の人々によるものだったが、更なるウイキリークスが公開した電報が、2011年3月という早い時期に、こうした抗議行動そのものを引き起 こす為の、シリア国内でのCIAの関与を明らかにした。
抗議行動は、わずか数カ月後に、CIAとつながる何百もの武装抗議行動参加者と化 し、デモが拡大し、シリア人でない武装反政府集団がシリアに押し寄せ、シリア全土を政府の厳しい弾圧が覆う中、アメリカ合州国、イギリス、フランス、カ タール、サウジアラビアやトルコが、反政府派を組織し、武器を与え、資金供給して、自由シリア軍を形成する好機に飛びついたことが明らかになった。(わず か数カ月前、ウイキリークスが、サウジアラビアの諜報情報を公開し、2012年以来、トルコ、カタールとサウジアラビアが、シリア政府を打ち倒すべく、反 政府派に武器を与え、資金を提供するのに協力して動いていたことをあきらかにした。)
“ヨーロッパに向けて、パイプラインを、東から西へ、イランとイラクから、シリアの 地中海沿岸で通すか、あるいは、 カタールと、サウジアラビアから、シリアとトルコ経由という、より北回り経路にするかを巡って、戦いがおこなわれている。こう着状態のナブッコ・パイプラ イン、実際、南ガス回廊丸ごとが、アゼルバイジャンの埋蔵量しか裏付けがないため、ヨーロッパへのロシアの供給には決して拮抗できないことを悟り、サウ ス・ストリーム建設を阻止する為、欧米はペルシャ湾からの資源で置き換える必要にせまられていた。シリアはこの連鎖における主要リンクであり、イランとロ シア寄りの傾向がある。そこで、欧米の首都で、シリア政権は倒して変える必要があると決定されたのだ。
石油、ガスと、パイプラインが問題なのだ!

実 際、ヨーロッパのガス市場が、ロシアの巨大ガス企業、ガスプロムの人質に取られてしまうのではという懸念の中、ロシア、アメリカと欧州連合の間の緊張が高 まった。ロシアから離れ、ヨーロッパのエネルギー供給を多様化するには、提案された、イラン-イラク-シリア ガス・パイプラインは、不可欠なのだ。

ト ルコは、ガスプロムの二番目に大きな顧客だ。トルコのエネルギー安全保障構造丸ごと、ロシアとイランからのガスに依存しているのだ。更に、トルコは、ロシ ア、カスピ海-中央アジア、イラクや、イランの石油、さらにはガスの、ヨーロッパへの輸出における戦略的分岐点になるという、オスマン帝国風な野望を抱い ている。

2013年8月、ガーディアンは、こう報じた。

“ア サドは、ヨーロッパ市場への供給目的で、重要なことに、ロシアを回避しながら、イランのサウスパース・ガス田と隣接しているカタールのノース・フィールド から、サウジアラビア、ヨルダン、シリアを経由し、トルコへ向かう、カタールと、トルコが提案したパイプラインの協定に署名することを拒否した。アサドの 論理は、‘ヨーロッパへの天然ガスの最大供給国である [彼の同盟]ロシアの権益を守るため’だった”。
http://www.theguardian.com/environment/earth-insight/2013/aug/30/syria-chemical-attack-war-intervention-oil-gas-energy-pipelines
シリアが、自国のエネルギー戦略において極めて重要な部分であるのを理解しているト ルコは、このイラン・パイプライン案は改め、 究極的に、トルコや湾岸アラブ諸国のガス供給支配の追求を満足させる、カタール-トルコ・パイプライン提案に協力するよう、シリアのバッシャール・アサド 大統領説得を試みた。しかし、アサドが、トルコの提案を拒否した後、トルコと同盟諸国は、シリア“内戦”の主要計画立案者となった。
https://www.youtube.com/watch?v=G1p_tFnKqMA
現在進行中の戦略の多くは、さかのぼって、アメリカ軍が資金を提供している2008年のRAND報告書“長い戦争という未来を明らかにする”の中で記述されていた。

http://www.rand.org/content/dam/rand/pubs/monographs/2008/RAND_MG738.pdf

ア メリカ、フランス、イギリス、カタール、サウジアラビアと、トルコ - 別名、新“シリアの友人”連合が、公式に、ガス・パイプラインへの署名をアサドが拒否した後、2011年から2012年の間、シリアのバッシャール・アサ ド大統領打倒を、公式に呼びかけ、シリアを、人道的危機に押しやるいわゆる“穏健”反政府派に与えるべく資金と武器が、シリアに流入した。反政府集団は、 あれやこれやの連中を組織したもので、その多くは外人戦士で、多くがアルカイダと同盟していた。

シリアは宗教的に多様なので、いわゆる“シリアの友”は、アサド打倒の為の“分割して統治”戦略の公式として宗派心を煽った。アメリカが支援する“穏健”反政府派による、アラウィー派が、スンニ派が多数派の国家を支配しているという主張が、スンニ派解放の主張となった。

こ の戦争は、大衆には、スンニ派-シーア派紛争として売り込まれているが、ISISや、 シリアのアルカイダ分派、アル・ヌスラ戦線等のいわゆるスンニ派集団や、“穏健派” 自由シリア軍までもが、無差別に、シリアのスンニ派、シーア派、キリスト教徒やユダヤ人を標的にしている。同時に、正に同じ諸外国が、国中をおおっている 多数派のシーア派による民主主義推進抗議行動に対する暴力的弾圧で、スンニ派だと主張しているバハレーン政府を支援し、武器まで与えている。

シリア政府軍自身、80パーセント以上がスンニ派で、本当の狙いの動機は、政治的なものであって、宗教的なものではないことを示している。

こ れに加え、アサド一家は、大半のシーア派が、この二つは無関係であることに同意しているのに、マスコミが、シーア派とひとまとめにしているイスラム教の宗 派、アラウィー派だ。更に、アサド一家は、非宗教的で、非宗教国家を支配しているとされている。アラウィー派を、シーア派として見なすのは、紛争の為に宗 派的枠組みを押しつける一つの方法に過ぎない。それが、シリア-イラン同盟が実際は経済関係なのに、宗教に基づくものだという前提を許容してしまう。

この枠組みは,イランが、イラク、シリアとレバノンに広げているとされるシーア派の影響力から自らを解放する為のスンニ派革命として、入念に仕立てられたシリア紛争だ。

だが、真実は、シリアのスンニ派社会は分裂しており、多くの人々が、自由シリア軍、ISISやアルカイダ等の集団に加わる為にくらがえした。また先に述べた通り、80パーセント以上のアサド軍兵士はスンニ派である。

◆米露、シリア空爆の衝突回避策で合意

2015年10月21日 BBC News

ロシアがシリアに投入した戦力

ロシアと米国は20日、シリアで過激派勢力「イスラム国」(IS)に対して行う空爆で、両国軍機の衝突を回避する措置に合意した。

米国防総省のピーター・クック報道官は、ロシアの要請で合意文書は公表しないとしたが、両国の連絡方法や、地上にホットラインを設置することが決まったと述べた。ただし、空爆対象に関する情報は交換しないという。

クック報道官はさらに、今回の合意で両国軍機が「安全な」距離を保つことが保障されるとしたが、具体的な距離が設定されたかどうかは明らかにしなかった。

ロシア国防省のアナトリー・アントノフ次官は、合意文書には「米国とロシアの軍機の事故を防ぐための、多くのルールや規制が含まれる」と述べた。

ロシアは先月30日からシリアでの空爆を開始している。米国は先週、両国の軍機が目視できる距離(15~30キロメートル)まで接近したことがあったと発表した。

合意をまとめるまでに3週間かかっており、内容も限定的だ。空爆そのものや空爆対象について調整はせず、軍事情報も交換しない。ただ単に軍機が接近しすぎないようにするのを目指している。

発表文書では、合意には操縦士としてのプロフェッショナルな行動の要請や、交信につかう具体的な無線周波数、地上での通信線が盛り込まれた。地上での連絡はバックアップとして想定されている。

合意はシリア領空内のみを対象としており、トルコが懸念するロシア軍機によるトルコ領空の侵犯については触れていない。しかし、米国主導の有志連合とロシアの軍機が衝突するリスクを軽減している。双方が合意を守ればの話だが。

(英語記事:US and Russia sign deal to avoid Syria air incidents)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151021-34589879-bbc-int

◆唯我独尊の米国には見えないロシアの乾坤一擲
シリア空爆と国連演説、プーチン大統領のしたたかな戦略

2015.10.22(木) W.C. JB PRESS


ニューヨークの国連本部で開かれた潘基文事務総長主催の昼食会合で、乾杯するウラジーミル・プーチン露大統領(右)とバラク・オバマ米大統領(左、2015年9月28日撮影)〔AFPBB News〕
 シリアの反政府勢力に対して、ロシアが空からの攻撃を始めてから3週間が経った。

 この攻撃開始に当たって米国へ仁義を切るために9月28日にニューヨークで行われた米露首脳会談の終了後、わずか一昼夜余の間に憲法に従う上院の対外軍事行動承認と、それに続くウラジーミル・プーチン大統領の爆撃指令を完了させ、9月30日には作戦が開始されている。

 ロシアはシリアへ、それまでに攻撃機50機以上、要員2000人前後をシリア政府の要請に基づく形で送り込んでいたとされる。

 この陣容による攻撃開始後の成果について、ロシア国防省は10月16日までの1週間だけで、攻撃機が394回出撃し、IS(イスラム国家)を称する占領者たちの通信・野戦施設ほか350カ所近くを破壊した、と発表している。

周到な準備を進めていたロシア

 カーネギー国際平和財団モスクワ・センターのドミトリー・トレーニン所長によれば、ロシアがシリアへの直接介入に向かって舵を切ったのは、9カ月前の今年の始めだった。

 その時点ではまだ方向性の決定であり、実際にやるか否かはその条件が整い次第、であったのだろう。その方針の下で、米国も含めた対IS国際統一戦線結成が第1案、これが達成されない場合に第2案のロシア単独での攻撃開始、という筋書きが組まれていったものと思われる。

 どちらの案でもロシアの空爆実施が含まれ、これには大統領府長官のセルゲイ・イワノフ氏と国家安全保障会議のニコライ・パトルシェフ議長が関わった、と別のロシアの事情通は述べている。

 以下、諸報道によりその後の経緯を見ると、米国をはじめとする国々のバッシャール・アル=アサド大統領即時退陣の主張を何とか押しとどめ(見返りにロシアとイランも、彼の再選は認めないという点で譲歩)、その一方で軍事行動への準備も進めていった。

 アサド政権の命脈が尽きたのではないか、との見方が広まりつつあった6月に、イランの革命防衛隊とレバノンのヒズボラがシリアでの戦力を増強し、その後これに呼応するかのようにシリアのラタキアでロシアの空軍基地増強も進められたようだ。

  7月末にはプーチン大統領の10年ぶりとなる国連総会出席が関係先に通告され(その時点で多くの外交筋は、ウクライナ問題で精々いつもの対米批判をやるだ けなのでは、と予想したのみ)、外交専門誌編集長のフョードル・ルキヤノフ氏は、遅くとも8月までには空爆実施具体案が準備され、それに対して米国がどう 出るかをロシアは窺い、その結果、互いに干渉しない、という合意がなされたのだろう、とメディアに述べている。

 確かに、9月28日のバラク・オバマ大統領の対プーチン会談までには、米国も徐々にではあるがロシアの対IS攻撃開始を容認する方向に傾いていたようだ。

 ジョン・ケリー国務長官はアサド退陣時期については交渉の余地ありと発言し始め、アシュトン・カーター国防長官も3月の就任以来、初めてロシアのセルゲイ・ショイグ国防相とシリア問題での電話会談を行っている。

 ロシアの描く筋書きは、遅くとも来年3月までにアサド政権の勢力を回復させ(人口が集中する地域と重要都市のアレッポを確保すれば十分で、国土の大部分を占める過疎地は当座の目標外)、反政府側(少なくともISは除く)との和平交渉に持ち込ませることに置かれている。

 その成否は、地上軍投入は行わないという前提のロシア軍の援助の下で、どこまでシリア政府軍が自力で失地回復を行うかにかかる、とされる。

米国の主張

  だが、9月28日の首脳会談を経て上述のようにロシアが即座に行動を起こし始めると、ロシアの攻撃対象がISではなく、米国やトルコ、湾岸諸国などが支援 する「自由シリア軍」他の反政府勢力になっている、と米国は強く批判し始め、これに英仏独とサウジアラビア、カタール、トルコも同調する(ロシアはこれを 否定したが、この点ではどうも分がよくない)。

 首脳会談へオバマ大統領がどのような姿勢で臨み、爆撃開始を通告するプーチン大統領に対して何と答えたのかは定かではないが、IS殲滅では合意できても、アサド政権をどれだけ延命させるかでは見解が一致していなかったのかもしれない。

 あるいは、米国側内部でプーチン大統領の動きに我慢ならんという面々が後になって突き上げたのだろうか。その真相がどうであれ、表に出ている動きだけで見れば、米露間の対立は深刻化の様相を呈し始めた。

 米側は次のように主張している。

●これまでに20万人以上の国民を殺戮したアサドを、欧米のみならずシリア国民の大多数や周辺国ももはや支持しておらず、彼に今後も国をまとめることなどできるはずがない。

●IS以外の反政府派の勢力を削いだりすれば、それだけISを拡大させ、ISへの転向者や結果として難民の数をさらに増やすだけとなる。

●アサド政権を助けようとするロシアの介入は、これまでの米国とその仲間による対ISへの攻撃とは趣旨が異なり、従ってシリア問題の政治決着と早期終結を困難なものにしてしまう。

 オバマ大統領は例によって、プーチン大統領への個人攻撃の形で、ロシアはこれまでの自分の戦略ではシリアを維持できないという、しょせんは弱い立場から首を突っ込んできたに過ぎず、こうした動きは必ず失敗する、とこき下ろす。

  米国は、ロシアに対抗する形でシリア内のクルド人勢力2万人ほかの反アサド派への武器供与を開始する。そして、ロシアが提案した反IS統一戦線結成への協 力を拒み、この問題を協議しようとロシアが持ちかけたドミトリー・メドベージェフ首相を団長とする訪米団の受け入れも拒絶する。

 だがプーチン大統領は怯む気配を見せない。彼の基本的な立場は、日本で大して注目されなかったものの、9月28日の国連総会で行われたその演説に示されている。

  この演説については、すでに何人かの識者が触れておられるので(1、2)、本稿では詳細を避けるが、総会の演壇から、「アフガニスタン、イラク、リビア、 そしてシリア、といった具合に、どれ一つまともな結果が出せていないではないか、『民主主義』革命の輸出でどれだけ多くの国を悲惨な状態に追いやったのか を、君たちはまだ分かっていないのか」と彼は欧米に詰め寄っている。2007年来の彼の持論となる、米国の一極支配思想への痛烈な批判である。

プーチンに差をつけられたオバマ

  そのうえでシリア問題を解決する道筋として、難民問題も発生地での正統政権の支配力を確立せねば止められるべくもない、として、これまでのアサド政権を相 手にしないという欧米の手法が大きな誤りであったと指摘、そして今必要なのは、シリア内で正統政権を維持しつつ、ISなどのテロ集団へ国際的な統一戦線結 成で対抗することである、と提言する。

 この演説の内容は、かなりメリハリが効いたものになっている。それ を、プーチン演説に先立って行われたオバマ演説と比較すれば、シリアをはじめとする中東で現実に何が起こっているのかという認識力の面で、オバマ大統領は プーチン大統領に少なからず差をつけられてしまっているようでもある(プーチンはこの演説が行われている時に漸くニューヨークに到着したばかりで、直接こ れを聞いていない)。

 傍若無人に独り善がりの思想を力ずくで振り撒き、その結果の始末も自分でできていない――。

 なるほど、これまでイラクでもシリアでも米国は支持する側の軍の養成に失敗し、最近はアフガニスタンからの撤退政策も失敗に終わっている。どれもこれも、オバマ政権が結末をつけられずにいる課題として残ってしまった。

  そうなった理由を、オバマ大統領の中途半端な政策が中東での米国の存在感低下を生んだ結果に求める声もあるが、さらにその政策の根底まで突き詰めてみれ ば、欧米流の民主主義が世界の地域・民族を超えての至高の価値観とならねばならないと信じ込む米国の普遍主義思考に行き着く。

 その政策は、いわば信仰に発しているようなもので、これに敵への恐怖感(ヒラリー・クリントン氏は、恐怖ではなく事実に基づき議論をしよう、と論じる)が加わると歯止めも効かなくなる。

 しかし、それは世界各地域での特殊性への知見や注意をかき消すことで、現実にそぐわない発想や政策を結果として生んでしまう。

  例えば、シリアには過激な反体制派のISと穏健な反体制派とがあり、後者を援護してアサド政権を打倒すべきと米国は主張するが、そもそも反体制派(クル ド、アルカイダ系組織、元シリア軍兵士等の「自由シリア軍」、IS、など)を綺麗に過激と穏健に分けることなど不可能以外の何物でもない、とロシアは指摘 する(中東の専門家にも同様の見解が多い)。

 であれば、穏健派に供与したはずの武器が、いつ過激派の手に 移ってもおかしくはない。○○派と称される面々が存在していても、次の瞬間に彼らは××派に衣替えしているかもしれない。それが現実であり、そもそも米が 主張する「自由シリア軍」なるものすらが本当に存在するのかも疑わしい、と露側は論じる。

 こうした点について、米側も西側のメディアもこれまでまともな反論なり説明なりを行ってきているようには見えない。正邪の二元論では解きようもない連立方程式だからだろう。ISと戦っている限り、タリバンや9.11の犯人とされるアルカイダは米国の味方になるのか?

ソ連の失敗になぜ学ばないのか?

  かつてソ連はアフガニスタンで失敗したが、相手を共産主義と言うプリズムを通してしか見ずに舐め切ったことがその敗因だったとすれば、米国は今、民主主義 という容器に相手の身体的特徴などお構いなしに無理矢理にでも押し込めようとして同類の過ちを犯している――。 プーチンにはそう見えるのだろう。

 総会の演説で彼は欧米に向かって、「なぜソ連が犯した誤りを学ぼうとしないのか」とすら言ってのけている。

 旧ソ連圏に「民主主義」革命の輸出を持ち込んでくることは、ロシアにとっても迷惑極まりない。しかし、プーチン大統領の対応を見ると、米国のやり方のナイーブさや無知に呆れて愛想を尽かしていることからの嫌悪感(あるいは侮蔑感)の方がむしろ強いのでは、とすら思える。

 対する米国は、ロシアの空爆開始直後の一斉批判に続く二の矢が継げていないようだ。それまでロシアを俎上に載せて批判した問題点の事実関係も、何やら曖昧になってきてしまっている。

 メドベージェフ首相の訪米団受け入れ拒否も、そのまともな理由が説明されていない。ロシアのメディアが評するように、今どうロシアに(ひいては中東問題に)対応すればよいのかが即座には分からずにいるようでもある。

 加えて、ロシアがイラン、イラク、シリアとの対IS共同戦線を結成したこと、特にイラクがこれに加わったことが米国には大きな衝撃だっただろう。これまで投入してきた膨大な人的・金銭的資源はいったいどこへ消えてしまったのか。

 イラクは米国の支援不足に十分過ぎるほど失望していたと言われる。その理由は西側のメディアが書くような強腰の軍事介入へのオバマの不作為だけではなく、中東情勢をどう扱ったらいいのかという点でのあまりに大きな米国の知見不足だったのではないだろうか。

 プーチン大統領の対米批判はそれとして、ロシアが今回の空爆参入に踏み切った直接的な動機や理由について、西側でも露側でも様々な解釈がメディアに登場する。

●アサド政権の救済と中東でわずかに残された自国の勢力圏・軍事基地の確保
●ウクライナ問題から関係者の目を自国のイメージアップによって逸らすこと
●国内の政権支持つなぎ止め
●CIS諸国・ロシアへのIS浸透阻止
●シリアをリビアの二の舞にしないことでロシアの世界での存在感を誇示

ロシアを見誤る米国

 米国では、これらのどの要素が主役なのか、そして、プーチン大統領が勝負に勝っているのかで、外交分析評価が分裂しているらしいが、実際にはどれも間違いではあるまい。

 これらのどれ一つをとってもロシアが考えていないはずはないし、そのいくつかが直接介入を現実的な検討課題に押し上げていったということなのだろう。

  そして、これらを満たしながらさらに先をプーチン大統領は見ているのではなかろうか。彼が狙うのは、ここで対米攻勢をかけて米の譲歩を引き出し、ウクライ ナ問題で始まった対ロシア経済制裁の解除や来るべき時代の露米関係への道筋確保、それにロシアの安全保障に関わる米国との合意(MD配置阻止や中東政策で の共同歩調)といった大きな目標にあるように思える。

 皮肉なことに、オバマ大統領が弱腰で米外交を駄目にした、といった論が米国内で強まれば、それだけ余計にそれを打ち消すべく、次期米政権は恐らく対露強硬策を志向せざるを得なくなる。ネオコンの理論家たちも、再度表舞台に出るべく蠢動し始めたようだ。

 米国の新政権とさらに8年間も対立を余儀なくされるような状況を避けるためにも、強硬策には出て来ないと見られるオバマ政権を相手に一刻も早く話をつけてしまわねばならない。

  その米国と対ロシア、対中東政策で必ずしも歩調が揃っているわけでもない欧州は、ギリシャ問題の小康状態で一息つけるかと思いきや、怒涛の如き難民問題、 さらにはVW(フォルクスワーゲン)の不祥事というオマケまでついてしまい、その体力も意思統一もヨレヨレの状態に瀕している。

 今なら、欧州を自分のペースに巻き込む可能性あり、とロシアは踏むだろう。

 急がねばならない理由はそれだけではない。空爆開始はロシアにとって相応のリスクも伴っている。

  まずは先立つもので、巡航ミサイルの投入は米国に戦闘能力で負けてはいないということを示す点で見栄えは良いものの、大変にお金がかかる。政府予算の緊縮 に狂奔する財務省を押し倒して、2016年度政府予算で軍事費は唯一増額(Rb.1650億)項目となった。第一副首相のイーゴリ・シュヴァロフ氏は、こ れはシリア問題への介入とは関係ない、などと述べるが、それを信じる向きはいないだろう。

 IEA(国際エネルギー機関)や世銀は原油価格が2016年も低調に推移するだろうと予測しており、ロシア政府の台所は火の車に近づいている。どう転んでも長期戦に対応できる余力があるようには見えない。 

国内にスンニ派を多く抱えるロシアの事情

 戦闘が想定外に長引けば、国内での厭戦気分も高まるかもしれない。空爆に今は国民の7割近くが賛成していても、万一地上軍の派兵などに至れば、アフガン出兵の苦い記憶が呼び起されて、国民は簡単にはついて来なくなるだろう。

 特に2000万人とも言われるロシア内のイスラム(ほとんどがスンニ派)がこれからどう反応して動くのかも要警戒事項となる。露紙によれば、彼らはアサドがISよりマシなどとは全く見ていない。

 そのアサドを援護するということは、基本的には世のスンニ派を敵に回すことになるのだから、そのスンニの中のISという不良分子退治、という筋書きで辻褄合わせができる時間内で物事を処理しなければならない。

 クルドが絡んで複雑化するトルコとの関係をはじめとして、イスラエルやサウジアラビア、湾岸諸国と同時に関係を維持・強化するには、ビスマルクなみの業が必要とされるだろう。

 そして、最も重要なのは、米国をともかくはロシアとの協議のテーブルに着かせるという目的達成のために、間違ってもシリアを舞台とする米国との代理戦争にのめり込まないことである。

 こうした制約条件の中での作戦遂行である。

  オバマ氏のプーチン批判に同調する西側メディアの論調は、効果を得るためにロシアは長期戦に突入せざるを得なくなる、 結局は地上戦にも踏み切ることになる、それは米国と同じ誤りを犯すことでありソ連のアフガンの二の舞にもなる、どうせ失敗するに決まっている――とこぞっ て冷ややかである。

 だが、ブルッキングス研究所のリリア・シェフツォヴァ氏は、ソ連崩壊時も、エリツイン政権の結果についても、そしてリセットの行方についても、20年にわたって西側はロシアを理解し損ねてきた、と指摘する。今度も多くの論者の見解がその憂き目に遭うのかもしれない。

  ロシアは、米軍が2万人殺しても同じ数の兵士が流入してくるというISを独力で根絶するといった目標は、初めから持ってはいないだろう。中東を舞台に自ら 軍事・政治の大冒険をやれるほどその中東を知り尽くしているとは思っていないし、イラクのISにまで攻撃を加える体制にもないはずである。

 何とか体裁の整ったシリア政府の再興(その結果でアサド大統領が退陣してもやむなし)と関係者の和平交渉に持ち込めれば(そして米国のこれまでの政策が誤っていたことを満天下に晒せれば)、それでことは成就するのである。

  換言すれば、民主主義の実現という米国の目標を批判はしても、それに代わる、来るべき中東社会のあるべき姿のロシア独自の像を持ち合わせているのかといえ ば、恐らくノーだろう。彼らにそれを求めても、返ってくる答えは「Inshallah(インシャ・アラー=すべてアラーの思し召し)」だけかもしれない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45051


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